「日本新三大夜景」に選ばれた札幌。ビルや山の上からは、札幌中心部のビル群の明かりや幹線道路を走る車のライトの光の列などのきらめきを展望できます。札幌の夜景のビュースポットとして、大倉山ジャンプ競技場と札幌もいわ山ロープウェイ、さっぽろテレビ塔90m展望台、JRタワー展望室T38のみどころを紹介します。
目次
まるで「夜間飛行」! 唯一無二の迫力
大倉山ジャンプ競技場
ライトアップされたジャンプ台、その先には大通公園の夜景とそびえるさっぽろテレビ塔…。ジャンプ台と大通公園がつながっているように見え、自分が飛行機になって滑走路から空に飛び立つような錯覚を覚える迫力のある夜景が、大倉山ジャンプ競技場の唯一無二の特長です。
「2級夜景観賞士」の資格も持つ札幌振興公社の北條貴大さんは「ジャンプ台があり、さらにそれが市街地に近いという都市はなく、ジャンプ台から夜景を見られるところは唯一無二」と言います。1972年の冬季オリンピック札幌大会の舞台になった大倉山ジャンプ競技場のジャンプ台は、前身の雪印シャンツェを全面改修してつくられ、場所や角度は以前のまま。わざと大通公園と直線でつなぐよう設計されたのか、偶然なのかは分かっていないそうです。
大倉山の夜景は、右手の円山、左手の三角山と手前の荒井山の稜線に縁取られた曲線美も魅力です。碁盤の目のように並ぶ色とりどりの光が、山の稜線によって流線型に切り取られ、優しい印象です。
ジャンプ台もライトアップされているので、スタート台に立つジャンパーの目線も体験することができます。この急傾斜を滑り降りるとしたら、なかなかの恐怖です。このジャンプ台から眼下に見える大通公園めがけて飛ぶジャンパーもいるのかな…などと想像します。
無料駐車場に車を停めると、屋根付きの30メートルを超える長いエスカレーターがあります。これで上まで上がり、リフト乗り場に向かいます。リフトは2人乗りで、7分ほど揺られると、標高307メートルのスタート台に到着です。
リフトを降りると、スキー板を抱えたキツネとクマが出迎えてくれました。キツネのゼッケンは「19」、クマは「72」。そう、札幌大会の開催年を教えてくれます。展望ラウンジに入ると、2018年の平昌大会銅メダリストの高梨沙羅選手と22年北京大会金メダリストの小林陵侑選手のパネルも置いてありました。
ラウンジにはカフェ「セレステ」も入っています。コーヒーやフロート、ビールのほか、興部町の「ノースプレインファーム」の生乳を使ったソフトクリームやバタークリームケーキ、角煮チーズまんなどの軽食もあります。
実はスタート台に着いたのは午後4時半ころ。この日の日没は午後4時すぎで、完全には暗くなっていません。冬期間(11月~4月)のリフトの運行は午前9時から午後5時まで(注:券売は午後4時半まで)。日没の早い冬場ですが、夜景を楽しむことができるのは、わずかな時間に限られます。ただ、日没から徐々に闇がおりる「マジックアワー」の時間帯は、空の色が青色や紫、濃紺と刻々と色を変え、また、まちの明かりもまたたきを増す様子を見ることができ、これもまたいいものです。
運転終了が近づいてきたので、リフトで帰ります。スキーやスノーボードのプレー時に、リフトで上ったことはありますが、下りることはなかなかありません。横にはジャンプ台の急傾斜が見えます。リフトからも夜景が見えます。自分が空中に浮かんでいるようで、遠くを見ている時はいいのですが、ふもとや周囲など近いところを見ると、少し怖いです。
無事に下りてきて、ジャンプ台を振り向くと、改めて高さがよく分かります。スタート台は地上から垂直に高さ137メートル。ジャンパーは高さ147メートルのさっぽろテレビ塔くらいのところから、スタートしていることになります。どうりでリフトも急勾配のはずだと納得しました。
住所 | 札幌市中央区宮の森1274 |
電話番号 | 011・641・8585 |
営業時間 | 夏期営業:4月29日~10月31日/午前8時半~午後6時 ※7月~9月(夜間延長)/~午後9時(予定) 冬期営業:11月1日~4月28日/午前9時~午後5時 ※リフト券販売は午後4時30分までなのでご注意ください ※ジャンプ大会の開催時及び公式練習日はリフトを利用できません。 事前に大倉山ジャンプ競技場のホームページをご確認ください。 |
360°ぐるりと一望 大パノラマが魅力
札幌もいわ山ロープウェイ
