鉄道と自転車を組み合わせた新たな形のサイクルツーリズムが、道南でも注目されている。道南いさりび鉄道(いさ鉄、函館)などは10月、列車内に自転車をそのまま積み込んで運行する実証実験を行った。一般客への安全確保の観点から課題もあるが、貸し切り列車の活用も検討されており、新たな観光需要の掘り起こしにつながる可能性がある。
実証実験は昨年に続き2回目で、道南の自転車愛好家団体や観光協会などでつくる「歴史・文化を活かした南北海道サイクルツーリズム推進協議会」(函館)が企画し、いさ鉄が協力。今年は10月1日にいさ鉄の七重浜(北斗市)―札苅(木古内町)間で行った。
JR北海道の旅客営業規則では、自転車は折り畳むなどして専用の袋に収納しないと車両に積むことができず、いさ鉄も準拠している。実験では貸し切り列車を用意。自転車愛好家約10人が自転車をそのまま持ち込み、車輪を座席下の柱に固定するなどして運行。札苅駅で下車し、松前町や江差町方面でのサイクリングを楽しんだ。
同協議会によると、函館から木古内までの国道はトラックなどの交通量が多く、潮風も受けやすいため、サイクリングを楽しむ上で安全性に留意しなければならない。実証実験では木古内まで安全に移動できた上に、自転車だけでなく鉄道の旅も楽しむことができる利点が確認された。
同協議会事務局の佐藤好子さんは「自転車をスムーズに固定しないと出発が遅れてしまう課題も分かった」と話す。自転車固定のマニュアル作りなどを検討することにした。
自転車と鉄道を組み合わせた観光は、道南以外でも取り組まれている。JR釧網線の釧路―摩周間では10月末、国と道の支援で導入した新型車両に自転車を積み込むモニターツアーが行われた。主催したJR釧網本線維持活性化実行委員会事務局(釧路市)の司口幸治さんは「自転車愛好家向けの列車貸し切りツアーを観光メニューの一つとして発信できればいい」と期待する。
いさ鉄も実証実験を通じ、同様の自転車愛好家向け臨時列車の運行なら可能とみている。春井満広企画営業課担当課長は「どんな方法なら運行できるか検討し、いさ鉄の利用増にもつなげたい」と話している。(芝垣なの香)
(北海道新聞2022年11月9日掲載)