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2023.12.07

「創作おはぎ」 風味多彩 デコレーションも華やかに~札幌市内に新店続々

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

「Oh! huggy!!」のおはぎ。手前から時計回りに「リース」「こしあん」「みたらし」「きなこ」「寒椿」「初雪」。中央は「ポインセチア」
「Oh! huggy!!」のおはぎ。手前から時計回りに「リース」「こしあん」「みたらし」「きなこ」「寒椿」「初雪」。中央は「ポインセチア」

 お彼岸のお供えの「おはぎ」。「絶対、粒あん」「いや、こしあん派」「きなこが好き」など、好みは人それぞれですが、近ごろ札幌市内には、さまざまな味や色、飾り付けをした「創作おはぎ」の店が増えています。季節の果物を使ったものや、ティラミスやチョコバナナなど従来のおはぎの概念を超えたフレーバーもあり、新たなスイーツとして注目されています。

花の装飾 注文受けてから手作り 「咲華」

注文を受けてから手作りするため、、見本が置いてある「咲華」の店頭
「咲華」の店頭。見本が置いてあり、注文を受けてから手作りします

 「咲華(しょうか)」のおはぎは、上にあんを花のように絞り出したかわいらしい見た目が特徴です。1番人気のいちごとピスタチオはイチゴのフレーバーのあんをバラの花のように絞り出し、「かぼちゃとシナモン」はおはぎの全面に花型の口金でかぼちゃあんを星のようにちりばめています。見た目の華やかさにひかれて購入し、食べてみて「おいしい」とファンになる人も多いそうです。

手前から時計回りに「栗きんとん」「ティラミス」「いちごとピスタチオ」「かぼちゃとシナモン」「紅いも」。中央は「ずんだ」
手前から時計回りに「栗きんとん」「ティラミス」「いちごとピスタチオ」「かぼちゃとシナモン」「紅いも」。中央は「ずんだ」

 粒あんやこしあん、黒ごまといったベーシックなものもありますが、やはり人気は花の飾りが付いた創作おはぎ。くりきんとんやさつまいも、紅いも、抹茶など、12種類ほどを用意しています。春にはさくら、バレンタインの時期にはチョコ味のあんトリュフなど、期間限定のものもあります。

 道産のうるち米ともち米で、あんで包むのが基本。ティラミスはコーヒーフレーバーのあんでご飯を包み、上にクリームチーズのあんを花のように絞り出しています。きなこは振りかけるのではなく、白あんにきなこを練り込んでいます。チョコバナナはバナナのピュレを、いちごとピスタチオはイチゴソースと砕いたピスタチオをご飯に入れています。かぼちゃシナモンは花の飾りの下にシナモンを振って大人の味に。ずんだは表面に粗めの岩塩を振りかけ、甘すぎずきりっとした味に仕上げています。

 咲華は店頭に商品見本が置いてあり、注文を受けてから1つずつ手作りします。材料のもち米、うるち米は道産。添加物や保存料、着色料などを使用していないので、賞味期限は当日中です。価格は粒あんやこしあんは200円、ほかの創作おはぎもほとんどが200円台です。

おはぎを勧める「咲華」の田中さん
おはぎを勧める田中さん

 咲華は2022年4月にオープン。前オーナーが結婚のため店を売却し、田中悠奈さんが22年11月から譲り受けて運営しています。オープン1年半ながら、SNSや口コミで人気に火が付きました。声をかけられ、東京や大阪、仙台などのデパートの物産展にも出店しています。物産展に出店する際は、3歳と1歳の2人の子どもを夫に預けて出張し、1人でおはぎをつくり、販売するそう。田中さんは「お菓子も飲食の仕事も素人から始め、最初は大変でした。今はSNSでかわいいデザインなどを探して実践してみたり、楽しんでいます」と話します。

