春の陽気が感じられるようになり、さっぱりした生野菜のサラダがおいしい季節がやってきた。胆振管内むかわ町では、気象条件を生かし、道内で先駆けて暖房なしにビニールハウスの室温を調整して春レタスを栽培する方法を確立した。3カ月以上かけてじっくり育て、肉厚でやわらか、みずみずしく仕上がっている。
4月11日、同町でレタスを生産する農家、長谷川博章さん(45)を訪ねた。ハウスに足を踏み入れると、一面鮮やかな黄緑色の光景が広がった。収穫期を迎えたレタスは直径約20センチ、重さは約500グラム。包丁で切り取った根元から、水分がぽたぽたと滴り落ちる。「作業服がいつもびしょぬれになるんですよ」と長谷川さんは笑う。
長谷川さんは約5年前に就農し、現在は20棟で3250株のレタスを妻と従業員4人で栽培する。収穫作業は朝5時前から開始。「気温の低い早朝の方が、養分と水分を蓄えたレタスの新鮮さを維持できる」と説明する。
むかわ町でのレタス栽培は1990年ごろに本格化。降雪量が少なく、日照時間の長い地の利を生かし、極寒期も暖房を使わない無加温栽培に取り組んできた。ハウスを3重にし、こまめに換気で温度を調節して適温を保っている。
11月に育苗、12月に定植し、出荷は翌年3月下旬から。およそ100日間の生育期間を経て、ゆっくり成長させることで、甘みが乗り、肉厚でしっかりとした歯応えになる。農薬はほぼ使わず、低農薬で安全な農作物を示す道などの「イエス!クリーン」に登録された。JAむかわ蔬菜(そさい)園芸振興会レタス部会の部会長、丸山幸治さん(51)は「収穫作業中、おなかが空いたら洗わずその場で食べているほど」だそう。
ただ、担い手の高齢化により、年々レタスを生産する農家の戸数と作付面積は減っている。現在は5年前の2割減の67戸、約23ヘクタール。JAむかわの蔬菜園芸課係長、中塚大樹さん(31)は「持続的に栽培するため、ハウス1棟の収穫量を増やせるよう今後、技術を高めていかなければ」と語る。
今年の町内産は昨年並みの約1300トンが、5月末まで市場に出回る見込み。町内の特産物直売所「ぽぽんた市場」では1玉220円で販売している。(文・有田麻子、写真・浜本道夫)
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*手でちぎり簡単調理「忙しい人こそ」
「手でちぎって簡単に調理でき、時短レシピ向けの食材です」。料理好きの長谷川博章さんは忙しい人こそレタスを食卓に取り入れることを勧める。
例えば、冷しゃぶレタスサラダ。耐熱容器に水、豚肉、酒を入れ、ラップをかけてレンジで加熱し、豚肉を氷水で冷やして水気を取る。ちぎったレタスに豚肉を盛り付け、ドレッシングをかけて完成。長谷川さんは「簡単にたんぱく質と食物繊維が取れます」。
このほか、長谷川さんがよく作るのは生ハムとレタスにドレッシングと粉チーズをかけたカルパッチョ風、マスタードとわさびで味を付けたハムとレタスのサンドイッチなど。
いただくと、レタスのシャキッとした歯応えと、優しい甘みが口の中に広がった。
ポイントは、食べる直前に調理すること。レタスは調理後に水分が出て、味がぼやけやすいためだ。「長期保存は難しいので、食べる直前にスーパーで各家庭の適量を購入してほしい」と長谷川さんは助言する。
(北海道新聞2023年4月20日掲載)
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