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2024.04.26

札幌・円山公園散策をさらに楽しく! 立ち寄りたい周辺おすすめスポット5選

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

寝かせ玄米のおにぎりといなり、おかずを詰めたYUWAERUの「おむすび弁当」
寝かせ玄米のおにぎりといなり、おかずを詰めたYUWAERUの「おむすび弁当」

 春には札幌市内のサクラの名所として知られる北海道神宮と円山公園。近くには円山動物園などもあり、四季を通じて楽しめる憩いの場です。北海道神宮や円山公園を訪れた際には、ちょっと足を伸ばして、おいしいものを食べたり、買い物を楽しんだりしてみてはいかがでしょう。円山公園周辺のおすすめ立ち寄りスポットをご紹介します。

全国各地の無添加食品や「寝かせ玄米」弁当も 
YUWAERU

YUWAERUの店内を紹介するスタッフ

 円山公園に隣接する、全国各地の無添加食品のセレクトショップ「YUWAERU(ゆわえる)」札幌円山公園店には、看板商品の「寝かせ玄米」のパックご飯のほか、調味料、ご飯やお酒のお供、お菓子、お酒など、よりすぐりの品が並んでいます。最近は北海道産の食品も積極的にそろえており、体にいいものやシンプルなおいしさを求める人でにぎわっています。

 同店は東京に本社を構える「結わえる」の支店。寝かせ玄米は圧力鍋で炊いた玄米を数日寝かせたもので、同社が商標登録しています。ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で体によさそうだけれど、「食べにくい」「おいしくない」というイメージもあり、敬遠されがちな玄米ですが、寝かせ玄米はもちもち食感と米の甘みが特徴。小豆ブレンドと黒米ブレンド、もち麦ブレンド、十五穀ブレンドの4種類あり、各308円。調理の手間なく、電子レンジで簡単に食べることができます。

寝かせ玄米のパックご飯
寝かせ玄米のパックご飯
寝かせ玄米のおはぎ。下から時計回りに、ココナッツ、玄米粉、塩あんこ
寝かせ玄米のおはぎ。下から時計回りに、ココナッツ、玄米粉、塩あんこ

 寝かせ玄米は、店内調理されたものをテイクアウトすることもできます。おむすびは生のりのつくだ煮や葉とうがらし、ピリ辛こうじみそ。黒糖梅かつおなど日替わりで220円から。寝かせ玄米のおもちを包んだおはぎ(210円から)は黒糖あんやすりごま、玄米粉、塩あんこ、ココナッツなど種類も豊富で、ゆずいなり(220円)もあります。

 寝かせ玄米弁当は、焼き魚のほか、キャロットラペやポテトサラダ、煮物など7~8種類のおかず入りで1080円。おむすび弁当(1380円)は、ご飯の代わりにおむすびとゆずいなりがそれぞれ1つずつ入っています。いずれも2日前の午後6時までの予約が必要です。すぐ横の円山公園で、サクラを見ながら体に良いお弁当を広げるのもいいですね。

棚に並んだ、寝かせ玄米ご飯にぴったりのカレーや丼のもとのレトルト
寝かせ玄米ご飯にぴったりのカレーや丼のもとのレトルト

 寝かせ玄米をさらにおいしくさせるレトルト食品も人気です。結わえるのプライベートブランドで、「和風だしときのこのポークカレー」や「野菜ごろごろひよこ豆のチキンカレー」、「塩こうじとまいたけのポークカレー」などのカレー、「ごろごろ野菜の麻辣丼」「五香粉香るルーロー飯」「バジル香る国産鶏のガパオ」と、温めてご飯にかけるだけでごちそうになりそうです。「台湾風豚角煮玄米雑炊」や「マスカルポーネチーズのトマト玄米リゾット」など、寝かせ玄米を使った主食もレトルトで販売しています。

