
9月12日に開幕した「2025さっぽろオータムフェスト」は、北海道・札幌の秋の味覚を求める人たちで連日、にぎわっています。オータムフェストは出店している各ブースで注文し、フードやドリンクをテーブルのある飲食エリアに自分で持って行くセルフサービスが基本ですが、大通公園7丁目の「大通公園7丁目BAR」西側の一画には、店の人と対面しながら飲食できる屋台のようなブースが4店、出店しています。TripEat北海道のスタッフと一緒に、行ってみました。
各店には、調理スペースを囲むようにコの字型にカウンターがあり、10数人が座って飲食できるようになっています。これまでのオータムフェストの屋台スペースでは、「もつ焼きには日本酒」「ぎょうざにはビール」など、各店がフードとドリンクのおすすめのペアリングを提案しており、パンフレットでも「屋台スタイルでお酒とおつまみのペアリングを紹介」となっていたので、フードに合わせたお酒をおすすめしてくれるのかと思っていたのですが、各店ともビールやハイボール、サワー、日本酒など幅広く取りそろえ、「好きなものを飲んでください」とのこと。どうやら今年は、コンセプトが変わって、自由になっているようです。そこで、自分たちで勝手に合いそうなお酒をペアリングしてみることにしました。
もつ煮をビールで もつ処やまり

想定とは違っていましたが、気を取り直して楽しく飲みましょう。1軒目は、「もつ処 やまり」。地下鉄大通駅にほど近い札幌市中央区南1条西5丁目に本店があります。平日も午後3時から営業していて「昼飲み」ができ、夜も満席が続く人気店です。この日もちょうど2席空いていて、滑り込みセーフ。

やっぱり最初はビール(750円)、そして、名物のもつ煮(700円)でしょう、とあまり考えずに注文です。その後、メニューをよく見ると、「屋台限定の特別メニュー」のもつ焼き(1100円)があるのを発見。「北海道産の牛、豚のもつのおいしいところどり」と書かれており、「こっちにするんだった」と悔やみますが、ビールがきたのでとりあえず、乾杯!

ビールはアサヒのマルエフ。紙コップですが、こんもりとした泡はきめ細かく、まろやかな味わいはマルエフならでは。さっそくもつ煮もいただきます。具はもつのほか、ダイコンや一口大のかまぼこ、豆腐、あげなど。みそ味ではなく、鮭節とかつお節の透明なだしで煮込んでいるのが、やまりのもつ煮の特徴です。うまみの強い、優しい味わいが、染みます。

お店の人が「一味も、黒コショウも合いますよ」と声をかけてくれて、器の片側にそれぞれちょっとずつかけてみて味見。黒コショウもだしのうまみを引き立て、パンチもあって意外にも合うのですが、ここはオーソドックスに一味を多めにどばっと。もつのプリプリ、トロトロ、クニュクニュの食感を楽しみながら、完食です。


ほかのお客さんがだし巻き玉子(700円)を頼むと、お店のスタッフが卵を2個丁寧に溶き、鉄板にそのまま全量を流し込みました。コテで鉄板に広がる卵液を集めて、くるくると巻き込み、1分ほどで完成。見るからにプルプル。手際の良さとコテさばきの見事さに、思わず見とれてしまいました。
どて串をレモンサワーで きんとと

次は、二条市場に隣接した「のれん横丁」の人気店、「きんとと」へ。ここの名物は「どて串」です。盛り合わせもありますが、単品で十勝牛すじ(400円)と当別産豚タン(300円)、留寿都産大根(300円)をオーダーしました。以前のオータムフェストのペアリングでは、「どて串にはレモンサワー」をうたっていたので、ドリンクはレモンサワーで。

牛すじは5センチほどのかたまりが3個ほど、豚タンは15センチ超えと、ボリューム満点。赤みその色で、濃い味を想像しますが、味付けは優しくまろやか。むしろ、薄味といってもいいくらいです。大根は味がしみしみ。牛すじはホロホロに煮込まれ、繊維がほぐれ、脂の部分はトロトロ。豚タンは柔らかく煮込まれ、サクッとした歯触りです。さっぱりしたレモンサワーがよく合います。

どて串と並んで、おすすめのメニューは自家製の燻製。十勝産カマンベールと十勝和牛ローストビーフ、厚真産鶏もも、噴火湾産ホタテ、室蘭産うずらのたまごの5種プレミアムくん製串(1200円)や中札内産枝豆の燻製(550円)も用意しています。
ジビエを赤ワインで tabibitoキッチン

