約400年前、フランス・ボルドーで登場したといわれる伝統菓子「カヌレ」。いま、気鋭 のシェフらが工夫を凝らしたカヌレを次々に売り出し、注目を集めています。考え抜かれたレシピのカヌレを楽しめる札幌市内の4店を紹介します。(ライター・川本康博)
※都合によりカヌレの品ぞろえが変わることがあります。
目次
道産素材ふんだんに
北のカヌリエ<厚別区>
常時6、7種のカヌレをそろえる専門店「北のカヌリエ」(厚別西4の2)。催事や口コミで評判が広がり、昼すぎに売り切れる日もある人気店です。
地元食材を積極的に取り入れたレシピは、渡仏してフランス料理を学んだ水野佑一さん(33)が考案。毎朝、店のオーブンで自ら焼きます。
「クラシック」(400円)は、旭川産の米粉を生地に加え、表面はパリッとした食感に。口に入れたとたん、ラム酒の香りが広がります。 道産のてんさい糖を使い、甘さは控えめです。
意欲作の「北海道白い牛乳カヌレ」は、酒を全く入れず、小林牧場(江別)の牛乳をメインに作っています。 通常、カヌレには使われない卵白も加え、モチモチとした食感に仕上げました。
生まれも育ちも厚別の水野さん。「カヌレを北海道の代表的な菓子にしていきたい」 と意気込みます。
水曜定休、1月16~25日は催事で臨時休業。午前11時~売り切れ次第閉店。平日のみ予約可能。 電話080・6812・9564へ。
隠し味の香りで勝負
ル・ポワンドール<豊平区>
環状通沿いの 洋菓子店「Le Point d’or」(平岸1の9)では、シェフ歴30年超のベテランが作る正統派のカヌレを販売しています。
オーナーシェフ鈴木聖生(せいおう)さん(50)は、東京、福岡などでフランス菓子作りに携わってきました。故郷での独立を決意し、2019年に開店。カヌレは、当初からの人気商品です。
「見た目は地味だけど、中身で勝負」と強調する鈴木さん。かたい外側と、やわらかい内側のコントラストを出すため、生地は石臼でひいた細かな全粒粉と、薄力粉をミックス。香ばしさを出すため、焦がしバターを練り込んでいます。
ラム酒とブランデーを 組み合わせ、後味には、深い香りが残ります。
「どこに違いを出せるだろうと考えた末に、『香り』に行き着いた」と鈴木さん。ある時、かむほどに香りが広がる隠し味を見つけました。もちろん、企業秘密です。
カヌレは1種のみ、250円。火・水曜定休。午前11時~午後7時。電話011・876・0345。
コーヒーと相性抜群
スタンダードコーヒーラボ<南区>
自家焙煎(ばいせん)した豆を腕利きのバリスタがいれるコーヒー店 「STANDARD COFFEE LAB.」(藤野3の6)では、店で出すコーヒーとの相性を究めた「生カヌレ」のプレート4種を用意しています。
フォークとナイフで食べられるやわらかさに焼きました。なかでも「ストロベリーカカオクリーム生カヌレ」は彩りも華やかでおすすめ。 道産生クリームのホイップは、食感や味が調和するよう、泡の立たせ方など試行錯誤を繰り返し、完成にこぎ着けました。
昨年10月、丸井今井札幌本店で開かれた「珈琲マルシェ」で初披露。人気を博し、本店で提供することになりました。
石川蒼店長(27)は「イチゴのプレートは、カフェラテが一番合います。ワインと料理のように、新たなおいしさが生まれる相乗効果を楽しんで」と話しています。
このほか6種類のカヌレもあり、テイクアウトも可。水曜定休。午前10時~午後6時(スイーツの提供は午前11時~)。電話011・593・2260。
一口サイズ 日本茶で
ジョンソンズ・ティー・ラウンジ<中央区>
大通駅1番出口から 徒歩3分、日本茶に特化したカフェ「JOHNSON’S TEA LOUNGE」(南1西6)では、竹ようじで気軽に食べられる一口サイズのカヌレを提供しています。
プレーン、ショコラ、ピスタチオの味比べができる3種のプレート(470円)に、季節のカヌレが加わる5種も用意。
レシピ作りや試作をする下山翼店長(36)は「日本茶の渋みで、カヌレの甘さが際立つ。 ラム酒の量は少なめで、酒の風味が苦手な人にも好評」と話します。
カヌレを2段重ねにした「カヌレ・デ・カヌレ」(800円)を先月、新発売しました。 上段は新味で、茶葉を牛乳で煮出して味付けしています。白あんベースの和風ホイップなどを添えました。「ソースやホイップで味の変化も楽しんでもらえたら」と下山さんはPRします。
プレーン味とショコラ味は テイクアウト可(いずれも160円)。不定休。午前11時~午後7時(ラストオーダー30分前)。電話011・209・3989。
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年1月13日掲載)