こだわりの調味料が並ぶ棚
こだわりの調味料が並ぶ棚
すべて無添加というだしやふりかけなどの商品
だしやふりかけなどもすべて無添加

 しょうゆや塩、オリーブオイルなども無添加。みそは大豆や米など原料はすべて国産で、火を入れていない無添加の生みそで5種類そろえます。古来からの製法で製塩した石川県珠洲市の塩の売り上げの一部は、能登半島地震の被災地に寄付したそうです。だしも値昆布や煮干し粉、タイや舞茸入りのものなど豊富にとりそろえます。

冷蔵庫に並ぶ日本酒の「自然酒」やナチュールワイン
日本酒の「自然酒」やナチュールワインも扱っています
店頭に並んだ、ご飯のお供やお酒のおつまみにぴったりの加工品
ご飯のお供やお酒のおつまみにぴったりの加工品も並びます

 お酒も扱っています。ラインナップは、化学肥料や農薬を使わない自然栽培のコメを原料に、金属タンクではなくスギの木桶で醸造したアウトドア用品ブランド「パタゴニア」や福島県の仁井田本家の「自然酒」、国内外のナチュールワインなど。北海道産ワインもあり、長谷川ヴィンヤードの「Ridge2022」やドメーヌ・イチのシードルなども販売しています。

 お酒のおつまみやご飯のお供として人気なのが、「食べる削り節」。生ハムのようなしっとりした柔らかい食感で、そのまま食べるほか、おにぎりやお茶漬けの具、サラダやサンドイッチにも合うそうです。カキやホタテのアヒージョ、サケのほぐし身、じゃこのオイル漬けなどのびん詰めなど、お酒を飲みながら、ちびちびつまめそうなものもあり、目移りします。

 商品の品ぞろえはこれまで、北海道産のものがあったものの少なかったそうで、上西里江子店長は「お客さまからのリクエストもあり、最近は北海道のものも積極的に扱うようにしています」と言います。ハスカップのソースやジャム、干しいも、黒千石のきなこなどを仕入れているそうです。

YUWAERUの店舗外観
YUWAERUの店頭
2階のカフェでグラス提供しているナチュールワイン
2階のカフェでグラス提供しているナチュールワイン

 2階はカフェになっており、寝かせ玄米と汁物、主菜、季節のおかず5種類、漬物が付く「一汁三菜」のセット(1500円)や、おかず8種類が付く「一汁満菜」(1800円)、「ピリ辛肉味噌汁なし担々玄米めん」(ミニ寝かせ玄米付き1600円)などを提供。調味料や食品は1階のショップで扱っているものを使っており、食事の後、「おいしかった」と1階で買い物をする人も多いとか。ナチュールワインもグラスで提供しており、大きな窓から円山公園を見下ろしながら昼飲みもできます。

体にいいものでお腹もいっぱいになるランチの一汁満菜
ランチの一汁満菜。体にいいものでお腹もいっぱいに
おむすび、いなり、汁物などがセットになっているモーニング
おむすび、いなり、汁物などがセットになっているモーニング

 おむすびとゆずいなり各1つ、漬物とみそ汁のモーニング(700円)もあり、ヨガ教室を開いた後、朝ご飯を食べることのできる「モーニングヨガ」(2500円)も不定期ですが開催しています。

 来店するのは、30~50代の女性が中心といいますが、体を気遣うサッカーJ1北海道コンサドーレ札幌の選手も、たびたび足を運ぶそうです。

住所札幌市中央区北1条西28丁目2-18
電話番号011・300・2469
営業時間午前10時~午後6時。カフェのモーニングタイムは午前10時~11時30分、ランチは午前11時~
定休日定休日 水曜
※お店の情報などは取材時のものです
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.1 札幌編③道産ワインをランチや「昼飲み」で

店頭に所狭しと並ぶ「こだわりの食品」 
フーズバラエティすぎはら

ツルムラサキや小松菜花など珍しい野菜が並ぶ棚
ツルムラサキや小松菜花など珍しい野菜も販売しています

 全国からこだわりの食品を集め、販売している食料品店「フーズバラエティすぎはら」。生鮮品から加工品、お菓子、調味料など、スタッフが実際に食べて納得した逸品をそろえています。その数、3000アイテムを下りません。大手の食品メーカーの商品はほとんどなく、一般的なスーパーマーケットではなかなか見ない商品が所せましと並び、素材や味にこだわりたい粋人が遠くからも訪れます。

