
【当別】町内の旧弁華別小の体育館で17日に開かれたウイスキースチューデント(札幌市)の事業報告会で、田中隆志社長(48)は「当別蒸留所」のウイスキー造りにかける熱い思いを語った。本格ウイスキーを製造しながら、90年近い歴史を持つ同校の建物を残すことも目指し、「明かりの消えた学びやに今、情熱の炎をともす」と力を込めた。
報告会には北海道信用保証協会の阿部啓二会長や町内の関係者ら約20人が出席。後藤正洋町長は「日本を代表するウイスキーとなってほしい」と期待を込めた。
蒸留所では仕込みから瓶詰めまでの工程を行う。体育館は発酵や蒸留を行う製造ホール、樽や瓶に詰める部屋などを置く。渡り廊下は熟成室にする。このほか見学スペースなども設ける。
田中さんは北海道大と同大大学院で微生物学を専攻。堅展実業厚岸蒸留所で8年間、ウイスキー造りに従事した。麦の栽培が盛んで豊かな泥炭があるなど、ウイスキー製造に適した条件がそろう当別での独立を決めた。
2016年閉校の同校校舎は1937年(昭和12年)に竣工(しゅんこう)。道内で3番目に古い現存の木造校舎で、柱などが外に露出したハーフティンバー様式が特徴だ。道内で2番目に古い木造体育館はトラス構造の梁(はり)が目を引く。
蒸留所では「当別ローカル」「知的好奇心を満たす」という目標を掲げる。最新技術を使いながら多彩な原酒を造り、大麦やミズナラ樽などを全て当別産でそろえたウイスキーも造る考えだ。
田中さんは「日本最小規模で手作り感あふれる本格的なモルトウイスキーの蒸留所として(校舎を)未来に残す」と語った。
報告会後は出席者や地域住民が内部を見学。石狩市から駆けつけた卒業生の伊藤好美さん(40)にとって、体育館はみんなで遊んだ思い出の場所という。「田中さんにお礼が言いたい。自分も他の同級生も校舎を活用して残してくれてうれしい」と語った。(和泉優大)
(北海道新聞2025年7月18日掲載)