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2024.03.01

余市の「ワインを楽しむ会」 400人が酔いしれる~17ワイナリーが56銘柄を出品

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

ワインを楽しむ会の会場。400人が余市のワインを楽しみました
ワインを楽しむ会の会場。400人が余市のワインを楽しみました

 道内で最もワイナリーの数が多い余市町。余市産ワインや余市産ブドウを使ったワインを味わう「ワインを楽しむ会」が2月24日(土)、余市町中央公民館で開かれ、TripEat北海道編集部のメンバーと一緒に参加してきました。町内のワイナリーを中心に17社が計56銘柄のワインを出品。町民や愛好者らがグラスを傾けました。

5年ぶりの開催 ワインもオードブルもフリー

公民館の入り口に続く通路を飾った、ワインのびんを使った「ボトルキャンドル」
公民館の入り口に続く通路には、ワインのびんを使った「ボトルキャンドル」も出現

 余市町には1977年に余市ワインが誕生。84年にサッポロワインが町内の1軒の農家とブドウ栽培の契約を締結したのを皮切りに、道内外のワイナリーが町内の各農家と栽培契約を交わすようになりました。近年は町内でブドウ栽培の新規就農やワイナリーの設立が相次いでいます。

 ワインを楽しむ会は94年から毎年開いていましたが、2020年にコロナ禍で第27回の会を中止し、今年、5年ぶりの開催となりました。定員は400人で、事前予約制のチケットはインターネットでも発売しましたが、半分は町民向けに町内で販売しました。

「ワインを楽しむ会」の会場となった余市町中央公民館
会場となった余市町中央公民館
ウェルカムワインとして提供された「余市ぶどうのスパークリング」
ウェルカムワインの「余市ぶどうのスパークリング」

 参加料は4400円で、入り口でウェルカムワインの入ったワイングラスを受け取ります。ウェルカムワインはサッポロビールの「グランポレール 余市ぶどうのスパークリング」です。これは、余市町の6戸の契約農家が生産しているケルナーとバッカス、ミュラートゥルガウをブレンドしたスパークリングです。

 札幌からの高速バスが30分ほど遅れたため、会場にはすでにたくさんの人がいて、楽しそうにグラスを傾けています。会場の壁や窓に沿って、各ワイナリーが机を並べてワインを提供。会場の中心部にはオードブルが置かれており、すべてフリーです。

各テーブルに配されたオードブル
各テーブルに配されたオードブル。四隅のおつまみが秀逸

 オードブルは余市町の服部葬儀社が調理。焼売や春巻き、鶏の唐揚げ、エビチリなど一般的なオードブルの内容ですが、ワインを意識してか、ドライフルーツも入っています。さらに、四隅にある7~8センチほどの小さなアルミカップに入っているおつまみが秀逸でした。イカの塩辛をのせたポテトサラダとガーリック風味のツブのソテー、鶏のハラミの炭焼き、生ハムとアボカドのクリームチーズ和えです。同社の泉大亮さんが「ワインに合う、いつもは作らないメニューを入れてみよう」と考えたそうです。

余市のワイン、余市のブドウの実力を感じる銘柄 次々と

ランセッカのソーマニヨンブラン2022のボトルと注がれたグラス
ランセッカのソーマニヨンブラン2022
モンガク谷ワイナリーの栢2022のボトルと注がれたグラス
モンガク谷ワイナリーの栢2022

 ウェルカムワインの後の1杯は、「ランセッカ」(余市)。「ソーマニヨンブラン 2022」がありました。これは、町内の「ソウマファーム」のブドウを使って、ソウマファームが運営する町内のイタリアン「ヨイッチーニ」専用に作っているワインで、普段はこの店でしか飲めません。少し濁りのあるオレンジがかった白で、腰のある飲み口。「ソーマニヨンブラン」は、同じブドウを使って「ドメーヌタカヒコ」と「ドメーヌモン」でも醸造していますが、同じ畑の同じブドウを使っているのに、ワイナリーが違うだけでまったく異なる味わいに仕上がります。いずれもヨイッチーニのみの取り扱いです。

