【東川】東京で飲食店を営んでいた佐野健さん(50)が4月上旬、宿泊施設などを兼ねたフレンチビストロ「東川ペリカン」(西8号北26)をグランドオープンする。昨年春、同町に移住してきた佐野さんは「ゆっくりとご飯とワインを楽しめる店にしたい」と話す。
佐野さんは東京出身。フレンチや和食のレストランシェフなどとして約20年にわたり料理の腕を磨き、2012年5月に妻の菜穂さん(40)とともに東京の恵比寿でフレンチビストロ「広尾ペリカン」を開業した。
同店で提供していたのは、旬や客の好みに合わせて作るお任せコース。「質の高い食材を求めると、自然と道産が増えた」と言い、岩見沢や余市など道産ワインも取りそろえた。開店以来の常連客もできた。
転機が訪れたのは、21年、ワイン好きが高じてボランティアで参加した道内でのブドウ収穫だった。参加者の多くは作業を終えると10分ほどで家路に着いていた。東京での佐野さんは、店と家の片道で1時間半もかかった。「北海道の人たちは、すぐに帰って家族との時間を過ごせる。お金に換えられない時間を無駄にしたくない」と移住を考えた。
移住先として思い浮かんだのは上川管内。ワインの醸造実績がある町が多く、将来的にワインブドウの生産がより広がりそうな場所だったからという。赤ワイン「キトウシ」のブドウを栽培しており、東京便のある旭川空港が近く、「広尾ペリカン」の常連客も通いやすいことなどから東川を選んだ。
昨年3月、町内の水田に囲まれた0・3ヘクタールを購入。帰りの運転を気にせずワインを飲める場所にしたいと、宿を兼ねたレストラン「オーヴェルジュ」をコンセプトに掲げた。今年1月下旬には、客室2部屋と14席を設けた店舗「東川ペリカン」としてプレオープンした。
町内産のコメや野菜などに、カモや牛、豚肉を使ったフレンチ料理を中心にお任せコースを提供する。プレ期間中は要予約でランチが2500円から、ディナーは6千円から。
佐野さんは「食と一緒に地元ワインを楽しんでもらいたい。東京のお客さんにも来てもらい、北海道に興味を持つきっかけになったら」。問い合わせはインスタグラム(@higashikawa_perican)へ。(山中悠介)
(北海道新聞2024年3月2日掲載)
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