
お盆を過ぎても、まだまだ暑い日が続きます。そんな日のランチには、冷たいラーメンはいかがでしょう。ハムやキュウリ、錦糸卵をのせた「冷やし中華」ではなく、丼に冷水で締めた麺を入れ、冷たいスープを張った「冷たいラーメン」は、のどごしが良く、暑さで疲れた体にひんやりスープが染み、元気になれそうです。札幌市内の冷たいラーメンの人気店、5店を紹介します。
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黄金色の透明なだし 4味そろい踏み らーめん逍遙亭

札幌市中心部にほど近い電車通り沿いのビル地下にある、カウンターだけの「らーめん逍遙亭」。脱サラの夫妻が二人三脚で運営し、釧路ラーメンの流れをくむ、あっさり、滋味深いラーメンを提供しています。


同店は夏の定番メニューとして、冷たいスープに冷たい麺を入れた「冷恋(ひゃっこい)麺」を提供。熱いラーメンと同様、塩味、醤油味、味噌味(各900円)に加え、味噌ミルク味(1000円)も用意しています。スープは鶏ガラとかつお節、野菜から取った、黄金色の透明なだしが基本。塩は透き通ったきれいなスープで、角のない、ミネラルを感じる味わい。醤油も濁りのない透明なスープで、ゴマ油がきいています。
味噌は鮮やかなオレンジ色で、味噌のこくと深みがあり、ピリ辛。塩、醤油、味噌とも、バーナーであぶった、ごろんとした塊のチャーシューとメンマ、きくらげ、ネギ、半熟卵、カイワレがのっています。味噌ミルクは上に白いミルクの層があり、ピリ辛ながらマイルド。ショウガのみじん切りがたっぷり入っていて、麺をすするとショウガの香りとさわやかさが口いっぱいに広がります。具は鶏ハムと半熟卵、ネギ、カイワレとシンプルです。


麺は釧路ラーメンに近い、中細の縮れ麺で、さがみ屋製麺に特注しているそう。細めですが、柔らかいわけではなく、しっかりコシがあり、ツルツルした食感です。カウンターだけの店なので、調理の様子が見え、あっという間にゆであがり、手早く氷水で締め、しっかり水切りされているのが分かります。
店主夫妻は札幌生まれの札幌育ちで、このスープを口にして感動し、18年前に脱サラして開発者からレシピを引き継ぎ、開業したそう。店主は「今はこってりした動物系のだしのラーメンも人気だけど、昔は鶏ガラ、かつお節のシンプルなこういうスープが多かった」と話します。
私は実は、熱いラーメンが苦手。ところが、釧路勤務時代に「釧路ラーメン」に出会って、だしのおいしさとシンプルな味わいにひかれて、釧路ラーメンラバーに変身しました。今でも、一般的なラーメンは苦手ですが、釧路ラーメンだけは好きで、この店の冷恋麺にもくぎ付け。最初に塩を食べて、立て続けに訪れ、全種類を制覇しました。「夏だけなのがもったいない」と、ひそかに通年メニュー化を願っています。
らーめん逍遙亭 |
住所/札幌市中央区南1条西5丁目17-2プレジデント松井ビル100地下1階 |
電話番号/011-231-3934 |
営業時間/月曜=午後5時~9時、火、木、土曜=午前11時~午後4時、水、金曜=午前11時~午後9時 |
定休日/日曜・祝日。不定休あり |
麺に絡むジュレ状スープ 洋食シェフの技法も らーめん紫雲亭

創成川沿いにある北海道中央バス札幌ターミナル地下には、昭和レトロな雰囲気が漂う食堂街があります。その一画で営業する「らーめん紫雲亭」は、昼時には行列ができる人気店。メニューで「当店一番人気」とうたう醤油ラーメンや「店主オススメ」の塩ラーメンなど定番メニューのファンでも、この時期味わっておきたいのが、夏限定の冷たいラーメンです。
たれをかけた「冷やし中華」(1300円)もありますが、冷たいスープに浸ったラーメンは、その年によってラインナップが変わるそう。2025年夏は、「冷たいスープのあっさり塩ラーメン」(1200円)と「ビシソワーズの冷たい塩ラーメン」(1500円)、「冷やし味噌担々麺」(1200円)がラインナップしています。(一時期、ビシソワーズは「桃のコンポートの冷たい塩ラーメンカプレーゼ仕立て」として提供)