 2杯目は「モンガク谷ワイナリー」(余市)の「栢(はく) 2022」。モンガク谷のワインは、果汁の段階から複数品種を混ぜ合わせる「フィールドブレンド」です。エチケットは、ワイナリーを主宰する木原茂明さんの娘さんが小さい頃、絵本「モチモチの木」の一場面をイメージして画いた絵を使っています。家族の愛が感じられる温かみのあるワインです。

ドメーヌタカヒコのナナツモリ2021のボトルと注がれたグラス
ドメーヌタカヒコのナナツモリ2021
ドメーヌユイのA4+5ペティアンブラン2023のボトルと注がれたグラス
ドメーヌユイのA4+5ペティアンブラン2023

 次は、間違いなしのおいしさ、ドメーヌタカヒコ(余市)の「ナナツモリ ピノノワール 2021」です。2021年はブルゴーニュと同等の積算温度を記録し、高品質のブドウがとれた年。ほかのヴィンテージに比べ、色も香りもしっかりしています。森の中をイメージする香りが鼻に抜けます。

 「ドメーヌユイ」(余市)のコーナーで、おりが多く入ったワインを見つけました。サーブするスタッフが「最後の底の方なので、おりが沈んでしまいました。新しいボトルを開けますよ」と声をかけてくれましたが、いえいえ、私はおりが入っている方が好きです。スパークリングの「A4+5ペティアンブラン 2023」の底の方、しっかり濁ったものをいただきます。細かな微炭酸の刺激と、爽やかなキレのある酸の中に、おりの複雑なまろみも感じられます。

リタファーム&ワイナリーの風のヴィンヤードメルロー2021のボトルと注がれたグラス
リタファーム&ワイナリーの風のヴィンヤードメルロー2021
風のヴィンヤードピノノワール2019のボトルと注がれたグラス
風のヴィンヤードピノノワール2019

 「リタファーム&ワイナリー」(余市)の赤「風のヴィンヤード」を眺めていると、2021年のメルローを見つけました。メルローは道内で生産されているワイン用ブドウの中では、あまり生産量の多い方ではありません。メルローらしい、しっかりしていて、丸みのあるふくよかな味わいです。「風のヴィンヤード ピノノワール 2019」との違いを確かめてみたくて、次は2019年のピノノワールにしてみます。ピノノワールは色はやや薄めに見えますが、見た目はさほど違いは感じません。味はベリーのようなさわやかさがあり、すっきりした飲み口。全然違います。

ミソノヴィンヤードのピノノワール2022のボトルと注がれたグラス
ミソノヴィンヤードのピノノワール2022
山田堂のヨイチミュラー2021のボトルと注がれたグラス
山田堂のヨイチミュラー2021

 次は「ミソノヴィンヤード」(余市)の赤「ピノノワール 2022」。ややおりが入っていますが、味は透き通った、若々しい印象です。ナイヤガラが飲みたいと思い、「山田堂」(余市)のコーナーに行きましたが、この日はなく、「ヨイチミュラー 2021」を選びます。口に含むとまず、華やかな香り。みずみずしさを感じるワインです。

ココファームワイナリーのこことあるシリーズぴのろぜ2020のボトルと注がれたグラス
ココファームワイナリーのこことあるシリーズぴのろぜ2020
ワイナリー夢の森の夢ワインツヴァイゲルトレーベ2022のボトルと注がれたグラス
ワイナリー夢の森の夢ワインツヴァイゲルトレーベ2022

 「ココファームワイナリー」(栃木県足利市)はドメーヌタカヒコの曽我貴彦さんが、余市でワイナリーを開設する前に経験を積んだワイナリーです。ロゼ「こことあるシリーズ ぴのろぜ 2020」をいただきます。余市のブドウを使い、岩見沢の「10R(とあーる)ワイナリー」が醸造した1本です。白ワインのようなさわやかな酸味がありますが、辛口で複雑な味わい。香りも高く、桃のジュースを飲んでいるよう。ワインであることを忘れそうになります。

