
掲載が遅くなってしまったのですが、余市町内のワイナリーやヴィンヤードを歩いて巡りながら、余市、仁木両町のワインを楽しむイベント「ラフェト・デ・ヴィニュロン・ア・ヨイチ(農園開放祭)2025」が9月上旬、ワイナリーが集積する余市町登地区で開かれ、TripEat北海道編集部のスタッフと参加しました。フードのブースやキッチンカーが出店し、約1500人がワインと食、余市の秋の風を楽しみました。季節も変わり、「過去のできごと」になってしまったのですが、ワインの裏話や生産者の思いなども聞くことができ、せっかくなのでご紹介したいと思います。
目次
今年は抽選に。倍率13.4倍のレアチケット

ワイナリーなどでつくる実行委と余市観光協会が主催。登地区の16カ所に過去最多の88ブースが出店しました。このうち、ワイナリー・ヴィンヤードは44。事前申込制で、定員1500人ですが、例年、オンラインで発売後、数分で完売となり、アクセスも集中するため、今年は抽選に変更されました。町民やJALツアー、バスツアーなどを除く一般販売400枚に対し、13.4倍に当たる5349人の応募がありました。町民枠は100枚に対して2.4倍の235人でした。

当選者は事前に参加料3000円を支払い、会場では受け付けをしてグラスとグラスホルダー、バッジ、パンフレットを受け取ります。登地区内を走る循環バスと徒歩で会場を巡り、ワインやフードを購入する仕組みで、ワインは1杯300~500円程度です。普段は立ち入ることのできないブドウ畑を開放しているワイナリーもあり、色付き始めたブドウを見るのも楽しみのひとつです。
最初の乾杯はドメーヌ・ユイで

最初は、SNSで「午前9時半の開始と同時に、会場にいる全員で乾杯しましょう」と呼びかけていた「ドメーヌ・ユイ」に向かいます。4ワイナリーが出店しており、まだ開始前ですが、すでに行列ができているところもあります。「1杯目は白か泡がいいな」と選んだのは、「モンガク谷ワイナリー」の白「栃」。オレンジのようにも見える薄い色のロゼ「薄紅桧」を選んだスタッフと、乾杯!


2杯目は「登醸造」のロゼ「セツナウタ」。ツヴァイゲルトレーベを使った、一見赤にも見えるほどの濃いロゼです。なんと、1杯200円。これも早々に飲み干し、「ドメーヌ・ブレス」(仁木町)のリリース前の新作「ユア・ストーリー2024」のロゼ泡を注いでもらったところで、9時半になりました。

4ワイナリーの醸造家さんたちがそれぞれ一言ずつ、自己紹介をした後、全員で乾杯!サックスとドラム、キーボード、ベースの村川佳宏カルテットが「Take the A Train」を演奏し始め、これで正式にスタートです。もう1つ、ドメーヌ・ブレスの「シャルドネ2024」がリリース前の初物だったので、これをいただいて、後ろ髪を引かれながら次の会場に向かいます。
余市町ワイン大使の「ひぐち君」にインタビュー

ここで、余市町ワイン大使を務める「髭男爵」のひぐち君に出会い、インタビューをお願いすると快く応じてくれました。ラフェトについて、ひぐち君は「普段は入れないブドウ畑を巡ってワインを飲める貴重な体験。生産者も普段は見ることのできない消費者の顔やワインを飲んだ反応を見られると楽しみにしていて、両方にとってうれしいイベント」と高く評価。さらに、参加者が飲み歩いているにもかかわらず、「道にごみが落ちていることもない。酔っ払って倒れたり寝込んだりしている人もいない。マナーが良くて、余市やワインへのリスペクトを感じます」と感心していました。

ひぐち君は実は、北海道文化放送(HBC)のワインの番組「PAIRING×(ペアリング)」の収録で来ていました。「『ルネッサーンス!』って言っていたのに、ワインの番組をお持ちになっていて、すごいですね」と言うと、ひぐち君に「いや、『ルネッサーンス』って言っていたのは、ぼくじゃないですけどね」と突っ込まれてしまいました。確かに、「ルネッサーンス!」と言っていたのはひぐち君ではなく、ルイ53世でした。