冷たいスープのあっさり塩ラーメンは、涼しげなガラスの器で提供。麺は、西山製麺の特注で、中太、ゆるいウェーブがかかっています。水分を吸収しやすく、スープによく絡む少加水麺です。
特徴的なのは、スープ。ジュレとまでは言いませんが、強めのとろみがついており、麺を持ち上げると、たっぷりとスープをまとっています。麺をすすると、スープも一緒にたっぷりと口の中に入ってきます。提供された時には、普通のラーメンのように麺が隠れるほどたっぷりと入っていたスープが、普通に麺をすすって食べただけなのに、食べ終わるころには麺と一緒に吸い上げてほとんどなくなってしまうほど、麺によく絡みます。
具は鶏チャーシューとメンマ、ネギ、キクラゲに加え、塩レモンとネギしょうががトッピングされています。塩レモンはレモンの酸味と皮の苦みが感じられ、スープに溶かすとさっぱり感が増します。ネギしょうがも風味が良く、「味変」しながら、飽きずに食べることができます。
この店は、札幌ラーメンの名店として知られた「富公」のファンだった店主が、富公の店主の逝去後、富公の味を目指して創業。店には、その「富公」ののれんが飾られています。現店主はもともと洋食のシェフで、サイドメニューのキーマカレー(ハーフ、350円)やハヤシライス(ハーフ、400円)も大人気だそう。
らーめん紫雲亭 |
住所/札幌市中央区北1条東1丁目3中央バスターミナル地下1階 |
電話番号/011-271-4010 |
営業時間/午前11時~午後2時 |
定休日/日曜、第1月曜 |
貝のうまみと風味凝縮 道産小麦の麺で 貝麺ぶこう-武幸-

ススキノの外れ、札幌市電東本願寺前駅周辺は、札幌屈指のラーメン激戦区。そこで2025年4月、旗揚げしたのが「貝麺ぶこう-武幸-」です。名前の通り、貝でだしをとったラーメンの専門店で、あっさりしていながら、貝の風味とうまみが凝縮されたスープと北海道産小麦を使った麺のこだわりの1杯を楽しめます。
夏限定のメニューは「冷たい貝麺」。同店のスープはアサリとハマグリ、ホタテをじっくりと炊いた「貝スープ」がベースで、貝麺にはこの貝スープにさらに大量のホタテを追加して炊いたものを加え、貝のみでうまみを出しています。冷たい貝麺のスープは少し白濁しており、貝の風味があふれています。塩味は控えめで、濃厚な出汁が口いっぱいに広がります。
麺は北海道産の「ゆめちから」と「きたほなみ」をブレンドし、道外の製麺メーカーに特注で製造を委託。ツルリとしたなめらかな口当たりで、かむともちもち、貝だしに負けない味わいが感じられます。

具は3枚のチャーシューとネギ、刻んだ紫タマネギ。チャーシューはすべて種類が異なり、豚肩ロースと鶏むねは真空低温調理で仕上げ、しっとりしており、パサつきはまったくなし。豚バラはジューシーで、味もよく染みて、赤身部分の肉のうまみが感じられます。ネギは九条ネギ専門の農業生産法人「京都知七(ともひち)」から仕入れて小口切りに、紫タマネギは粗みじんにカットされ、だしのうまみたっぷりのスープのアクセントとなっています。スライスされた柑橘は、途中でレンゲで少し押して果汁を絞り出して「味変」できます。
温かいメニューは、貝だしとじっくり炊いた牛骨の牛白湯をミックスした「中華そば」と貝のみの「貝麺」、貝まぜそば。貝のしぐれ煮ご飯もあり、ラーメンのスープをかけて雑炊風にして食べるのもおすすめだとか。メニューには、貝のうまみの強さを示す「貝印」が5段階で表示されています。
店主2人は東京の貝出汁ラーメンの有名店で修行し、故郷・札幌で独立、開業したそう。店内は白木のカウンターのみで、少し高級な和食料理店のような清潔感のあるたたずまい。同店の近くには「五丈原」や「えびそばの一幻」などラーメンの有名店があるうえ、2軒横の「つけ麺八芒」にも行列ができており、まさに激戦区。そんな中、貝のうまみを武器に、新たなおいしさを提案しています。
貝麺ぶこう-武幸 |
住所/札幌市中央区南6条西9丁目1024 |
電話番号/011-252-7293 |
営業時間/午前11時~午後3時、午後5時~9時 |
定休日/月曜 |
元和食料理人がこだわる「だし」 和出汁中華SOBA山わさび

