【士別】市多寄町のイナゾーファームが製造する「有機トマトジュース クリア」が、2022年度の優良ふるさと食品中央コンクール(一般財団法人食品産業センター主催)の新製品開発部門で、最高賞の農林水産大臣賞に輝いた。黄金色に透き通り甘みが強い個性的なジュース。コロナ禍の逆境で生まれた商品が、道代表に選ばれて進んだ舞台で「全国制覇」を果たした。
「クリア」は中玉のトマト「シンディースイート」をざく切りにし布に入れ、自然にしたたり落ちたものを、何度もこして仕上げる。日本酒の大吟醸の製造法などにヒントを得て手作業で行う。昨年2月、21年度の加工食品コンテスト「北のハイグレード食品2022」(道主催)に選ばれた上、第29回北海道加工食品コンクール(道食品産業協議会主催)でトップの道知事賞を受賞。各都道府県から1点のみエントリーできる中央コンクールへ、道代表として出品された。
中央コンクールには全国28点が出品された。4部門のうち、「クリア」は新製品開発部門(12点)に分類された。昨年11月の審査を経て、今月9日に結果が発表された。食品産業センターによると「通常のトマトジュースと色が全然違う。味わい深く驚きのある一品。調味料にも利用できる、素材の良さを感じる」との高い評価を審査員から受けたといい、道産品として3年ぶりの頂点に立った。
生食用にもなる原料のトマトは、日本農林規格(JAS)の有機JAS認証を受けているほか、昨年9月の成分分析で、抗酸化力が通常のトマトの2倍の含有量があるとの結果が出たという。イナゾーファームの谷寿彰社長(40)は「有機JASで高糖度。天候にも恵まれ、ぜいたくなジュースができた」と自負する。
「クリア」誕生の背景にはコロナ禍もある。21年1月、いつもなら谷社長らが首都圏などに商談に歩く時期に、行動制限のためそれがかなわなかった。妻・江美さん(37)は、その時間を利用し何かできないかと思案した。以前、東京のホテルのパティシエがトマトをこして作ったものを食べ、感激したことを思い出した。「品質を維持しながら、これを大量生産するには」と、夫婦で研究を開始。改良を重ね、同8月に商品として完成させた。
谷社長は「就農して16年、この地域の中で生産しており、賞は地域全体で受賞したもの。今後も地域の価値をしっかり発信したい」と決意を述べた。(大口弘明)
(北海道新聞2023年2月15日掲載)