【登別】カルルス温泉で開湯123年の老舗「鈴木旅館」が、物置や自宅に眠っていた明治期からの家具や生活雑貨を館内に飾り、レトロな雰囲気づくりを進めている。地域課題の解決策を話し合う企業研修型ワーケーションで温泉を訪れた道外のIT関係者らが提案。老舗の強みを生かした集客を目指す。
玄関を入ってすぐの売店横の棚には商家の帳簿「大福帳」、薬箱、ダイヤル式の黒電話、そろばんなどの小物約40点が並んでいる。さらに館内を進むと、ロビーや廊下で火鉢、タンスなどの家具が存在感を示している。いずれも明治~昭和期に使われた古物だ。
新型コロナウイルス感染拡大でカルルス温泉に三つある旅館の宿泊客は激減した。慢性的な人手不足にも悩んでおり、3旅館と市は7月、ITやコンサルタントの道外企業の経営者ら7人を温泉に招き、旅館と一緒に地域の活性化を考える企業研修型ワーケーションを開催。鈴木旅館については、「古さ」に目を付けた参加者から「レトロを売り込んでみたらどうか」と提案された。
「逆転の発想で全く思いつかなかった」と5代目の鈴木寿一さん(54)。旅館や自宅、物置から古物を引っ張りだして8月末から館内の改装に着手すると、40代以上の宿泊客から「懐かしい」と好評を博した。写真撮影に熱心な客もいて、鈴木さんは時間があれば妻春美さん(54)らと「お宝」を探している。
若い世代にもレトロの魅力を伝えるため交流サイト(SNS)での発信を考えている鈴木さんは、「新しい発想を取り入れながら古物の見せ方も工夫するなどして、お客さんに懐かしい雰囲気を楽しんでもらいたい」と話している。(高木乃梨子)
(北海道新聞2022年9月27日掲載)
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