北見市内のホテル黒部の元総料理長天池(あまいけ)三郎さん(62)=北見市=が、定年退職を機に、キッチンカーの店「ねねのキッチン」を開業し、管内の週末イベントに出店している。目玉メニューは、ホテル時代に人気を博したオホーツク北見塩やきそば。「いろいろな現場で、いろいろな人と巡り合える」。自慢の料理を通じ新しい出会いを楽しんでいる。
穏やかな日和となった9月30日。天池さんの姿は、北見市東三輪の「きたみ技能まつり」会場にあった。
「きょうのイベントは、子どもの参加が多いと聞いたので、甘口のカレーも作ってきた。楽しく1日が終わればありがたいね」
天池さんは、北見市留辺蘂町出身。市内の老舗、ホテル黒部で約37年間勤務し、今年6月に定年退職した。専門は洋食で、最後の10年ほどは取締役総料理長を務めた。
退職後は「リゾート地を回り、料理人の腕を振るって過ごそう」と考えていたが、コロナ禍で予定変更を余儀なくされた。そんな折り、旭川に住む娘の鈴木美穂さん(36)から「キッチンカーって面白そうだよ」と持ちかけられた。家族と一緒に取り組めることもあり、キッチンカー開業を決意、車両を買った。
8月から本格的に稼働を始め、週末の度にイベントへ出向く。料理はホタテ入りオホーツク北見塩やきそばを中心に、小麦粉を炒めるところから作る昔ながらのルーカレーを出すこともある。
9月は北見のほか、紋別や遠軽、帯広でも出店した。先々で多くの客があり、美穂さん、妻の志津さん(59)に加え、アルバイトを雇って店を切り盛りする人気ぶりとなっている。「客の行列ができると大変」とうれしい悲鳴も上がる。
コロナ禍を機に、キッチンカーは増え、地域イベントはもちろん、学校祭や地域の祭りでも同業者は集まるが、天池さんのようなベテラン料理人の新規参入は珍しいという。
過去に北見市内で店を持ったこともある天池さんは、キッチンカーの仕事について「同じ料理の仕事でも雰囲気がまるで違う。いろいろな人と巡り合うことができて結構楽しい」と、マイペースながら手応えを感じている。
さらに、ここから夢を広げていくイメージもできている。「札幌に拠点となる厨房(ちゅうぼう)をつくりたい。そこから(エリアを広げて)道内各地へ出店できれば面白い」(五十嵐文弥)
(北海道新聞2023年10月13日掲載)
自慢の味引っ提げ本別移住*十勝愛いっぱいのケバブ*樽美さん*道内各地で移動販売*ファン笑顔「ボリューム満点」