循環バスに乗って移動しようとしたところ、バス乗り場の前に「ニトリワイナリー」が出店、2024年に初めて委託醸造したワインを提供していました。5種類ある中から選んだピノ・ノワールロゼは、ベリー系の香りで酸味が際立ち、シャルドネはリンゴのような香りでさっぱりさわやか。ニトリホールディングス傘下の広告業ニトリパブリックが元山本果樹園を買い取り、「ニトリ観光果樹園」として2022年から醸造用ブドウを栽培しており、2024年は初ヴィンテージ。2025年からは自社で醸造も始めるそうです。
ヒロツヴィンヤードで仁木町のワインや北島豚を堪能

やってきた循環バスに乗って、「ヒロツヴィンヤード」に到着です。ここには6つのワイナリーが出ています。まずは、「naritaya」(仁木町)で「Asahidai245BLANC」の2022年と2023年を飲み比べ。2022年は花の香りとリンゴやかんきつの香りがあり、こくのある味わいで、心地よい苦みを感じます。2023年の方が、よりこくがある気がします。

駆けつけ何杯かのワインで刺激され、お腹も減ってきました。ブランドポーク「北島豚」を生産する余市町内の養豚農場「カネキタ北島農場」のブースでは、代表の北島正樹さん自ら、鉄板の前に立っていました。


600円のポークステーキを一皿お願いすると、大きなロース肉を焼き、カット。「600円なら、半分くらいかな」と思っていると、なんと1枚まるまるをサーブしてくれました。気前の良さに驚いていると、「生産者だからね」とにっこり。食べてみると、肉質は柔らかく、脂がくどくなくさらっとしていて、とってもおいしい。これはお得です。

おいしい北島豚を前に、ワインが足りない。「ノース・クリーク・ファーム」(仁木町)でロゼ「ゲヴェルツトラミネール」と白「ソーヴィニヨンブラン」を買い足します。2024年ヴィンテージは、鈴木正光さん、綾子さん夫妻の自社醸造の初ヴィンテージで、エチケットも新たな装いになりました。

ノース・クリーク・ファームのエチケットといえば、キャンベルアーリーのペティアン「フォー・アリス」に描かれたウサギの絵を思い浮かべます。なぜ、ウサギ?鈴木さんは「うちの畑によく野ウサギが出るんです。ウサギを見て、『不思議の国のアリス』の中で、アリスが三月ウサギからテーブルにありもしないワインをすすめられる場面を思い出し、『フォー・アリス』と名付けました」と教えてくれました。それを聞いて、やっぱりフォー・アリスも飲みたくなって、注いでもらいました。

「NIKI Hills Winery」(仁木町)に、ちょっと変わった一品が置いてありました。かき氷のシロップの代わりにワインをかけたぜいたくバージョンです。せっかくのワインが水っぽくなってしまうのでは…とややちゅうちょしましたが、ワインのお供の水を飲む代わりに、かき氷を食べればいいんだ、と考えて、注文。高く盛ったかき氷にはミントの葉が添えられ、20ミリほどの白「HATSUYUKI」が別添えされて自分でかき氷にかけていただくスタイルです。
最初はちょっと、もったいないなあ、と思ったのですが、食べてみると意外に(失礼!)おいしい。味が薄くなることもなく、氷のシャリシャリした食感と辛口のケルナーの味わいがさっぱり、おいしい。実はNIKI Hillsのテラスショップで人気の一品なんだそう。

もうちょっと、何か食べたいねと、フードも買い足し。naritayaの成田和仁さん、真奈美さん夫妻が「東京にいたころ、よく行っていた料理店で、おいしいですよ」と紹介してくれた「ぽつらぽつら」(東京都渋谷区)でおすすめの「ポルチーニ茸のラビオリ」。ポルチーニの香りと濃厚なソースで食べ応えがあります。

