
道南でワイナリーの開設が相次ぐ中、観光や地域振興にワインを活用しようという取り組みが活発化している。函館市と渡島総合振興局がワインやブドウ生産について市民らに学んでもらう「ワインアカデミー」をそれぞれ開催しているほか、観光関係者が各種モニターツアーを実施。道南のワインの魅力を発信し、新たな地域資源として育てていく狙いだ。
「ワインと食は切り離せない。(両者を組み合わせることで)楽しみは3倍にも、4倍にも膨れあがります」。函館市内のレストランで21日に開かれた道南の食材とワインのペアリングを学ぶ飲食店関係者向けの勉強会で、札幌市出身のソムリエ大越基裕さん(48)が強調した。
勉強会は振興局のワインアカデミーの一環。熱心に聞き入っていた参加者たちは、実際に料理を食べながら、真剣な表情でワインをテイスティングした。市内で飲食店を経営する久保英隆さん(51)は「組み合わせの相乗効果でよりおいしくなることを実感した。この経験を店でも生かしたい」と話した。
仏ブルゴーニュ地方の老舗ワイナリーで世界的な知名度を持つドメーヌ・ド・モンティーユ社の現地法人「ド・モンティーユ&北海道」は函館市桔梗町に昨年7月、ワイナリーを開所し、同12月にはレストランを含め施設を全面オープン。北斗市向野の果樹園トロッコのワイナリーも同8月に完成し、道南のワイナリーは8カ所になった。

■観光列車で味わう
北海道エアポート(HAP)函館空港事業所は同9月、函館、北斗、七飯のワイナリー計4カ所を巡るモニターツアーを実施。40人の定員に300人以上が応募する人気ぶりだった。道南いさりび鉄道(函館)は同12月、同社の観光列車「ながまれ海峡号」を貸し切りにし、道南産ワインの飲み比べを楽しむ「ワイン列車」を初運行。参加者は道南の車窓の風景とともにワインや料理を堪能した。
■生産者との交流も
ワイナリーやぶどう園を回り、生産者らと交流する旅行形態「ワインツーリズム」の普及に向けて、HAP函館空港事業所は今後、旅行会社の商品開発のきっかけづくりを進めていく考えという。
道南でのワインツーリズム普及を巡り、ド・モンティーユ&北海道の矢野映ゼネラルマネジャー(65)は「道南のワインの認知度が高まり、ワイン産業が活性化すれば地域に貢献できる」と語る。はこだてわいん(七飯)の佐藤恭介社長(59)は「作り手の思いを伝えられる機会になる」と協力に前向きだ。
函館 市は本年度始めたワインアカデミーを、新年度も引き続き開催。市農務課は農業体験などを楽しむグリーンツーリズムの一環で、ワイナリーの周遊などを組み込んだ旅行商品の造成に取り組む計画だ。担当者は「地域のワインを市民や観光客に知ってもらうことで、活性化につなげたい」と話している。(星茉莉枝、阿部大地、坂本麻保)
(北海道新聞2025年3月27日掲載)