 天然だしやご当地のレトルトカレー、手作りの梅干し、地域限定のお菓子…。店内には、全国各地のこだわりの食品が並んでいます。商品のセレクトの基準は、「珍しいものや高額なものではなく、自分たちが食べておいしいもの、食べたいもの。生活の延長線上の視点です」(杉原俊明社長)。このため、テレビや客の意見、ネットなどさまざまなところから情報を集めてスタッフみんなで試食をし、納得したものを仕入れています。

 さらに、杉原社長は「北海道産にこだわらないこと」と付け加えます。「北海道は空気も水も良く、新鮮でおいしいものも多い。でも、道外にも何百年も続く製造技術があったり、発酵や醸造などの製造に適した風土があったりする。全国各地のいいものを探します」と話します。

「Fギリシャヨーグルト」(右)と「流氷ビーツ」のソースを手にする一成店長
「Fギリシャヨーグルト」(右)と「流氷ビーツ」のソースを手にする一成店長

 杉原社長の長男の一成店長に店内を案内してもらいました。冷蔵ケースから取り出したのは、「Fギリシャヨーグルト」。深川市のエフ・ヨーグルトが作っており、200グラム748円と、ヨーグルトとしては高めです。一成店長は「大手メーカーのギリシャヨーグルトは早くたくさんの水分を抜くため、機械でプレスして脱水しますが、これは自重でゆっくり自然に水抜きをします。うまみや栄養素が凝縮され、濃厚でクリーミーです」と説明します。

 その横には、北見市常呂町の芥川ファームの「流氷ビーツ」のソースがありました。一成店長は「ジャムでもピクルスでもないソース。これがFヨーグルトに合うんです」と言います。すぎはらの駐車場にある「ウェイク・カフェ」では、Fヨーグルトと流氷ビーツのソースを使ったパフェを提供しており、カフェで食べておいしさを知って買いに来る人もいます。ビーツのソースはこのほか、ポテトサラダや寿司飯など料理にも合うそうです。

コロナ禍で増えた冷凍食品のケース
コロナ禍で増えた冷凍食品のケース
トマトジュースも個性派がそろいます
トマトジュースも個性派がそろいます

 コロナ禍を機に、売り場が急増したのが冷凍食品コーナー。兵庫・芦屋のお好み焼きやたこ焼き、美幌町の豚ジンギスカン、有名店のスープカレーやぎょうざなどが数カ所の冷凍ケースにびっしりと並びます。

 トマトジュースもこだわりが。オーガニックのもの、保存料や香料不使用のもの、1びんに中玉トマト3個を使ったものなど、数種類が並びます。

サクラ味やサクラを使った食品を集めた季節のコーナー
サクラ味やサクラを使った食品を集めた季節のコーナー
花粉症を発症する人が多い時期に並べる「北山村のじゃばら果汁飴」
花粉症を発症する人が多い時期に並べる「北山村のじゃばら果汁飴」

 お花見の時期に合わせて、サクラ味やサクラを使った食品を集めたコーナーもありました。サクラ風味の削りかまぼこや札幌の茶店「玉翠園」のさくら茶、知内町のマカロニのドン菓子「ドン・デ・マカロニ」のサクラ味、さくらご飯のもと、まんじゅうなどが並びます。

 この時期人気なのが、「北山村のじゃばら果汁飴」。和歌山県の北山村に自生している「じゃばら」は、同村のみに生育し、ゆずのような、すだちのような柑橘。この実には花粉症の症状改善に効果があるとされるナリルチンという成分が豊富に含まれており、この時期に仕入れています。

BBQシーズンに合わせて設置した焼き肉のたれコーナー
BBQシーズンに合わせて設置した焼き肉のたれコーナー
レトルトや缶詰のカレー、カレールーを集めたコーナー
レトルトや缶詰のカレー、カレールーを集めたコーナー