藻岩山からの夜景の最大の魅力は、標高531メートルからの360度の大パノラマです。アイヌの人たちが「見張り場所」を意味する「インカルシペ」と呼んだだけあって、ぐるりと周囲を一望できます。正面にはひときわ明るい札幌の中心部のビル群、右手には豊平川沿いを走る車列のライトが線上に伸びています。
札幌もいわ山ロープウェイを運営する札幌振興公社の新開華奈さんは「キラキラとまさに宝石箱のような輝きが魅力です。お勧めは、日暮れどき。午後7時以降は食事を終えて夜景観光に来る人で混雑しがちなので、日が落ちて夜が深まるまでの『マジックアワー』を見て、その後ゆっくり夕食を」と勧めます。
札幌もいわ山ロープウェイのふもと、山麓駅までは、札幌中心部から車で約20分。そこからまず、ロープウェイに乗り込みます。ロープウェイは2台あり、いずれも札幌の自然の景観になじむ「札幌の景観色70色」の中から選ばれた色で塗られています。「蝦夷栗鼠」というオレンジ色と、「蝦夷梟」と名付けられたシルバーです。乗車約5分で中腹駅に到着です。
中腹駅では、藻岩山のキャラクター「もーりす」がお出迎え。エゾリスをモチーフにしており、「も」と鳴くそうです。黒いのがもーりす、耳に花を着けたピンク色のはもーりすのお母さんだということです。ここでミニケーブルカーに乗り換えます。約2分かけ約230メートル登って山頂駅に到着です。
訪れた日は12月中旬、最低気温が氷点下8度まで冷え込んでいました。空気が澄んでおり、一面に宝石を散らしたように、視界の端から端まできらびやかな光が広がっています。
山頂には「幸せの鐘」が設置されています。クリスマスを前にしたこの時期は特別にクリスマスツリーをイメージしたイルミネーションが飾られており、カップルの外国人観光客らが歓声を上げて写真を撮り合っていました。幸せの鐘の周りの手すりに、売店などで売られている「愛の鍵」に名前を書いて取り付けると、そのカップルは「絶対に別れない」といういわれがあるそうです。
山頂駅には、レストラン「ザ ジュエルズ」が入っており、同店直営のテイクアウトコーナーもあります。コーヒーやビールのほか、季節のキッシュや角煮チーズまんなどの軽食を販売。ランチタイムには「もーりすカレー」や「スープパスタセット」もあります。この時期は、ホットワインもうれしいですね。
同じフロアには、大きな窓があり、照明を落とした休憩スペースがあり、テイクアウトしたものを味わいながら、寒い思いをすることなく、ぬくぬくと冬の夜景を楽しむこともできます。
住所 | 札幌市中央区伏見5丁目3-7(山麓駅) |
電話番号 | 011・561・8177 |
営業時間 | 12~3月/午前11時~午後10時 4~11月/午前10時半~午後10時 (上り最終午後9時半) |
眼下に大通公園 冬の光景や大雪像を
さっぽろテレビ塔90m展望台
札幌のランドマークタワー・さっぽろテレビ塔の90m展望台の夜景の強みは、大通公園で冬に開催される「さっぽろホワイトイルミネーション」や「さっぽろ雪まつり」をベストポジションから見下ろすことができること。冬は気温や湿度が低く、空気の透明度が増しているので、輝きは一層きらびやかです。東西南北、どの方向も展望できるほか、11月にオープンしたばかりの「COCONO SUSUKINO(ココノススキノ)」の外壁に「ノルベサ」屋上の観覧車の明かりが反射して映る様子を見ることのできる新たなビューポイントも加わり、注目を集めています。
展望台に向かうエレベーターには、3階から乗ります。展望台は高さ90.28メートルで、エレベーターで約60秒。エレベーターは四方全面がガラス張りで、上に向かう途中も外の様子を見ることができます。さっぽろテレビ塔の菊池遼太さんは「屋外にシャフトのある全国でも珍しいエレベーターです」と教えてくれました。
北側にはさっぽろ創世スクエアやホテルエーデルホフ札幌などが見え、左手奥にはJR札幌駅や大丸札幌店が見えます。東側には、高層マンションやサッポロファクトリーの明かりが輝いています。
南西側の角からは、11月にオープンしたココノススキノのビルボードが光っているのが見えます。そして、その右側にはノルベサ屋上の観覧車の青い光が見えます。よく見ると、ココノの外壁に観覧車の光が映り、反射しています。菊池さんは「偶然ですが、この角度でしか見られません。オープン以来、ちょっとした話題になっています」と話します。
