
道内の西洋料理人でつくる全日本司厨士協会北海道地方本部は、5月15日に札幌パークホテル(札幌市)で開いた本年度総会で上ノ国町の食材をテーマに取り上げた。同ホテルの料理人が上ノ国産アスパラガスやヒラメ、エビなどの食材で料理を提供。工藤昇町長や生産者ら18人が登壇し、道内のホテルシェフらに町産品をアピールした。町は今後、町内の生産者と道内の料理人が直接つながることを支援し、付加価値創出や生産者の所得向上を目指す。
同本部が特定の自治体を総会で取り上げるのは初めて。道内各地のホテルシェフら約170人が出席し、大江広嗣会長は「食を通じた社会貢献活動として、地域の食文化推進を後押ししたい」とあいさつした。
会場内には上ノ国特設コーナーが設けられ、同ホテルのシェフが上ノ国町から提供された6キロのヒラメをその場で5枚におろし、しゃぶしゃぶに調理。この日の朝に水揚げされたばかりの活シマエビと活ガサエビ、2Lサイズのアスパラガスをゆでて提供した。上ノ国の若手漁業者や農家もブースに立ち、料理人たちと交流した。
また、バイキングコーナーにも刺し身や西洋料理の形で上ノ国産エゾアワビやサクラマス、神経締めヤリイカなどが並んだ。出席者からは特にガサエビへの関心が高く、「初めて見た。使ってみたい」との声も。同ホテルの吉田郁雄総料理長はガサエビをまるごと煮溶かし、エビの風味たっぷりのカレーに仕上げ、参加者が舌鼓を打った。
ステージでは上ノ国のPR映像が流れ、工藤昇町長や町職員らが町の歴史や特色などを紹介。上ノ国ワイナリーのワイン2種も提供された。
札幌グランドホテルの伊藤博之総料理長は「エゾアワビが養殖とは思えないほど肉厚で素晴らしい」と評価し、「生産者と直接知り合えるこうした機会は貴重。素晴らしい食材を調理するのがわれわれの仕事だから」と笑顔を見せた。
今回の企画は町地域活性化起業人の出村明弘さんが同本部の統括プロデューサーを務めている縁で実現。工藤町長は「生産者が料理人と直接つながることで、大いに刺激になった」と今後の展開に期待を寄せた。会場では江差町の北前水産もベニズワイガニを提供した。(米林千晴)
(2025年5月22日掲載)