さらに、「前田農園」で摘みたてのバジルを使ったカプレーゼを。すると、小さな男の子が店員さんとしてブースに立っていました。何を売っているのか見てみると、黒曜石。かわいらしい店員さんから、カプレーゼと黒曜石を購入しました。
ランセッカでは北星余市高校生のワインも
おいしいフードがあって、思いのほか長居してしまいました。500メートルほど離れた「ランセッカ」を目指して歩きましょう。



ランセッカではまず、白「ポンニタイ」。安定のおいしさです。ビストロ「Sua.」(札幌市中央区)から、同店定番の青唐辛子のピクルスとアンチョビ、オリーブのピンチョスを購入し、ちびちびかじっていると、気づかないうちにグラスは空っぽ。ソウマファームのケルナーやセミヨンなどのフィールドブレンドの白「蛙鳴千草(あめいせんそう)」や貴腐の雰囲気のある白「十返りの花」、フラッグシップの赤「KOYACHI」など、一通りいただいて、さて、次へ!と思ったら、まだ10代の若者たちがワインを売っていました。

北星余市高校の生徒さんたちです。北星余市高にはワイン造り総合講座「ぶどうのお仕事」という課外学習があって、選択するとワイン用ブドウの栽培に年間通じて携わるそうです。ランセッカの笠小春さんが指導に当たり、2015年に畑を起こすところから始め、今はブドウを育ててランセッカに醸造を委託。ブドウの徐梗やびん詰め、ラベル貼りなどは手作業で高校生が担っているそう。

ピノ・ノワール2019と2020をいただいてみました。ランセッカでは珍しい、単品での醸造ですが、素直で優しい味わい。生徒たちはもちろん、飲んだことはないそうですが、あと数年して自分たちのワインをみんなで味わうのは、さぞ格別なことでしょう。
カーヴ・デクラとドメーヌ・モン、安芸農園も飲みます!


次は500メートルほど歩いて、「カーヴ・デクラ」へ。自社農園で育てたシャルドネとピノ・ノワール、ゲヴェルツトラミネールをブレンドした「Preface」は、300本ほどしか造っておらず、一般に出荷をしていないそうで、エチケットもありません。「Pacs」はナイアガラにピノ・ノワールをブレンドした微発泡のロゼで、おりが入っていて、丸みのある味わいです。


飲み干して、すぐ近くの「ドメーヌ・モン」に行きましょう。ここでは、「モン・ルージュ」や「ドン・グリ」などを、いただきました。しっかり味わいながら飲んでいるのに、不思議なことにすぐにグラスが空になるのは、なぜでしょう。

同じ会場には、「安芸農園」もブースを出していました。安芸農園は120年以上、6代にわたって続く果樹農家。先代は余市でワイン用ブドウの栽培にかじを切った「7人の侍」と呼ばれるひとりです。この日、出品していた「シャルドネ2024」は「ドメーヌ・ブレス」(仁木町)に委託醸造。樹齢12年のシャルドネで、就農13年目の6代目、元伸さんにとって、「共に歩んできたような、仲間意識がある」と感慨深げです。
そんな話を聞いて、元伸さんの思いや安芸農園の歴史に思いを馳せながら飲むワインは、より一層味わい深く感じられます。
ドメーヌ・アツシスズキにも立ち寄り


またバスに乗って美沢地区に移動し、少し歩いて「ドメーヌ・アツシスズキ」に立ち寄ります。丸眼鏡がトレードマークの大野崇さんの「マルメガネ」もここに出店しており、「ORANGE」を1杯。ブドウの品種は公表されていませんが、薄いミカン色のオレンジワインで、ハチミツや果物の香りとリンゴやモモなどのフレッシュな果実感を感じます。
マルメガネのブースにいる人たちは、ワインのエチケットの柄のおそろいのTシャツを着ています。かわいい!エチケットの丸眼鏡をかけた馬は、大野さん自身がモデル。大野さんがこのTシャツを着ているのは、ちょっと不思議な感じです。

