
北海道・札幌の食をテーマにした秋の味覚の祭典「2025さっぽろオータムフェスト」が9月12日(金)、札幌大通公園で開幕しました。大通公園の全長1キロにわたって延べ300店が出店し、北海道産の食材を使ったグルメや特産品、お酒やドリンクを提供しています。オータムフェストは10月4日(土)までの午前10時から午後8時半まで(ラストオーダー8時)。初日にTripEat北海道のスタッフと一緒に訪れました。全会場の様子を紹介します。

札幌観光協会や北海道新聞社などでつくる実行委の主催。2008年に始まり、20、21の両年は新型コロナの影響でオンライン開催となり、22年に再開。24年は過去最高の250万6000人が来場し、札幌に秋の訪れを告げる人気イベントとして定着しています。今年の出店数は昨年と同規模で、大通公園4丁目から8丁目、10丁目、11丁目を会場に開かれます。
目次
4丁目「IN4(インフォ)スクエア」

4丁目会場は、各会場のインフォメーションの役割を担い、札幌の観光情報を発信する「IN4(インフォ)スクエア」。ラーメンやスイーツなどの北海道の定番メニューや新鮮な魚介類、乳製品を使ったグルメなどが集合しています。グルメ雑誌「O.ton」のトーンとマッチした「おやじ好みの店」が集まる「O.ton屋台横丁」や札幌の食を紹介する雑誌「poroco」厳選の「porocoグルメストリート」、創業100年のソーセージの名店の「函館元町カール・レイモンハウス」、北海道の乳業メーカーによる「よつ葉MILK STAND」など、左党も甘党も楽しい、北海道の味覚を凝縮したエリアになっています。今年は、各会場の情報や札幌の観光情報を収集できる立ち飲みカウンター「IN4(インフォ)屋台も初登場しています。




「祐一郎商店」では、1枚の貝に貝柱を2つ盛ったホタテ焼き(850円)や青ツブの煮ツブ(700円)がいい香りを漂わせていました。「PIZZA&Cheese RITORNO-リトルノ-」では、こぼれるほどにチーズがかかった20センチを超えるマルゲリータ(900円)やクワトロフォルマッジ(同)が人気を集めていました。「丼兵衛」では、真ホッケ炙り焼きがこのボリュームで800円。「北の鴨肉専門店」では、ジュワジュワの肉の脂が落ち、火が上がっていました。
5丁目「北海道BAKU BAKU PARK」

5丁目会場は、「北海道BAKU BAKU PARK」と銘打ち、北海道産小麦のグルメが集結しています。


「Daily Bread&Sweets Market~日替わりパンとお菓子の市場~」は、日替わりで北海道各地の人気ベーカリーが出店します。初日には3店が出店。「マルヤマベーグルLOOP」は北海道では珍しいクロワッサン生地を使ったベーグルを販売。形と持った時のずっしり感はベーグルですが、バターの香りとしっとり感はクロワッサンという新しい味。「マルヤマベーカリーshian BY BUZZCAFE」は、焼きたてではなく時間がたつと味わいが増し、トーストして食べることを推奨している「絶対焼く食パン」や明太フランスなど定番のほか、総菜パンやメロンパンなどの菓子パンを並べています。この2店は通期で出店しています。


「札幌カリーキングダム2025」はスパイスカレー4店が日替わりで出店。単品で味わうのもよし、また、違う店のカレーを「あいがけ」して自分好みにカスタマイズするのもよし。日替わりの出店のうえ、複数のカレーメニューを提供する店もあり、どの組み合わせにするか、目移りしそうです。
「HOKKAIDOラーメン祭り2025inさっぽろ」は、第1期(9月18日まで)、第2期(9月19日~25日)、第3期(9月26日~10月4日)で店を入れ替え、各5店が出店。すべて北海道産小麦を使った麺を使用した道内の人気店が集まります。
6丁目「食と音楽 奏デリシャス」

6丁目会場は「食と音楽 奏デリシャス!」。野外ステージでは、SAPPORO CITY JAZZとコラボしたライブを開催。生演奏を聴きながら、北海道産の食材を活かしたメニューを楽しめます。
北海道文化放送(UHB)の番組やキャラクターとコラボした店も。その中で注目したいのは、スイーツです。札幌市北区新琴似の「パティスリー・リーモ」の「北海道レーズンバターモンブランパフェ」(1200円)は、オータム限定メニュー。UHBの地域情報サイト「SASARU HOKKAIDO」とコラボし、編集長の山口英里子さんと一緒に考案した新作です。


