
国産のチーズのおいしさや新しい食べ方を広めようと、ANAクラウンプラザホテル札幌(札幌市中央区北3条西1丁目)のダイニングと和食店で11月28日(金)まで、「おいしいチーズは日本にあり!すごいJAPANESEチーズフェア」が開かれています。新しく開発された3種類のチーズを月替わりで使ったオリジナルメニューを、ランチの一品として提供。新しいチーズのおいしさを伝えています。

北海道の観光情報サイト「ぐうたび北海道」が企画した「食のマッチング支援事業」の第2弾。独自の技術を活かし、新しいチーズを開発している日本獣医生命科学大(東京)や国産ナチュラルチーズの開発・普及を進める公益財団法人とかち財団(帯広)などと連携し、国産チーズのブランド化を進める狙いです。

フェアでは、同大応用生命科学部食品科学科の佐藤薫教授らが開発した3種類のチーズを使用。9月はチーズの製造過程で出るホエイ(乳清)を活用した「ブラウンチーズ」を、10月には国産の乳酸菌を使用した「カマンベールチーズ」を、11月には麹菌を使った「麹菌熟成チーズ」を、それぞれ和食と洋食のメニューにアレンジし、提供します。
9月のブラウンチーズは、ノルウェー発祥の乳製品で、ホエイを煮詰め、型に流し込んで固めてつくります。ホエイを煮詰めることで甘みと香ばしさが出て、砂糖は使っていないのに、キャラメルのような驚くほどの甘みがあります。日本人の口に合うようにクリームをブレンドして塩味や酸味を調整し、煮詰めた時に出るざらつきを抑えるため糖の結晶を砕くなど工夫して完成させました。
大手乳業メーカーなどはホエイを粉末状にして食品原料として出荷するなどしていますが、小規模なチーズ工房などはリコッタチーズを作るか、ブタなど家畜のえさにする程度しか活用法がありませんでした。佐藤教授は「小さなチーズ工房でも活用でき、さらに付加価値を付けられたらと考えました」と話します。


今回のフェアでは、下川町のバウアーファームが商品化した「ブラウンチーズホエイキューブ」を使っています。和食處「雲海」は「ブラウンチーズとおこげの酸味一体」として、魚と肉の南蛮漬け、ご飯のおこげとともに提供。チーズのうまみと甘み、南蛮漬けの酸味が調和した新しいおいしさです。試食した佐藤教授は「チーズ単独で食べるより、料理にするほうが(用途に)広がりが出る。チーズというと洋食という思い込みがあったけれど、とてもおいしい」と感心していました。
オールデイダイニング「MEM」では、「ブラウンチーズと生ハムとオレンジのメルバトースト添え」を用意。チーズのまろやかな甘みを、かんきつのさわやかさと生ハムの塩味で引き立てています。


10月は酒粕を使ったチーズの料理を用意。チーズを作る際に入れる乳酸菌(チーズスターター)は、ほとんどが海外からの輸入品で、佐藤教授は「日本にも、漬物や発酵食品などに含まれる乳酸菌が数多くあり、海外のチーズと差別化するために、国産の乳酸菌でチーズを作ることができないか」と考えたそう。チーズに適した乳酸菌を探し、試行錯誤を繰り返した結果、熟成が早くうまみが生じる酒粕の乳酸菌が合うことを発見しました。
フェアでは、十勝野フロマージュ(中札内村)の「なかさつないカマンベール」を使います。「雲海」では「なかさつないカマンベールチーズと最中の塩味一体」として、塩昆布と海苔の天ぷらを合わせます。チーズのミルキーさと塩昆布の塩味、天ぷらの香ばしさが和洋折衷の新しい味を生み出すそう。
「MEM」では「なかさつないカマンベールとドライフルーツハニー仕立て」をメニューにのせ、チーズの柔らかなこくに、ハチミツやドライフルーツの芳醇な甘さを組み合わせます。


11月は、麹菌で熟成させたチーズが登場。佐藤教授は「差別化をしないと、海外の安価なチーズに太刀打ちできず、ほかにない、まねのできないものでチーズをつくろう」と麹菌に着目。日本には日本酒やみそ、しょうゆなどさまざまな発酵食品がありますが、大豆やコメを発酵させる菌が生乳に合うとは限らず、探索を繰り返したそう。うまみを効率よく作り出す麹菌を選び出し、熟成の条件を変えるなどして、開発したそうです。
フェアでは宮城県蔵王町の「一般財団法人蔵王酪農センター」が製造する「麹チーズ蔵」を使用。「雲海」では「麹チーズ蔵と仙台麩の甘み一体」として、魚の西京焼きやくるみの甘露煮を添えて出します。みそと麹という和の食材を合わせることで強いうまみがうまれ、食中酒と合うそうです。
「MEM」は「麹チーズ蔵と鰊の酢漬け 有馬山椒添え」をメニュー化。ほのかに日本酒の香りがあり、強いうまみのあるチーズと、ニシンのうまみや添えたキャロットラペのさわやかな酸味を組み合わせます。

佐藤教授は「これまで、生産者が抱える悩みや課題を解決したり、付加価値を付けたりするために開発してきたチーズを、多くの人に食べてもらいたい」とフェアを機に、新しいチーズを広めたい考えです。
これらのメニューは、両店とも、ランチメニューの一品として提供しています。「雲海」では「選べる和ランチ雲海御膳」(2500円)や「彩り膳」(3000円)、「MEM」では「選べるパスタランチ」(2100円)や「ワンプレートランチ」(2300円)の中の一品に組み込まれています。ランチの提供時間は、雲海は月曜から金曜の午前11時半から午後3時半まで(ラストオーダオー2時半)、MEMは水曜から金曜の午前11時半から午後3時半(同2時半)。問い合わせは、雲海の電話 011-242-2827、MEMの電話 011-242-2822へ。