十勝の広尾町から根室市の納沙布岬をつなぐ「北太平洋シーサイドライン」のうち、釧路管内の釧路町、厚岸町、浜中町を通る海岸沿いの道道根室浜中釧路線は「岬と花の霧街道」と呼ばれ、ドライブしながら道東の自然を満喫するのにぴったりのルートです。5月に芽吹いた草花は、この時期一気に花を咲かせます。道東の初夏の花の群生を紹介します。(取材時のもので、花の時期が短く、今季は終わってしまっているものもあります。なお、原生花園あやめケ原は、ヒグマの出没情報もあり、立ち入りが制限されていることもあります)
風にフワフワと揺れる白い綿毛と黄色い花弁
一帯は2021年3月30日に厚岸霧多布昆布森国定公園として指定されました。国内では58か所目、道内では6か所目の国定公園で、道内での国定公園の指定は、1990年の暑寒別天売焼尻国定公園の指定以来となりました。
冬の荒涼とした景色から、その姿を変え、最初に現れるのがワタスゲです。カヤツリグサ科ワタスゲ属の多年草。別名でスズメノケヤリ(雀の毛槍)といいます。フワフワとした真っ白い綿毛が風で揺れる姿は草原に星をちりばめたような幻想的な風景を作り出します。
そして、霧多布の海沿いの道路に入ると待っているのがエゾカンゾウ(蝦夷萱草)です。エゾカンゾウは初夏、海岸や高山の草地で黄色い花を咲かせるススキノキ科ワスレグサ属の多年草で、 ゼンテイカ(禅庭花)やニッコウキスゲとも呼ばれます。 内外3枚ずつの花被片は通常、1日花です。
霧多布湿原内にある木道を歩きながら楽しむことができます。場所によってはワタスゲとエゾカンゾウが一緒に見られるスポットもあります。
雄大な海に野生の営み、広大な霧多布湿原を望む
また、ここから車で5分ほどの霧多布岬まで足を伸ばすと、湿原とは違った雄大な海の景色を楽しむことができます。この岬にもエゾカンゾウが咲いています。
さらに、運がよければ、海にプカプカと浮かぶラッコの姿が見られます。この日はお母さんのお胸の上に子ラッコが寝ている姿が見られました。
厚岸町に移動すると、途中にある琵琶瀬展望台からは、広大な霧多布湿原が一望できます。
100ヘクタールの原生花園を染める紫色
霧多布湿原から森を抜けて28キロ、車で約30分のところに原生花園あやめヶ原があります。
毎年、6月中旬から7月上旬にかけて、100ヘクタールの原生花園に咲くヒオウギアヤメの大パノラマは、訪れる人を幻想の世界に誘い込んでくれます。ヒオウギアヤメは、高層湿原や湿った草地に生える多年草です。葉は剣状で長さは20~30センチ、幅は1~2センチで基部は紫色を帯び、高さ60センチほどの花茎を出し、枝割れして8センチほどの紫色の花を咲かせます。
あやめヶ原の先端(チンベの鼻)までは約600メートルあり、東側展望台からは浜中町へ続く断崖絶壁、西側展望台からは太平洋に浮かぶ小島・大黒島や末広海岸を見ることができます。
ここでも、動物たちに出合うことができるかもしれません。馬たちは毎年この時期に放牧され、アヤメ以外の草を食べて過ごします。
そして、時にはこんなゲストも。エゾシカです。まさに大自然を楽しめる場所です。毎年6月末から7月初旬にかけて「あっけしあやめまつり」も開催されますので、ぜひお出かけください。
釧路への帰り道にぜひ通ってほしいのが釧路町の海岸線です。森の中を走っていると突然現れる太平洋の海、特にセキネップ(賤夫向)の岬からは果てしなく続く水平線を見ることができます。駐車場があり、道路をはさんだ向かい側から踏み固められた道が続いているので、車を降りて行ってみましょう。
1日で周遊できるドライブコース。季節によって次々と変化していく花や景色をお楽しみください。
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