
音更町のスーパー・ハピオ(町木野大通西7)のオリジナル中華まん「ハピまん」は昨年、誕生から5年足らずで累計販売個数が100万個を突破した。地域スーパーのオリジナル商品では異例の売れ行きで、芸能人にもファンがいる。開発の経緯や、売れ続ける人気の秘密を探った。
「ハピまん」は現在、中身がチーズのみの「チーズ」と「オニオンハムチーズ」の2種類。売り上げの9割超を「チーズ」が占める。過去にはカレーやあんこなどもあったが、チーズの生産に注力するため休止中だ。
■モチモチの食感
帯広市にある東洋食肉販売(埼玉県川口市)十勝事業所が製造する。生地の小麦粉は全量十勝産を使い、独自素材を配合するなどしモチモチした食感とほどよい甘さに。町内のよつ葉乳業十勝主管工場のチーズを包み、冷凍した状態で1個356円で販売している。
「ハピまん」はどのようにして生まれたのか。東洋食肉販売は管内の大手菓子店に別の中華まんじゅうを出荷していたが、7年前、これに、加熱すると伸びるマリボーチーズを加えたところ、帯広物産協会職員の目に留まり、商品化を提案された。同協会の木戸善範事務局長は「東洋独自の甘い生地に塩みのあるチーズを入れたまんじゅうに可能性を感じた」と振り返る。
同じ頃、ハピオは当時流行していた韓国グルメ・チーズハットグの開発を同社に打診していたが、試作した中華まんの試食後に方針転換し、商品化へ動き出した。大量生産できない分、質にこだわった結果、価格は1個298円(当時)と、コンビニ製品の3倍近くに。ハピオの鳥海正行部門統括取締役は「高いし、最初は本当に売れるのか疑問があった」と明かす。
■試食に長蛇の列
一方、東洋は新しい中華まんに期待し、2019年4月の販売初日は通常サイズより小ぶりな試食用を2千個用意。製造担当の山口朋哲上級リーダーは、長蛇の列ができ、試食した人がまとめ買いする様子を見て「これはいけると思った」という。
商品は4日間で2千個を売る予定だったが、初日で半分がはけた。直後にその様子がテレビで全道放映され、連日行列ができるように。1人5個までの制限をかけ、10分間で800個売れることもあった。
同事業所2階の製造ラインは「ハピまん」以前はほとんど稼働していなかった。今では1日最大2100個を作るフル稼働の状態だ。山口さんは「当時は忙しすぎてチーズを洗う夢を見たこともあった。今では事業所の売り上げの2~3割を占めている」と話す。
鳥海さんは「顧客から『生地がうまい』とよく聞く」とし、ヒットの理由を「豚丼的な甘じょっぱさとはまた違った、チーズの塩みと生地の甘さのバランスの良さ」とみる。毎年、お中元やお歳暮用でまとめ買いする町内の歯科医田中義博さん(68)は「冷めてもおいしいから、仕事の合間にも食べる」と語る。
ファンは道外にも広がる。フリーアナウンサーの高橋真麻さん(43)は、自身がMCを務めたテレビ番組で食べて以降、定期的に購入する。「賞味期限が長いのが助かる。朝ご飯、おやつ、夜食とどのタイミングで食べても良いのがうれしい」とコメントした。
帯広物産協会は4月に更新した同会のリーフレットで、新たに「十勝名物」と銘打って紹介している。木戸事務局長は「十勝産の生乳や小麦の消費拡大にもつながっており、さらにPRを続けていきたい」としている。(関山大樹)
(2025年5月20日掲載)