韓国マカロンの店「キルシェ」の店内
韓国マカロンの店「キルシェ」の店内
店頭のケースに並んだ韓国マカロン「トゥンカロン」
韓国マカロン「トゥンカロン」

 実は田中さんはもう1店、韓国のマカロン「トゥンカロン」の専門店「Kirsche(キルシェ)」も咲華に隣接して経営。トゥンカロンは、一般的なマカロンよりたっぷりのクリームをはさみ、イタリア発祥のパン「マリトッツォ」のように口をぱっかりと開けているのが特徴。こちらもさまざまなフレーバーがあり、カラフルでかわいらしく飾り付けられているので、手土産やプレゼントに良さそうです。

住所札幌市西区宮の沢1条1丁目6-15エフビル11
電話番号011・676・5760
営業時間月、水、木曜は午前11時~午後4時、金、土、日曜、祝日は午後5時まで(売り切れ次第閉店)
定休日火曜

72歳で起業 柔軟な発想力で新商品 「増田おはぎ」

増田さんが72歳で創業した「増田おはぎ」
増田さんが72歳で創業した「増田おはぎ」

 「増田おはぎ」は、店主の増田美恵さんがつくる創作おはぎの店です。粒あんやごま、深煎りきなこなどの定番に加え、ほうじ茶やナッツ、クランベリー、チョコレートなどの変わり種も含め、15種類ほどを置いています。今の時期はかぼちゃや栗抹茶、栗ご飯など、夏には枝豆やとうもろこし、新年から春にはさくらなど、季節を感じるおはぎも並びます。

木箱に並べられた「増田おはぎ」のおはぎ。見た目もきれいで目移りします
木箱に並べられたおはぎ。見た目もきれいで目移りします

 中のご飯は、ベーシックなおはぎには白米、変わり種には黒米を使用。ほうじ茶は、茶葉をミルで細かくひき、黒米に練り込んであります。栗ご飯は、ご飯で粒あんを包んでいます。

 材料は道産にこだわります。あんは道産大手亡。砂糖やきなこなども道産で、そのほかの季節の材料も、できる限り道産を選んでいるそうです。定番おはぎは194円、創作おはぎは226円が中心です。

「増田おはぎ」の「ナッツ」(手前左)、「かぼちゃ」(同右)、「クランベリー」(後ろ左)、「栗ご飯」
「ナッツ」(手前左)、「かぼちゃ」(同右)、「クランベリー」(後ろ左)、「栗ご飯」

 福岡県北九州市出身の増田さんは2011年、札幌の大学を卒業した息子が脱サラして札幌でうどん店「増田うどん」を開店させたのを機に、夫とともに札幌に移住。うどん店を手伝いながら、時々おはぎを店のスタッフに差し入れていました。当時はあんとごま、きなこ、九州では定番というあおさのりなど、オーソドックスなおはぎでしたが、思いついて創作おはぎを作ってみたところ、大好評。「これなら店を出せる」と言われ、18年3月、72歳で「増田おはぎ」を起業しました。

 うどん店が軌道に乗り、いったんは引退したものの、「ずっと働いてきたので、できることがあれば何かしたいと夫と話していたら、おはぎ屋さんの話が持ち上がった」と言います。「公民館などで開かれる料理教室とか紅茶教室に通ったことがあるくらいで、料理を勉強したわけではないんです」というものの、実家のそば店を手伝っていたこともあり、調理師免許も所持。ちゅうちょはなかったといいます。

 72歳での起業とはいえ、お米のおはぎにチョコレートやクランベリーを合わせる柔軟な発想力で、新商品を生み出します。かぼちゃの上にはこれまでオレンジのシロップ漬けをのせていましたが、今年はオレンジピールの洋酒漬けに変更するなど、変化も続けています。江別市の江別蔦屋書店にも支店を出店。77歳の増田さんの挑戦は続きます。

食べる直前に自分であんを詰める「増田おはぎ」の「自分で作る熊もなか」
食べる直前に自分であんを詰める「自分で作る熊もなか」

 おはぎ専門店ですが、「自分で作る熊もなか」(853円)も隠れた人気商品です。小樽市の藤崎最中種製造所がもちを付いて手切りして作っているクマの形のもなかの皮と「増田おはぎ」のあんがセットになっており、食べる直前に自分であんを詰める商品です。皮がしんなりせず、パリパリしておいしいと好評で、あんの中にバターを入れたり、アイスを加えたりとアレンジして食べる人も多いとか。

