北海道といえば、新鮮でおいしい海産物に期待をする観光客も多いでしょう。「値段が高く、高級で良質」なのは当たり前。でも、「お手頃なのに、新鮮でおいしい」ものを見つけると、ぐっと喜びが増します。そんなお店が釧路市の西隣、白糠町にあります。水産加工業の山内水産が運営する「やまかん」。仕入れルートと社長の山内敏和さんの料理の腕を生かし、地元では知る人ぞ知るコスパ最高のお店です。
前浜でとれたものを中心に安く提供
やまかんでは、主に前浜に上がるものを中心に提供。仕入れルートがあるうえ、調理は山内さんが1人で担当、料理の配膳も山内さんのお母さんがお手伝いするので人件費がかからず安く提供できるそうです。飲み物は持ち込みなので、利用者にとってはさらに割安感が増します。
この日のお通しは、「つぶ子ちゃん」と昆布の煮物。つぶ子ちゃんは灯台ツブと切り昆布をだしとしょうゆで味付けした商品で、山内水産の1番人気です。刺身盛り合わせはサクラマスとソイ、ニシン、ブリ、しめさば。小さなお皿にぎゅっと盛り付けられているのでわかりにくいのですが、どれも大ぶり、肉厚でぴちぴち。ニシンがキラッと光っていて、ブリは脂がのっていますがくどくありません。
メーンの花咲ガニは身がぎっしり
メーンは、朝あがってゆでた花咲ガニ。釧路周辺では春から夏にかけてが旬です。脚も重く、身がぎっしりと入っています。殻をむくと、脚のトゲトゲのひとつひとつにも、身が入っているのが分かります。口に入れると、むっちり、濃厚な味。花咲ガニだけで口がいっぱいって何て幸せでしょう。15センチ近くある甲羅にはミソとふんどしもたっぷり。カニの脂の気配を感じながらふんどしをかみしめます。
ホイル焼きはサクラマス。味付けはごく薄く、ほんのりオレンジ色の身が上品です。骨はていねいにすべて取ってくれています。サバフライはコショウがきいていて、ソースやしょうゆは不要です。ふっくらしていてパサつきはなく、揚げ物なのにくどさなく食べられます。
締めはいくらごはんとあら汁。いくらは調味液の味に負けない、しっかりとした魚卵の味。あら汁のだしの味が、魚の脂を優しくながしてくれます。デザートは赤肉のメロン。これで、1人5千円です。
季節によって、シシャモや毛ガニ、キンキ、ホタテなども提供されます。特に冬は魚種も豊富で楽しめます。
山内水産は創業70年目。2代目社長の山内さんのお父さんが「好きな陶器を並べて仲間と酒を飲む場所がほしい」と加工場の2階に宴会場を整備しました。その後、料理店として営業を始め、30年近くになるそうです。店名は山内水産を創業したおじいさんの勘三さんのあだ名「やまかん」からとりました。山内さんは夕張市の知人の食堂で1年間料理の修業をしましたが、「鍋や刺し身など、素材をそのまま出しているだけ」と謙そんします。調理法はどれもシンプルですが、素材の選び方、ちょっとした塩加減などで、魚のおいしさが最大限引き出されています。
不定期販売「おつまみセット」も魅力
山内さんは、加工場に併設した直売所で週末を中心に、不定期に「おつまみセット」も販売しています。例えば、7月上旬の内容は「サクラマスの鎌倉漬け」「サクラマスのルイベ、自家製マス子しょうゆ漬け付き」「アイナメの唐揚げニンニク塩だれ和え」「オオカミウオのフライ」「サバのハラス焼きとサクラマスの皮チップス」「ニシンの酢漬け」「自家製昆布の佃煮と花咲ガニの外子しょうゆ漬け」。7品をそれぞれ直径8センチほどのプラスチック容器に入れて、千円です。私は釧路勤務時代、フェイスブックで山内さんがおつまみセットの販売を告知すると、白糠までの約30キロの道のりをものともせず、車を走らせました。ホッキの生とゆでの刺身、サケのめふんなどが入った写真右は8品で1200円、たちのポン酢やタンタカの刺身などが付いた写真左は4品で500円でした。
ガイドブックへの掲載や派手な宣伝はしていませんが、口コミを中心に地元では「知る人ぞ知る」名店で、コロナ禍前の忘年会シーズンには、予約が取れないほどの人気でした。
住所/白糠町東3南2-1-23 |
電話/01547・2・2824 |
営業時間・定休日/不定期。完全予約制 |
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