
今年3月末に閉校した室蘭市白鳥台の本室蘭中学校が、カレーと丼に生まれ変わって校名を後世に残すことになった。閉校直前に生徒たちがメニューを考案し、飲食店などを営む同中OBが商品化に協力。「校名を冠した地域に愛されるメニューに育て」と、市内4店舗で販売中だ。
「本室蘭中の名前を何らかの形で残したい」
同窓会長の田中健太さん(47)に突然そんな話を持ち込んだのは、同中最後の校長を務めた永堀善之さん。閉校を1年後に控えた昨年3月のことだ。
田中さんは精肉店「ハイ・ミートたなか」の経営者。元PTA役員でカレー店「カレーショップコロンボ」を営む内池孝年さん(49)にも声をかけた。「生徒自身にメニューを考えてもらい、商品化しよう」。76年続いた同中への愛着が、生徒、OB、学校を結びつけた。
2年生25人が家庭科の授業で昨年11月から約4カ月かけてメニューを考えた。アンケートをとると、カレーと丼それぞれ70以上のアイデアが寄せられた。「バッタのかき揚げ丼」など、ちょっと実現は難しそうな案も。田中さんや内池さんと話し合い、最終候補に残った4品を今年2月の調理実習で全員で味わった。

投票で決定したのは油淋鶏(ユーリンチー)を乗せた「本中カレー」と、すき焼き風「本中丼」。「本中(もっちゅう)」とは本室蘭中の愛称だ。油淋鶏ソースには、生徒の発案で蜂蜜やチョコレートを隠し味に。丼のすき焼きは白老牛や白菜、タマネギ、豆腐をじっくり煮込んだ。
「本中カレー」(税込み920円)はコロンボの市内3店(築地本店、白鳥湾展望台店、モルエ中島店)で、「本中丼」(同980円)は弁当店「肉にく亭」(白鳥台ショッピングセンター・ハック内)で、いずれも4月に販売を始め、客から好評という。
田中さんは「生徒や校長の強い思いに応えたかった。定番メニューとして販売を続けたい」と語り、内池さんも「本中卒業生は地元愛が強く、ネットワークもあるからこそ実現できた」。永堀さん(現・壮瞥中校長)は「名前が残せたことが本当にうれしい。生徒たちが大人になったとき、自分の子どもに伝えられるような、長く愛されるメニューになれば」と願う。 (村上真緒)
(北海道新聞2025年5月8日掲載)