住所札幌市白石区菊水5条3丁目5-17
電話番号011・813・7557
営業時間午前10時半~午後6時(売り切れ次第閉店)
定休日月曜、火曜

常連客に支えられ7年目 月替わり商品も 「ももすず」

地元に定着、常連も多いという「ももすず」の店舗外観
地元に定着、常連も多い「ももすず」

 住宅街のマンション1階で2017年から営業しているのが、「ももすず」です。会社勤めをしていた駒形咲さんが、旅先の神奈川県で食べたおはぎに感動し、会社を辞めて、のれん分けの形で開業。クルミと「こうせん(麦こがし)」を使った「くるこ」や黒糖ココナッツ、むらさきいもなど15種類ほどが並びます。曜日限定や月替わりのおはぎもあり、飽きずに楽しめます。

「ももすず」の「よもぎ」(手前左)、「くるみ」(同中央)、「かぼちゃ」(同右)、「くるこ」(後ろ左)、「黒糖ココナッツ」
「よもぎ」(手前左)、「くるみ」(同中央)、「かぼちゃ」(同右)、「くるこ」(後ろ左)、「黒糖ココナッツ」

 おはぎは、定番のあんこやさくら、よもぎなどご飯をあんで包んだり、中にあんが入っていたりするものと、ずんだやくるみ、くるこなどあんを使っていないものがあります。1番人気はあんこですが、黒米と一緒に炊いたもち米にクルミと麦を炒った「こうせん」を混ぜた粉をまぶした「くるこ」が甘く香ばしいと、常連らに人気です。あんを包んだもち米の下にこうせんを敷いた「麦こがし」も米やあんの味がひきたち、シンプルなおいしさです。黒糖ココナッツはあんこと黒糖を黒米と一緒に炊いたもち米で包み、周囲にココナッツをまぶしており、ココナッツのシャリシャリ食感が楽く、限定メニューから好評を受けてレギュラーメニュー入りした一品です。

 月替わりで12月は「酒かすあん」を販売。月によって、紅茶風味を付けた白あんにサイコロ状にカットして甘く煮たリンゴを混ぜた「紅茶りんご」やユズ白あん、うぐいすきなこなど、一工夫したおはぎが登場します。また、火曜限定のかぼちゃや木曜限定のさつまいももあります。

1つずつパックに入っている「ももすず」のおはぎ
おはぎは1つずつパックに入っています

 大きさは直径6センチほどと小ぶりで、1つずつプラスチックの丸い容器に入っています。原材料はできる限り道産を使います。添加物不使用なので、賞味期限はその日限り。価格は216円~270円。ピンポン球ほどの大きさのミニサイズの5個詰め合わせ(850円)や、前日午後5時までに予約するミニサイズ12個詰め合わせの玉手箱(2060円)もあります。

クリスマスの装飾をした「ももすず」の店頭に立つ駒形さん
クリスマスの装飾をした店頭に立つ駒形さん

 「実はあんこが嫌いだった」という駒形さん。旅行に行った先の神奈川県川崎市で、おはぎ店「ももすず」のずんだのおはぎを食べ、おいしさに感動。滞在中に何度か通って食べ続けたそう。甘さを抑えた素朴な味が忘れられず、店の人に声をかけ、あんの炊き方などを教わりました。店の人からフランチャイズでの出店を勧められ、1年ほど後の22歳の時、店の名前をもらい、札幌で店を開きました。

 開店当初、おはぎの専門店は札幌にもほとんどなく、あんやきなこなどの定番以外のおはぎも珍しかったため、「おもちやほかのお菓子はないの」と聞かれたこともあるといいます。今では、男女問わず、小学生から高齢者までの常連客に支えられる人気店になりました。駒形さんは「おいしいと思った洋菓子の味を再現してみようとか、試行錯誤しながらつくっています。失敗もありますが、おいしいと言ってもらえるものができるとうれしい」と話しています。

住所札幌市厚別区厚別中央2条2丁目6-11
電話番号011・893・1173
営業時間午前10時~午後6時(売り切れ次第閉店)
定休日月曜 臨時休業あり。ホームページで確認を

