半世紀余りにわたって親しまれ2月に閉店した中華料理店「中和廊」(函館市山の手3)を市内の甲斐(かい)有輝さん(30)が引き継ぎ、1日に再スタートを切った。甲斐さんは「長年愛されてきた町中華。先代の味をできるだけ忠実に守りたい」と気を引き締める。
「これがずっと食べたかった」「いつ再開したの?」。午前11時、住宅街の一角にある店のシャッターが上がると、常連客が次々と訪れた。多くの客が注文するのが「ムースールー炒飯(チャーハン)」(900円)。卵がたっぷりと入って香ばしいぱらぱらのチャーハンに、豚肉やキクラゲなどの卵炒めがのった店の看板メニューだ。
中和廊は川合健治さん(77)、秀子さん(71)夫妻が1971年に市本町で開業。80年、現在地に移り営業を続けてきた。しかし、健治さんは長年にわたり重い中華鍋を振ってきたことで5年ほど前から腕を痛め、閉店を決めた。
常連客にも告げずひっそりと店を閉めたが、8月に再開の話が持ち上がった。甲斐さんの知人が「町中華を復活させたい」と川合さんと甲斐さんに提案。市内の和食店で料理人をしていた甲斐さんは「自分に務まるのか」と最初は戸惑ったという。
甲斐さんは同店を訪れたことはなかったが、川合さん夫妻らと話す中で多くのファンがいたことやけががなければ2人とも店を続けたいと思っていたことなどを知り、のれんを引き継ぐことを決意。川合さん夫妻には、店を壊して自宅を建てる構想もあったが「若い人がやりたいというなら」(秀子さん)と建物を譲った。
今月1日の再オープンに向け、甲斐さんは川合さん夫婦の指導を受けたり、動画投稿サイト「ユーチューブ」に載っている健治さんの調理動画を見たりして研究を重ねた。健治さんは「(甲斐さんは)腕がいい」と目を細め、「先代の味にこだわらず、自分で食べてうまいと思うものを出したらいい」とエールを送る。現在は、秀子さんが店に出て若い店主をサポートしている。
甲斐さんは「一番はやっぱり先代の味を守り続けたい。その上で、オリジナルのメニューを今後追加できたら」と意気込んでいる。水曜定休。午前11時~午後8時(午後3~5時は休憩)。 (足立結)
(北海道新聞2023年9月12日掲載)