 「ワイナリー夢の森」(余市)では、赤「夢ワイン ツヴァイゲルトレーベ 2022」をチョイス。夢の森は、子どもたちの教育に農業体験を取り入れていた町内の幼稚園の理事長が開設したワイナリーです。口当たりは柔らかく、フルーティーなワインです。

キャメルファームのシャルドネ2022のボトルと注がれたグラス
キャメルファームのシャルドネ2022
ミソノヴィンヤードのシャルドネ2022のボトルと注がれたグラス
ミソノヴィンヤードのシャルドネ2022

 「キャメルファーム」(余市)の白「シャルドネ2022」は、グラスを近づけた時の甘い、華やかな香りが特徴。フレッシュな酸味があり、すっきりした印象です。

 もう1度、「ミソノヴィンヤード」(余市)に戻り、白の「シャルドネ 2022」を。弱い発泡と、すっきりした酸味、バニラのような華やかな香りがして、さっぱりします。

グラスを手に「余市ならではのイベント」と話す斉藤啓輔町長
「余市ならではのイベント」と話す斉藤啓輔町長

 会場をさまよっていると、斉藤啓輔町長に会いました。この日、提供されているワインは、オンラインやワインショップで数千円から数万円で扱われていたり、希少で手に入れることが難しいものが多くあります。それを、「日ごろ、お世話になっている町民の方々にぜひ飲んでほしい」と、4400円で飲み放題!斉藤町長は「ワイナリーの方々やブドウ農家、ワインのまちとして誇りを持っている町民のおかげで続いている、余市ならではのイベントです」と誇らしそうです。

余市ワインのシラー2022のボトルと注がれたグラス
余市ワインのシラー2022
千歳ワイナリーのケルナー辛口2022のボトルと注がれたグラス
千歳ワイナリーのケルナー辛口2022

 余市のワイナリー第1号の「余市ワイン」で、「シラー2022」を注いでもらいます。余市産シラー100%。道産ワインでシラー100%は珍しく、このワインのエチケットも初めて見ます。なんと生産本数は1707本のみです。どっしりした味わいで、スパイシーさも感じます。

 「千歳ワイナリー」(千歳)の「ケルナー辛口 2022」は、余市町の木村農園産のブドウを使っています。樹齢25~35年のケルナーのフレッシュな味わいを生かしたさわやかなワインです。

品切れワインも続出 大盛況 ワインが当たる抽選会も

抽選会の司会を務め、会場を盛り上げる荒井早百合さん
抽選会の司会を務め、会場を盛り上げる荒井早百合さん

 会の開始から1時間余りが過ぎたころ、抽選会が始まりました。次々に当選番号が読み上げられますが、残念ながらTripEat北海道編集部のメンバーはだれも当たりませんでした。ステージで抽選会の司会をしていたのは、以前に道産ワインについての本「北海道のワインに恋をして」を出版した時に取材した、札幌の「ワインカフェ ヴェレゾン」経営の荒井早百合さんです。荒井さんは18年前から手弁当でこの会の運営に携わっているそうで、「来た人やまちの人が喜んでくれるし、みんながおいしくワインを飲んでいる姿を見た生産者もうれしい。しばらくコロナ禍で中止していたけれど、今年は開くことができ、良かった」と声を弾ませました。

「道産ワインへの愛」を1冊に~札幌のワインカフェ店主・荒井さん「北海道のワインに恋をして」を出版

 会は2時間で終了。開始1時間を過ぎたころから、品切れするワイナリーも出始める盛況ぶり。私も全ワイナリー制覇を狙っていましたが、品切れで飲めなかったところもありました。でも、つくり手も、参加者も、あちこちに笑顔があふれる会でした。

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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