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2023.02.16

From北海道新聞

夫が復活させた地酒 私が守る*「今宵八雲」21回目の新酒 上野商店に*店主が急逝*妻和子さん「体続く限り」

北海道新聞記事
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「この店を続けて来られたのは『今宵八雲』のおかげ。体が続く限りつくります」と話す大和和子さん
「この店を続けて来られたのは『今宵八雲』のおかげ。体が続く限りつくります」と和子さん

 【八雲】地元のコメと水で仕込んだ純米吟醸酒「今宵(こよい)八雲」の新酒が、今年も町内の酒販売店「上野商店」(東雲町)に並んだ。2003年から販売しているものだが、「八雲の地酒」の復活に力を注いできた店主の大和清人さんが昨年9月に72歳で急逝。妻和子さん(70)が引き継ぎ、21回目の新酒発売にこぎ着けた。「お父さんがやりたくて始めたお酒。看板銘柄を守っていく」と話している。

 「今宵八雲」は、大和さんが考案した銘柄。1967年の小川酒造廃業以降、地元から酒蔵がなくなった八雲で日本酒を復活させようとつくり出した。製造を依頼するため、7年間にわたり道内外の蔵元を回った。引き受けてくれるところがなく、行き着いたのが「雪の茅舎(ぼうしゃ)」の銘柄で全国的に知られる秋田県の蔵元「斎弥酒造店」だった。以来、町東野の農家が栽培する「ほしのゆめ」と、町山越の湧き水を送っている。

 今年は発売20周年の節目だが、大和さんは昨年5月に不調を訴え、4カ月後に亡くなった。「お父さんは目立つことが嫌いだったから」と、和子さんは周囲に訃報を知らせることなく、店を休んだのも2日間だけ。昨年11月には、大和さんがこれまで続けていたように「ほしのゆめ」約1・3トンと、水を秋田の蔵元に送った。

 今宵八雲は醸造用アルコールを加えず、精米歩合55%まで磨いて仕込む。瓶詰めの際に熱処理をしない生酒で、大和さんは生前、「すっきりしたコクのある飲み口。フルーティーでワイン好きの人も楽しめる」と胸を張っていた。和子さんによると、今宵八雲を扱う店側の反応を知るため、大和さんは和子さんと一緒に町内の飲食店に足を運んでは客として味わっていたといい、「飲食店主とのお酒談議が楽しみだったんです」と話す。  「飲むよりも売る方が好き」と笑う和子さんだが、今年は町内の飲食店に出向いて、新酒の評判を聞くつもりだ。1・8リットル入り(3900円)800本、720ミリリットル入り(1950円)1330本限定。製造時にできる酒かすも人気だといい、購入者限定で先着300人にプレゼントしている。問い合わせは上野商店、電話0137・62・3229へ。(水島久美)

(北海道新聞2023年2月9日掲載)

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