次は、「tabibitoキッチン」。狸小路7丁目のM’s space2階で営業しているジビエ料理のお店です。北海道でジビエといえばエゾシカが真っ先に思い浮かびますが、ここはエゾシカのみならず、ヒグマも提供しています。せっかくなので、ちょっとお高いのですが、北海道ヒグマ炙りベーコン(2500円)とジビエに合いそうなのは赤ワインかな、と、余市ワイナリーのツヴァイゲルトレーベ(900円)をお願いします。


ヒグマ炙りベーコンはヒグマのバラ肉を使用した自家製。注文してから、鉄板の上であぶってくれます。粒入りマスタードが添えられていますが、まずは何も付けずに一口。失礼ながら、予想以上においしい、。くさみはなく、うまみがあり、かみしめるごとに味がジュワーッと出てきます。脂もありますが、くどくはありません。マスタードを付けると少しさっぱりして、こちらの方がおすすめです。

余市ワイナリーのツヴァイゲルトレーベはマイルドで軽やかなタンニンのある味わいで、もっとしっかりとした骨格のワインの方が合うかもしれません。
オーナーは狩猟免許を持っており、ヒグマは契約している北見のハンターが仕留めたものを仕入れています。オーナーはバンドマンを目指して東京で活動した後、日本一周の旅に出全国各地を渡り歩いたことから店名を「tabibito」としたそうです。店は2013年にオープン。ジビエメニューを提供するほか、エゾシカやヒグマのベーコン、ハム、ソーセージなどの冷凍食品、エゾシカやヒグマの肉を使ったペット用のおやつも製造、販売しています。

そろそろ次に…と立ち上がり、店を出てしばらく歩くと、後ろから店のスタッフが追いかけてきました。なんと、お会計がまだでした。この前の2店が前金で注文時に支払いを済ませていたため、ここも支払ったつもりになっていて、まさかの無銭飲食未遂でした。無事に支払って、今度こそ、次のお店へ。
おでんをだし割りで おでんとさかな せろり。

最後は「おでんとさかな せろり。」です。店名の通り、メインは北海道産の具材にこだわったおでん。さらに、ザンギやポテトサラダ、牛すじ煮込みなどの居酒屋メニューもそろえています。ここは、王道のおでんの中から、つぶ貝串(300円)と竹内養鶏場の白いたまご(200円)、ホッケのつみれ串(300円)と、美味しい枝豆(450円)を。ドリンクはお店一押しのだし割りです。

どんこでとったおでんのだしは薄いしょうゆ色で、優しい味わい。つぶ貝串は、大きめの灯台ツブが3つ、串に刺さっており、プリプリ、コリコリの食感。柔らかく火を通してあります。ホッケのつみれは、フワフワで白身魚の上品な味わいにショウガがきいています。TripEat北海道のスタッフが強くひかれた「白いたまご」は、表面の白身はしっかりとだしの色がしみこんでいますが、割ってみると黄身は確かに淡い黄色。餌の99.8%が北海道産で、そのうち北海道産のコメが7割近くを占めており、黄身に色が付かないのだそう。美味しい枝豆は、色鮮やかで、普通においしいです。


だし割りは、最初にワンカップを渡されます。カタクリの花の絵が描かれた、かわいらしい男山酒造のワンカップ。半分ほど飲むと、おでんのだしを入れてくれてだし割りを味わうことができます。常温の日本酒が熱々のおでんにぴったり。おでんをおいしく感じる季節になったことを実感しつつ、ワンカップを一口、二口。おっと危ない、全部飲んでしまいそうなのを抑えて、お店のスタッフにワンカップを渡します。だしのうまみが感じられ、日本酒がまろやかになって、おでんに合わないわけがありません。

ちなみにこのお店も会計は最後。もちろん、忘れずに支払って、ごちそうさまでした。
オータムフェストのワイワイ、ガヤガヤした雰囲気も楽しいものですが、屋台風のカウンターで静かに飲むのも、また違った趣があります。お店にいるようで、外の風を感じることができ、外飲みと店飲みのいいとこどりを楽しみました。
2025さっぽろオータムフェストは10月4日(土)までの午前10時から午後8時半まで。ラストオーダーは午後8時。