下から焼いたメレンゲ、メープルシロップ、ソフトクリーム、ラム酒に漬けたレーズンと生クリームをのせ、上からシャワーのようにモンブランクリームを絞っています。モンブランクリームは、北海道産バターを使ったカスタード風味で、極細の1ミリ。ラングトシャと四角い北海道産のバターをつかったレーズンバターが添えられています。バターのリッチさとラム酒の香りが大人の雰囲気で、メレンゲやラングトシャのサクサクとモンブランや生クリームのクリーミーさ、ソフトクリームの冷たさとレーズンバターのなめらかさと、対比を楽しめます。
両者は2023年からコラボメニューを共同開発して出店しており、昨年のコラボメニュー「北海道とうきびモンブランパフェ」(1200円)はなんと、オータムの期間中に9000食売れたそう。とうきびパフェと23年開発の「北海道スノーモンブランパフェ」(同)も販売しています。山口さんは「レーズンをラム酒にどのくらい漬けるか、何度も試作してこれが一番という自信作。ぜひ食べてみてください」と話しています。
もうひとつ、スイーツを。UHBの情報番組「いっとこ!みんテレ」とコラボした「CAFE SESSION」では、ニセコと札幌のコーヒー店のドリンクのほか、「さっぽろスイーツコンペティション2025」の受賞スイーツも提供しています。この日は市民賞の「パティスリーブリスブリス」の「さっぽろ neo いちごショートケーキ」(700円)がありました。ドーム状のケーキを覆う生クリームは軽い口当たりで、中にはふんわりスポンジとイチゴのソース。イチゴソースの甘酸っぱさが爽快です。
7丁目「大通公園7丁目BAR」

7丁目は北海道産のワインやシードル、日本酒、クラフトビールなどお酒が充実した「大通公園7丁目BAR」。ワインとシードル、日本酒、焼酎は3期、クラフトビールは2期に分けて入れ替えるので、何度も通って楽しめます。北海道産の果物を使った果実酒や色鮮やかなカクテルもあり、どんなフードとペアリングしようか、迷う喜びもあります。
ワインとシードルは、期間中120銘柄以上が出品されます。オータム期間中、1日に数本だけ限定で抜栓する希少なワインもあり、早めになくなってしまうことが予想されるので、ファンは日にちをチェックして、ブランチワインを楽しんでみては。

ここでは、オレンジワインの飲み比べ(3種1500円)をオーダー。MAOIワイナリー(長沼町)のナイアガラアンバーは、ナイアガラらしい華やかな香りで、飲みやすいすっきりとした味わい。タキザワワイナリー(三笠市)のデラウェアオレンジはふくよかさがあり、オレンジにしてはしっかりめのボディ。かすかに苦みも感じます。TADAワイナリー(上富良野町)のバッカスオレンジは穏やかな酸と厚みを感じ、上品な印象です。

フードは「タイ国料理マニータイ」の空心菜の辛味炒め(1200円)とたらばのパニプリ(3個1000円)をチョイス。空心菜はオーダーしてから鍋をガチャガチャ振ってつくってくれて、できたて、熱々。ニンニクの香りと空心菜のシャキシャキ感、そしてピリリと爽やかな辛みが一番の特徴。辛いのが苦手な人は二の足を踏みそうな容赦ない辛さですが、この辛みがなんともいえずおいしい。
パニプリの中には、カニの身がぎっしり。外側のインドのスナック「プリ」のサクサクと、フィリングの「パニ」のしっとりカニの身のコントラストが楽しく、少し強めの塩味がお酒のお供にぴったりです。
8丁目「さっぽろ大通ほっかいどう市場」

8丁目会場は、北海道内の市町村が地元素材を活かしたメニューや特産品、ご当地グルメなどを提供する「さっぽろ大通ほっかいどう市場」です。通期出店もありますが、第1期(9月16日まで)、第2期(9月19日~23日)、第3期(9月26日~30日)、第4期(10月2日~4日)で出店者が入れ替わります。


紋別市は、本ズワイガニの甲羅焼き(1200円)を販売。甲羅の中にはカニの足の身とみそもたっぷり。枝幸町の毛ガニ汁(2000円)は、1日100杯の限定。1杯に毛ガニが半杯という豪華版で、さすが、両市町とも産地ならではの太っ腹です。