「和出汁中華SOBA 山わさび」は元和食の料理人がつくる、だしのきいた1杯を提供しています。一般的なラーメン店にある、みそ、塩、しょうゆといったメニューではなく、「鶏出し」「鴨」「煮干し」など、だしのこだわりが感じられるものがラインナップ。季節によって変わり種も多く登場します。
2025年の冷たいラーメンのメニューは、「なまらしゃっこい 山わさび塩」と「アサリとレモンの冷たいSOBA」。山わさび塩は、黄金色のスープで、和風のだしのうまみがあり、優しい塩加減。具はローストビーフと鶏むね肉のチャーシュー、プチトマト、小口切りのネギ、メンマ、そして氷がプカプカと浮かんでいます。ローストビーフの上には山わさびがたっぷりのっており、スープに溶かして麺をすすると、「冷たーい」「ツーンと辛ーい」が一緒に口の中を駆け巡ります。辛い、うまいでレンゲを口に運ぶ手が止まらなくなります。


アサリとレモンの冷たいSOBAには、どんぶりの表面一杯に、たっぷりの貝殻付きあさりとレモンの輪切り、プチトマトと小口切りのネギがのり、色合いがきれい。透明な薄い黄金色のスープを一口飲むと、アサリのだしを強く感じます。上に回しかけたオリーブオイルの香りもきいており、プチトマトとの相性は抜群。レモンの酸味がさっぱりとさせてくれます。チャーシューは鶏むね肉で、しっとり、ジューシーです。麺は、両方同じ、中細ストレート。やや柔らかめですが、冷たく締められており、ツルツル食感でスープとの絡みもちょうど良い具合です。
店は5年前に開業。「しじみとあさりの白みそ」や「鶏出し白醤油」、「煮干し醤油」、「鴨醤油」など、だしのうまみをいかしたメニューを展開しています。看板メニューは鶏だしをきかせた「山わさび塩」。味の濃さや調味料の味ではなく、だしのおいしさを感じさせるラーメンが自慢です。
和出汁中華SOBA 山わさび |
住所/札幌市豊平区平岸3条9丁目9-18 |
電話番号/090-5071-5570 |
営業時間/月、火、木曜=午前11時~午後3時、水、金、土、日曜=午前11時~午後7時 |
定休日/不定休 |
澄んだ透明スープ、節や煮干し、ベジブロスも らーめん清湯

「らーめん清湯(ちんたん)」は、店名の通り、澄んだ透明なスープが持ち味。だしの味をいかしたきれいなスープと、ストレート麺がぴったりマッチし、はしもレンゲも止まりません。この時期には、このスープと麺をキンキンに冷やした冷たいラーメンが数種類、登場。食べない手はありません。
2025年の冷たい麺は、「清湯冷たいらーめん」と「冷たい焼き煮干し」、「冷たいベジらーめん」。「清湯冷たいらーめん」のスープは、さば節やかつお節などでだしを取っており、塩としょうゆの中間のような色合い。そのスープの中に、太めのストレート麺がきれいにそろえて盛られています。スープを一口飲むと、意外にも脂を感じます。最初に感じるのはかつお節のスモーキーな燻製のような香りと、魚の香り。その後に、さば節のこくと甘みもあります。脂の感じと燻製のような香りで、どこかオイルサーディンを思わせます。固めにゆでた麺は氷水でしっかり締められた「ポキポキ系」。店主がインスタグラムで「一番旨い一杯に仕上がったと思う」と自画自賛するできばえです。


「冷たい焼き煮干し」は名前の通り、煮干しだしです。塩としょうゆを選ぶことができ、塩で。スープを口に含むと、ガツンと煮干しのだしを感じます。冷たいらーめんと同様、脂もありますが、煮干しの魚の香りとだし感が勝り、さらに濁さず澄んだスープのため、煮干しラーメン特有のえぐみの強い「ニボニボ」感はなく、うまみだけがバーンときます。麺は、冷たいらーめんよりも細いストレートで、博多とんこつラーメンの麺のよう。もちろん、しっかり冷たく締められており、冷たいらーめんよりも、より「ポキポキ感」が強く、その食感がスープにぴったりです。
双方ともに、具は鶏むねチャーシューと長い穂先メンマ、岩のり、ネギ。冷たいらーめんの方には、ゆずの皮も入っています。穂先メンマは柔らかく、臭みもゼロ。岩のりはスープに浸して口に含むと、磯の香りがふわっと香ります。
もうひとつのベジらーめんは、動物系のだしは使わず、ベジブロスのみ使用。あっさりした味わいが人気で、この日は売り切れていました。
らーめん清湯 |
住所/札幌市北区北15条西5丁目1-7 |
電話番号/011-839-0674 |
営業時間/午前10時45分~午後3時、午後5時~9時半 |
定休日/水曜日 |