家庭でも居酒屋でも定番の人気食材、ホッケ。国内産の半分以上は、北海道の日本海側でとられている。後志管内古平町の港は今季の漁がピークを迎えた。ここ数年、全道の漁獲量は回復基調とされるが、全盛期にはまだまだ及ばない。漁業者たちは資源保護に気を配りながら、「少しでも鮮度の良い、おいしい魚を届けたい」と沖へ向かう。(文・有田麻子、写真・村本典之、中村祐子)
5月半ば、昼過ぎの古平漁港。中型船「第十七久宝丸」(19トン)から、つやっと黒く光るホッケでいっぱいの青い箱が、次々と運び出された。箱の中でも元気にはねる。待っていた漁業者の家族や友人らが、氷を敷き詰めた発泡スチロール箱にサイズごとに、手際良く並べていく。鮮度が自慢。スピード重視だ。
船頭の本間久寿さん(41)は「小ぶりだけど、よく太っているよ」と汗をふいた。この日、久宝丸は約3.2トンのホッケを小樽の市場へ出荷した。
古平町でホッケ漁をする船14隻は、午前2時ごろに出港。魚が餌を求めて活発になる夜明けごろ、港から約10~20キロ、水深約120メートルの海底に網を下ろす。網の目で魚の頭部を絡めとる「刺し網漁」だ。1、2時間後、網を巻き上げて魚を外したら、海水で作った氷水の中で冷やす。
東しゃこたん漁協(本所・古平町)の専務理事、白浜昌樹さん(66)は「刺し網なら、200グラム以下の小さな魚はすり抜ける。資源の枯渇を避けられる」と話す。漁業者たちもとり過ぎないよう心がけている。ホッケ漁に8年前から携わる中型船「大東丸」の船頭、田岸光寛さん(63)は「好調な日は網を下ろす回数を減らす。量を加減しないといけないから」。
農林水産省の海面漁業生産統計調査によると、2000年に16万トン超だった北海道でのホッケの漁獲量は、15年には約10分の1の1万7千トンに減少した。ただ、18年頃から3万トン台に戻り、20年は3万9千トンだった。
道立総合研究機構中央水試(後志管内余市町)によると、減少した原因は不明だが、何らかの自然環境の変化が影響したと考えられている。漁業者は漁期を短縮、小さなホッケをとらないなどの自主的対策に取り組んできた。回復傾向が続くかは不透明。研究主幹の山口浩志さん(48)は「完全に戻ってはおらず、予断は許さない」とみている。
東しゃこたん漁協は04年、古平など3漁協が合併してできた。ホッケ漁獲量は多い年で1800トン、少ない年は1100トン台と、全道とやや状況が異なり、増減を繰り返している。21年度は1137トンだった。
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本間さんに選ぶコツを教わった。「頭が小さく、体が太くて長いものは脂がのっている。腹が赤や黄色っぽく透けて見えるものは、見栄えも味もいい」。本間家ではこの時期、煮付けやフライ、開きにして味わっているという。一方、田岸さんは、タマネギのみじん切りと一緒にすり身にしてみそ汁に入れるのがお薦め。新鮮なホッケを手に入れたら、挑戦してみたい。
同漁協の直売所ではホッケの開き(300グラム)を572円で販売している(ネット販売は680円)。問い合わせは直売所(電)0135・42・2518へ。
*大型 「開き」やみそ漬け*小型はすり身やフライに
小樽市の魚料理教室「たるころ」を主宰する宮部由里子さん(58)は「大ぶりで脂のりの良いホッケは開きやみそ漬けに、小ぶりで脂の少ないものはすり身やフライに向く」と話す。
開きは、ウロコを取って腹を開き、内臓を取り出したら、きれいに洗って塩をまんべんなく振る。半日から1日冷蔵庫に置き、扇風機で30~60分風に当てて乾燥させると完成だ。
フライは、3枚下ろしにする際、中骨を取る一手間を加えると食べやすくなる。すり身は、スプーンで皮から身をそぎ取る。タマネギやキャベツ、枝豆などと混ぜ合わせて一口大にして油で揚げる。揚げたてを頂くと、身はふわふわと柔らかく、香ばしいうま味が口中に広がった。
すり身はお吸い物に入れてもおいしい。平らにして冷凍しておくと、さまざまな料理に使えて便利という。
(北海道新聞2022年5月20日掲載)
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