「ワイン食堂幸」(札幌市中央区)の吉川幸子さんが、冷たいおでんを販売していました。キュウリやトウモロコシ、プチトマトなどが冷たいだしの中に浮かんでいて、涼しげです。お店では冬は温かい、夏は冷たいおでんを出しており、おいしいのは確認済み。1カップいただきます。上品なだしは塩分控えめですが、うまみが強く、野菜の味が生きています。ナチュールワインにぴったりです。

日本酒にこだわる酒店の店主さんから「日本酒とナチュールワインの品ぞろえが良く、何を食べてもおいしい」とすすめられていた焼き鳥店「ケイハチロウ」(札幌市中央区)も出店していました。行きたいと思っていたのですが、チャンスがなく、ここで「初めまして」です。せっかくなので、紅ショウガ入りのつくね串を購入しました。


マルメガネのORANGEはすでに飲んでしまったので、味が炭酸飲料「ファンタ」に似ていることから名付けられた「不安多」をもらい、つくねや冷たいおでんと合わせました。さらに、アツシスズキで「日暮れの雫と茜雲 橙」も入手。リンゴのようなさわやかな酸と優しい甘さがあり、果実感たっぷりで、おいしい。
YOSHIKIのヴィンヤードで記念撮影

そろそろ昼を回り、スタート時には今にも泣き出しそうだった空に、晴れ間が見えてきました。これはちょうどいい!実はぜひ写真を撮りたいところが、このすぐ近くにあります。500メートルほど南に向かって歩いていると、ドメーヌ・タカヒコのヴィンヤードの一画に、ありました!今年5月に余市町登町で独自のワイン造りプロジェクトを始動させることを発表し、自らピノ・ノワールの苗木を植えた米・ロサンゼルス在住のミュージシャン、YOSHIKIさんの専用畑です。約0.4ヘクタールの畑の片隅に、「X by YOSHIKI」と書かれたモニュメントが建てられています。
YOSHIKIさんは町内の「フィールドオブドリームスワイナリー」と業務提携し、製造に当たっては、ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さんが監修。2028年に初リリースされる予定で、今はヴィンヤードがあるだけですが、多くのラフェト参加者が足を運び、写真を撮っていました。このモニュメントは余市の新しい観光スポットになっています。
木村農園でいろいろ味見の後、才川農園にもおじゃま


写真を撮ったら、次はそのすぐ近くの「木村農園」におじゃまします。7月に除葉の農作業ボランティアでおじゃました「ソウマファーム」の相馬慎悟さんが、自社畑のメルローでつくった赤「ソウマルージュ2024」や白「Too late」、白「ブランドノワール」をサーブしていました。普段は相馬さんが経営する余市町内のイタリアン「ヨイッチーニ」や限られた飲食店でしか飲めません。ソウマルージュは濁りのある赤。後味がしっかりとした、力強い味わいです。Toolateは遅摘みのナイアガラでつくっています。ブランドノワールは赤ワイン用の黒ブドウを使い、白ワインの醸造方法で醸しており、淡いロゼ色です。

「じき」も出店しています。白「環(めぐる)2023」と赤「夕2023」をいただきます。じきはオーガニックにこだわって、ブドウや農作物を生産しており、2023年のこのヴィンテージまでは、自家栽培のブドウに加え、購入した「余市エコビレッジ」のブドウを一部、使っています。環はシャルドネとソーヴィニヨンブラン、ピノ・ブランの混醸で、自家栽培ブドウ100%使用。果実感があり、しっかりした印象です。夕はツヴァイゲルトレーベが主体で、こちらも割合、どっしりした味わいです。