展望台の見どころのひとつが、テレビ父さん神社です。札幌の市街地で一番高い場所にある神社で、家内安全、夫婦円満、恋愛成就、健康祈願など、テレビ父さんがどんな願いでも引き受けてくれるそう。鳥居前の狛犬は、テレビ父さんとかあさんで、触ると「いいことがあるかも」。おみくじは横の「がちゃぽん」でひくことができます。
もうひとつの必見ポイントは、南東方向の足下から天井まで1枚ガラスの窓になっているスペース。少し外側に傾いているため、足下が丸見え。意外と怖さを感じ、おしりの辺りがむずむずします。名付けて「怖窓(こわそ~)」。ぜひのぞき込んでみてください。
展望台の売店コーナーでは、テレビ父さんグッズなどを販売しており、トートバッグとステッカーは展望台の売店でしか購入できません。
住所 | 札幌市中央区大通西1丁目 |
電話番号 | 011・241・1131 |
営業時間 | 午前9時~午後10時(最終入場午後9時50分) |
きらめく夜景も楽しめる創作フレンチ~札幌市内のおすすめ3選~食べて、眺めて、心も満足
高さ160mからの眺望 四方にきらめく光の粒
JRタワー展望室T38
JRタワー展望室T38では、高さ160メートル、38階の高さからの夜景を眺めることができます。東西南北どの方角もガラス張りなので、360度眺望でき、乾燥して空気の澄んでいるこの時期は、特にきらびやかな光の広がりを楽しめます。運営する札幌駅総合開発は「豊平川やモエレ沼の花火大会も見えますし、眼下を行き交うJRの列車や丘珠空港を離発着する飛行機を目当てに来る人も多くいます」とたくさんの見どころを紹介してくれました。
JR札幌駅南口の札幌ステラプレイスのエレベーターで6階に上がると、JRタワー展望室のインフォメーションカウンターがあります。札幌駅や道庁赤れんが庁舎、時計台などが並ぶ札幌の街並みを再現したレゴブロックが展示してありました。エレベーターは2基。150メートルの高さを約55秒で上がります。
エレベーターを出て左手すぐ、駅北側の夜景が目に飛び込んできます。高層マンションや札幌第1合同庁舎、オフィスビルなどの奥に、地平線までびっしりと細かな光が広がります。
反時計回りに歩いていくと、西側が見えてきます。手稲・小樽方面とつなぐ線路が延びており、タイミングが良ければ、駅に出入りする電車の明かりが見えます。札幌駅南口のイルミネーションも見下ろせます。さらに進むと、隣の大丸札幌店やオフィスビルの明かりがまぶしくなります。
ビルの明かりや道を行き交う車のライトがきれいです。斜め右には、11月にオープンしたすすきのの新しいランドマーク「COCONO SUSUKINO(ココノススキノ)」が、そのすぐ近くに「ノルベサ」の観覧車も見えます。テレビ塔はさっぽろ創世スクエアの陰になっていて、てっぺんの明かりがほんの少し見えるだけです。
東側にもJRの線路が延びています。手前は現在、駐車場ですが、新幹線が開通するとこの辺りに駅ができ、また違った眺めになるかもしれません。現在建設中のビルの建設現場には、クリスマスツリーを模したイルミネーションが光っていました。
南側には、まちや鉄道をテーマにしたグッズやT38のロゴを入れたオリジナルグッズなどを販売する売店「T SHOP」とドリンクや軽食、スイーツを提供する「T CAFE」があります。コーヒーやスムージー、パフェのほか。ビールやワイン、カクテルなどのアルコール類も充実しています。道産ワインを含むワイン3種類の飲み比べセットが950円、ジンライムやウォッカトニックなどのカクテルが550円など、リーズナブルな価格。のんびりしてもらえるよう、お得感のある価格帯にしているそうです。スモークサーモンやソーセージなどのおつまみ、ドリアやサンドイッチもそろえています。
カフェの飲食スペースのほか、窓に向かってあちこちに、いすやテーブルが設置されているので、夜景を見ながら静かに語らうもよし、ひたすらぼーっとするのもよしです。
展望室は照明が落とされ、古代ギリシャのピタゴラスが唱えた「惑星音階」をもとにした、穏やかで優しい音楽が流れています。冬の澄んだ空気で、光がきれいに見えますが、寒くはないという絶好の環境。ここでプロポーズをする人もいるそうで、そんな時のために、カフェで花束を預かってくれることもあるそうです。
住所 | 札幌市中央区北5条西2丁目5 |
電話番号 | 011・209・5500 |
営業時間 | 午前10時~午後10時(最終入場は30分前まで) |