中標津町の炭火コンロの上では、直径10センチほどの大きなシイタケがいい香りを振りまいており、たくさんの人が列をつくっていました。ブランドシイタケ「想いの茸(おもいのたけ)」で、イベント限定用に間引きして大きく育てているそうです。シンプルな北海道バター醤油焼き(600円)のほか、チーズをたっぷりのせた白いグラタン焼き(700円)や山ワサビ&削り醬油焼き(同)なども人気を集めていました。釧路町のブースでは、殻付きの焼きガキ(1200円)を鉄板の上に豪快に山盛りにしていました。
10丁目「お肉じゅっ丁目」

10丁目会場は「産地とあなたをつなぐ お肉じゅっ丁目」で、名前の通り、牛、豚、鶏だけでなく、羊や鴨などの肉料理が勢ぞろい。北海道各地のブランド肉を使っているほか、ローストビーフやメンチカツ、ハンバーガー、肉寿司、焼き鳥などメニューはバリエーション豊かで、お肉ばかりでも飽きる心配は無用です。

「YORIMICHI」で旨塩バーガー(900円)を注文。もちろん、ビールがお供です。がぶっとかぶりつくと、一口目からジューシーなパテが飛び込んできます。つなぎは感じず、肉そのもののおいしさ。薄くスライスしたトマトやチーズも入っていますが、あくまで肉が主役。ソースも肉を引き立てる控えめな味付けです。もちろん、ビールが進みます。


「室蘭やきとり鳥辰」では、北海道産の豚肉とタマネギを串に刺し、タレで焼いた「やきとり」(5本1500円)を販売。ボリュームたっぷりで、照りてりのタレが食欲をそそります。いいにおいに誘われて、「囲炉裏ジンギスカン蝦夷羊」をのぞいてみると、ラムチョップ(1500円)がいい色に焼けています。鉄板の上ではぜる脂が、おいしそうです。
11丁目「PRECIOUS TABLE」

11丁目会場のテーマは「PRECIOUS TABLE(プレシャステーブル)」。毎年大人気の有名店のシェフが日替わりで腕を振るう「さっぽろシェフズキッチン」をメインに、ドイツの伝統料理や本場のビールを提供するブースや、ホテルや行列のできる人気店、クラフトビールも出店しています。
開幕日と翌13日(土)のシェフズキッチンは、札幌市中央区のイタリアン「Semina」の田中シェフが担当。前菜盛り合わせ(1800円)と白糠産蝦夷鹿のラグーパスタ(1000円)をオーダーしました。オータムの趣旨のひとつとして、「使い捨てプラスチックの削減」が掲げられており、全会場で紙や木などの植物由来の食器や、洗って再利用できるリターナブル食器を使っていますが、ここはきちんと陶器のお皿で提供されるのが、さらにうれしいポイント。もちろん、ワインもワイングラスで出されます。

ここでは、ワインで乾杯します。森臥(名寄市)の白「バッカス2023」(1300円)はすっきりした酸とまるみのある舌触りで、心地よい苦みも残ります。栗澤ワインズ(岩見沢市)の赤「B+」(1200円)は近藤拓身さんのヴィンヤードのレンベルガーを使用。どっしりめのボディとタンニンも感じます。イタリアのスパークリング(1100円)は飲みやすいすっきりとした味わいです。

前菜の「恵庭産黒豚のプロシュットコット」は、ほどよい塩味とくさみのない甘い脂身が特徴。加熱していない生ハムに対し、プロシュットコットは加熱したハムで、しっとり、豚肉のうまさが凝縮されています。上に振りかけられた山ワサビがいいアクセント。辛みは抑えめで、さわやかさがプラスされています。
「空知黄玉ねぎのタルト」はじっくりと炒められた空知黄がぎっしり入っています。炒められたタマネギは甘さも増しますが、うまみも増しています。タルトのサクサクと、とろりとしたタマネギのフィリングがマッチしています。「由仁コーンのベルタータ」。「ベルタータ」とは、調べてみると、野菜のポタージュスープのこと。一口食べてみると、あまーーい。デザートかと思うほどの甘さですが、夏の終わり、最後のトウモロコシの凝縮された甘さを楽しめます。自家製ブリオッシュでぬぐって、きれいに食べきりました。
ラグーパスタは、鹿肉たっぷり。くさみはゼロで、スパイスもきいていますが、鹿肉らしい野性味を感じます。もちもちのフェトチーネにもぴったりです。
4丁目から11丁目まで、1キロにわたって、駆け足で紹介しました。2025さっぽろオータムフェストは10月4日(土)まで、23日間のロングラン。店の入れ替えもあるので、新たなおいしさの発見があったり、お店の人との出会いがあったり、何度訪れてもいろいろな楽しみがありそうです。