お隣には、「ヨカワイナリー」が。ヨカワイナリーは、自家栽培ブドウのみでつくった「余香」と、買いブドウでつくった「余珀」があります。訪れた時に残っていたのは、余香のケルナーとピノ・ノワール。ケルナーはレモン色で、果実感があり、ピノ・ノワールは若々しい印象ながら、タンニンもあり、もう少し寝かせてから飲んでみたい感じです。


仁木町の元地域おこし協力隊員でつくる仁木産業振興社もここに出ていました。過度に科学的な手法をとらず、「なりゆき」と自然の力に任せたワイン造りを実践していることから名付けられた「NARI-YUKI」。キャンベルアーリーや旅路などに加え、初対面の「レッドナイアガラ」がありました。レッドナイアガラは余市、仁木両町でも生産量が少ないそうで、皮は黒ブドウの色、実は白ブドウ。ワインは白のペティアンですが、ほんのりと色味がついています。果実味豊かで、柔らかい苦みも感じます。


さて、そろそろ次に向かいましょう。途中、「才川農園」を通りかかったので、寄ります。昨年、一昨年のラフェトで大好きになった冷凍サクランボが目当てです。ハート型の果肉の南陽は、酸味が控えめで、甘さが強く、大粒な紅さやかは酸味と甘みのバランスが絶妙。ひんやりした自然の甘さが最高においしいです。
才川農園では、栃木県のココ・ファーム・ワイナリーやロウブロウ・クラフトのワインの原料となるブドウを栽培しており、それらのワインも提供しています。そうなると当然、飲んじゃいます。サクランボを味わいながら、ココ・ファーム・ワイナリーの「農民ドライ」やロウブロウ・クラフトの「ASHIMOTO WO MIRU」シリーズ、ピノ・ノワール100%の赤「Seeing Red」を楽しんで、さあ、次へ。
ドメーヌ・タカヒコでじっくり飲み比べ

「ドメーヌ・タカヒコ」はラフェト開催のこの日だけ、ヴィンヤードを開放し、中を通り抜けられるようになっており、その途中途中に、いろいろなワイナリーがブースを出しています。途中にあった「Domaine ICHI」(仁木町)で水分補給。ピノ・グリを醸したオレンジを味わいました。「Misono Vineyard」では、ロゼ「ピンク・ナイアガラ」を1杯。先ほどの「レッド・ナイアガラ」はブドウの品種ですが、こちらはナイアガラ果汁に搾汁後のピノ・ノワールの果皮を浸透させて色を付けたものです。

ドメーヌ・タカヒコのワイン提供ブース前には、数人が並んでいますが、ほとんど待つことなく、オーダーできます。この日、提供されていたワインは6種類。濁りのある「おり」好きを自認する私としては、まずは「ナナツモリオーリー2023」をいただきます。生産本数300本の希少なワインで、樽熟成でできたおりを集め、再度おりとともに熟成させ、その上澄みをびん詰めしたものです。おりを「不純物」として嫌う人もいますが、うまみや香りが凝縮されていて、私は大好きです。ちなみに、「Lie(リー)」はフランス語で「おり」の意味があり、「O-Lie(オリ)」はだじゃれだそう。

続いて、「ナナツモリピノノワール2022」。ドメーヌ・タカヒコのフラッグシップで、自家栽培のピノ・ノワールのみでつくっています。だしのようなうまみがあり、複雑な香り。まだ酸があり、とがった印象で、もう2年ほど寝かせて飲みたい1杯です。

「ヨイチノボリNパストゥグラン」はナナツモリピノノワールのセカンドキュベ。2023年は猛暑で、ピノ・ノワール100%では理想のワインをつくることができず、やむなくツヴァイゲルトを3%だけブレンドし、「ヨイチノボリ」として格下げしてリリースしたワインです。このため、通常はつくられておらず、このヴィンテージのみの製造です。「格下げ」する必要もなかったのでは?というほど、おいしいワインです。

「ヨイチノボリロゼコムルージュ2024」はピノ・ノワールとツヴァイゲルトを各50%ずつブレンド。「ロゼコムルージュ」は赤のようなロゼという意味。余市町のふるさと納税の返礼品となっているほか、札幌の飲食店向けにリリースされています。果実味が豊かで、これもおいしい。

