
函館市の割烹旅館若松(湯川町)と有機栽培に取り組む農場「ローラ♥ファーム」(豊原町)がタッグを組み、農作業を体験しながら日本食を楽しむ新たな観光プログラムづくりを模索している。4月23日には「はたけでてんぷら」と銘打ち、農場に関係者を招いたモニターツアーを実施。両者をつなぐ七飯町のNPO法人のこたべとともに、実施に向けて改善を重ねていく考えだ。
「まずはツクシ。ここで摘んだタンポポやヨモギも天ぷらにします」。同農場の長谷川照美さんがこう説明し、若松の成田正吾料理長が天ぷらを揚げた。この日は雨で収穫作業はできなかったが、同農場が栽培するキクイモやアスパラガスが天ぷらで次々と昼食に提供された。収穫したばかりの小松菜のみそ汁や、かまどで炊いた白米も。だしを取る様子も披露し、参加した旅行業関係者ら10人からは「すごくぜいたく。日本の文化を知りたい訪日客らに需要がありそう」との声が上がった。
長谷川さんと成田料理長は知人を通じて16年ほど前に知り合い、外国人を招いた食事会などを農場で開いてきた。同NPO代表の平島美紀江さんは昨年、長谷川さんと知り合い、一緒にオーガニック給食を広める活動に取り組む。同NPOが函館市から委託を受けた「食の担い手育成推進事業」でも、長谷川さんが料理教室の講師を務めるなど交流があり、平島さんが「農業体験と料理を合わせた新たな取り組みができるのでは」と声をかけたという。
今年2月ごろに関係者と打ち合わせ「1回やってみよう」と開催が決まった。調理の場所が狭い、コンロが足りないといった課題も見つかり、成田料理長は「次回はより良い内容になりそう」と手応えを語った。
長谷川さんは長く観光客の農業体験を受け入れているが、大勢がバスで一気に来訪し、作業をしてすぐ帰るというあり方に疑問を持っていたという。「それよりも『食』や『交流』を大切にする時間の過ごし方を大事にしたい。地域の人とのつながりで生まれる、そこにしかないプログラムに魅力がある」と強調する。ツアーにする際の価格設定など今後の検討材料は多いが、平島さんは「畑での体験に意味がある。何とか形にしたい」と話している。(鹿内朗代)
(北海道新聞2025年4月28日掲載)