毎月替わりのフラワーおはぎ 「Oh! huggy!!」

月替わりでフラワーおはぎが登場する「Oh! huggy!!」の店舗外観
月替わりでフラワーおはぎが登場する「Oh! huggy!!」

 今年11月18日にオープンしたばかりの「Oh!huggy!!(オーハギー)」は、「フラワーおはぎ専門店」と銘打ち、季節ごとの花をモチーフに装飾したおはぎを販売しています。こしあん、粒あん、きなこの定番以外は毎月変わり、今の時期ならクリスマスや冬の花などをイメージした「フラワーおはぎ」5種類とフラワー団子をそろえています。

「Oh! huggy!!」の7個ギフトボックス(左)とフラワー団子
7個ギフトボックス(左)とフラワー団子

 こしあん、粒あんは道産小豆のあんで包み、きなこはこしあん入りのご飯にきなこがたっぷりまぶされています。12月の月替わりは、カシスソースの入った「ポインセチア」や濃厚な抹茶あんでクリスマスリースを模した「リース」、ホワイトチョコあんの中にフリーズドライのいちごが入った「寒椿」、ユズ風味の白あんで包んだ「初雪」、白あんで包んだご飯にたっぷりのみたらしのたれをかけた「みたらし」。フラワー団子は白玉3個を串に刺し、3種類のあんを絞っています。今月はクリスマスカラーのいちごとなし、抹茶です。白あんには道産の手亡を、もち米は岐阜・飛騨地方産のものを使っています。

 こしあんと粒あんは207円、きなこは231円、フラワーおはぎや団子は321円~353円。経木のわっぱに入れてシフォンのような風呂敷でラッピングした7個ギフトボックス(2500円)もあり、贈り物に重宝しそうです。

 また、おはぎと並ぶ看板商品がわらびもち(200グラム700円、400グラム1260円)。本わらび粉と和三盆でつくったわらびもちは素朴な甘みととろける食感で、きなこと宇治抹茶の2種類があります。

花が咲いたようなフラワーおはぎが並ぶ「Oh! huggy!!」店内
花が咲いたようなフラワーおはぎが並ぶ店内

 Oh!huggy!!は神戸市が本店で、札幌市の本間久弥子(くみこ)さんが今年11月、東京・銀座、千葉県袖ケ浦に続く4店目として、オープンさせました。会社員だった本間さんは、趣味でマシュマロを溶かしてつくるデコレーション「マシュマロフォンダント」を手がけており、インスタグラムでOh!huggy!!のおはぎを知りました。「あんこでこんなきれいな飾り付けができるんだ」と驚き、本店に電話をかけてみたといいます。そこで、札幌でのフランチャイズでの出店を勧められたのがきっかけで、店を開きました。

 店名は、「おはぎ」の音に加え、「思わずハグしたくなるほどのかれんなおはぎ」として、「抱きしめる」という意味の「huggy」と名付けられたそうです。

広い窓があり、明るい「Oh! huggy!!」のイートインスペース
広い窓があり、明るいイートインスペース
木目調で、和の雰囲気が漂う「Oh! huggy!!」のイートインスペース
木目調で、和の雰囲気が漂います

 店内には10席ほどのイートインスペースが設けられ、抹茶(458円)や煎茶(407円)、くきほうじ茶(同)などのドリンクも提供しています(おはぎや団子とセットで100円引き)。わらびもち入りのラテにホイップクリームとあんを絞ってつくった花を飾った「花咲くわらびもちドリンク」(テイクアウト820円、イートイン835円)もかわいらしい見た目とわらびもちのとろとろの食感で人気です。

 おはぎは直径5センチ程度と小ぶりで、上品な甘さなので、1個だけでなく、2~3個食べるお客さんも多いそう。本間さんは「定番と月替わりの8つ全種類を制覇された方もいました」と笑顔を見せます。

住所札幌市中央区南2条西19丁目291-35 アビタ219 1階
電話番号011・590・0962
営業時間午前11時~午後6時(売り切れ次第終了)
定休日月曜、第2第4日曜
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小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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