「ナナツモリヴィノップロゼ」は「ヴィノップ」という畑の試験区画に植えたブドウで醸したロゼ。ピノ・ノワール60%、ガメイ5%など、24品種をブレンドしています。生産本数が300本と少なく、イベント時にしか出していないそう。ただ、寿司との相性が良く、一部の高級寿司店には出荷されています。「和食や海産物には白」という先入観を覆されるのが、ドメーヌ・タカヒコのだし感のある、うまみの強いワインのすごさです。これはぜひ、お寿司に合わせてみたいものです。
「ナナツモリブランドノワールMV22、23」はこの日、唯一の白。貴腐(ボトリチス)に感染したピノ・ノワールを粒単位で収穫して造られており、口当たりは優しいのに、ミネラル感が強く、余韻も長く続きます。

この6種類を一通り飲んで、オーリーやナナツモリなどをお代わり。心配していた天気も回復し、さわやかな秋の青空が広がっています。きれいなヴィンヤードと秋の空を眺めながら杯を重ねて、ここに居座りそうになってしまいました。でも、まだ行きたいところがあるので、お尻を折りたたみチェアから引っぱがして、出発です。
まだまだ行きます、ロウブロウ・クラフトへ

次に向かったのは、「LOWBROW CRAFT(ロウブロウクラフト)」。醸造所は元リンゴ倉庫だった石造りの建物で、その前に机を並べてワインを提供しています。就農5年目の赤城学さんが初めて、自園のツヴァイゲルト100%でつくった赤「MOMOMOM2023」をいただくことができました。樹齢3年目の木から、900本を醸造。昨年初リリースだった自園のピノ・グリ100%の白「POPPOPOP」ときょうだいワインです。POPPOPOPは今年、樹齢4年の木から1900本つくりました。


ロウブロウのワインの特徴のひとつが、ポップでユニークなエチケット。MOMOMOMとPOPPOPOPのエチケットも不思議な形をしており、宇宙人かロボットかというような生き物?が描かれています。2つのエチケットは実は、左右対称。反転させるとぴったりと同じ形になるそうです。ポップなエチケットに対し、ワインの味わいは繊細で複雑。幸せな気持ちになれるワインです。
あと20分…。最後の駆け込み山田堂へ


この時点で午後4時20分ころ。会場周辺からJR余市駅に向かう最終バスは4時40分発。そろそろ、行かなくてはと思い、バス停に向かうと、「山田堂」がありました。バスが出発するまでの短い間、かろうじて残っていた、かわいいリスのエチケットの「ナイアガラスパークリング2024」をいただきました。さらに、まだほんの少し時間があったので、ここに出店していた「pur.」(仁木町)でも「ピノ・ノワール」を1杯。

無事に最終のバスに乗って、今年のラフェトをギリギリまで楽しみました。ラフェトの参加は、今年で3回目。参加して毎回、「楽しかった」「良かった」と思うのは、希少なワインを飲めることはもちろんですが、何より普段は会えない生産者から、ワインやブドウづくりについての思いや苦労、喜びを聞けることや、余市の風を感じながら地元でつくられたワインを味わうことができるぜいたくさを感じられるからです。

さらに、提供する側も、受け取る側も、みんなが笑顔。運営を支えてくれているワイナリー関係者、町や農協、商工会などの人々が、嫌な顔ひとつせず、「みんなが楽しく過ごせるように」と動いてくれていることも、しっかり心に刻まれています。

今年ラフェトで飲んだワインは、書いていない分も含めると、30杯を超えるくらいでしょうか。さんざんおいしいワインを飲んだのに、JR余市駅前に戻ったら「何だかのどが乾いたし、お腹も減ったね」と、駅前の「海鮮工房 柿崎商店」で、ホッケの開きとサバの味噌煮をさかなにビールを飲んだのは、内緒です。


