【奥尻】ひやま漁協青年部奥尻支部は、これまで漁の対象にしていなかったホソメコンブの濃縮だしを開発し、今月から販売を始めた。加工原料として生かそうと2年前から養殖に取り組み、函館の業者の協力を得て商品化が実現した。同支部の川瀬美弘部長は「奥尻の新たな特産品として売り出したい」と意気込んでいる。
ホソメコンブはマコンブや利尻昆布と比べて葉が細いものの、粘りやうまみの成分が強いのが特徴。道内では利尻、礼文両島から福島町までの主に日本海沿岸に分布し、奥尻島でも自生している。檜山振興局などによると、価格が安いなどの理由から漁の対象にしている地域は少ない。
養殖についても、ウニの磯焼け対策で行っている後志管内積丹町の例はあるが、一般的に珍しい。同支部は、奥尻産ウニの評判が良いのはホソメコンブを食べているからでは―との考えから、独特のうまみを生かした名産を作りたいと、2年前に町赤石地区の沖で養殖を始めた。
ほかの漁が落ち着く11~12月、積丹にも出荷されている松前町産の種苗をロープに挟んで海に沈め、半年後に水揚げする。天然物の2倍以上に成長し、大きいもので長さ約5メートル、幅12センチに育つ。昨年は約3トンを水揚げし、乾燥させた。
商品の開発・加工は、函館市のヤマチュウ食品に委託し、卵かけご飯用などを含む4種類の濃縮だしが生まれた。卵かけご飯用のラベルは奥尻高の生徒がデザインした。
川瀬部長は「地域の人たちの力を借りて作った商品。みそ汁や鍋、煮物などさまざまな用途で使えるので、ぜひ手に取ってみて」とアピールする。
いずれも1瓶300ミリリットルで540円。10倍ほどに薄めて使う。奥尻港フェリーターミナルに隣接する同支部の直売所「海館(かいかん)」と同直売所のサイトから購入できる。問い合わせは海館(電)01397・2・7855へ。(宮崎将吾)
(北海道新聞2022年5月31日掲載)