 雪が解けて暖かくなり、BBQを楽しむ人も増えるこの時期、焼き肉のたれを集めたコーナーも設けています。韓国産の本格的なものや塩だれ、みそ味、ゆずこしょう風味、柑橘の酸味がきいたものなど、薬味を含めて30種類ほどが並びます。このコーナーはついこの間までは、数十種類の鍋つゆと鍋のたれが置かれていました。

 人気のカレーの棚には、北海道のスープカレーや全国のカレーの名店のレトルト、ご当地のカレールーのほか、足寄町の猟師さんがつくったシカ肉のグリーンカレーの缶詰など、レアものも。

新商品の棚
新商品の棚。このうちどれが定番に残るか予想して
「酢みそ和えに」「煮浸しに」などと食べ方も書いてある山菜コーナー
山菜コーナーには「酢みそ和えに」「煮浸しに」などと食べ方も書いてあります

 これだけの多様な品ぞろえで、次々と新しいアイテムを仕入れるため、すぎはらで扱う商品のラインナップは常に変化しています。1度仕入れて、1年以上続く商品は「全体の10分の1くらい」(杉原社長)。新商品の棚にはこの日、京都のごまラー油やねりごま、飛騨牛のビーフカレーのレトルト、ご飯やパスタなどに使える福島県の「かけるあおさ」などが置かれていました。このうち、どれが定番化するのか予想するのも楽しみです。

 すぎはらの自慢の一つが、野菜の仕入れ。旬を意識しており、「今しか食べられない、今だからこれを食べてほしいというものを仕入れています」(杉原社長)。早取りの北海道産アスパラの地方発送を受け付けているほか、タラノメやコゴミ、シドケ、ハマボウフウなどの山菜がたくさん並んでいました。ツルムラサキや島ラッキョウ、キクイモ、ヤングコーンなど、珍しいものも置いています。

 杉原社長は「うちの店の特徴は、知らないお客さん同士がよく話していること。珍しい野菜をかごに入れた人に、通りかかった人が『どうやって食べるの』と尋ねるなど、昔の八百屋さんのように、店がコミュニティの場になっています」と言います。

日替わりでいろいろなベーカリーのパンが並ぶ棚
日替わりでいろいろなベーカリーのパンが並びます。この日は「ヴァイツェン」
駐車場の一角で営業中の「ウェイク・カフェ」のそうざいやお弁当
駐車場の一角で営業中の「ウェイク・カフェ」のそうざいやお弁当

 パンは曜日ごとに日替わりで、月曜日は喜茂別町の「ソーゲシュ製パン」のフランス田舎パン、火曜日は札幌市中央区の「ヴァイツェン」のドイツパンなど、全道各地のパン店のものが並びます。

 駐車場の一画で営業しているカフェ「ウェイク・カフェ」のナシゴレンや焼カレー、サンドイッチなどのお弁当やそうざいも販売しています。ここでお弁当やパンを買って、お花見がてら円山公園でピクニックをするのも良さそうです。毎週木曜日には「熟成玄米」のおにぎりも販売します。

戦後まもなくの杉原商店の写真を手にする杉原社長(右)と一成店長
戦後まもなくの杉原商店の写真を手にする杉原社長(右)と一成店長

 すぎはらは、杉原社長の祖父が1941年(昭和16年)、コメの配給所として創業したのが始まり。店の前の道路は、今は住宅街の中通りですが、当時は円山公園まで市電が通っており、終着駅で降りた人たちが公園内を通って山の手方面に抜ける大きな通りだったそうです。配給所ができたことで、周辺には鮮魚店や八百屋、たたみ店なども出店し、ちょっとした商店街の様相を呈していました。

 戦後まもなく撮影したとみられる杉原商店の写真を見ると、店先にテレビが置かれ、その前に縁台が並べられています。大相撲が始まると、近所の人が集まりにぎわっていたようです。

 高度成長期を経て、1972年の札幌オリンピックに合わせて北1条通が整備され、市電も廃止。人流が変わって同店の前の人通りは減りました。一方、コンビニエンスストアや大型スーパーマーケットが増え始め、流通の形態が変わって小さな個人商店の経営は厳しさを増します。杉原社長の父は75年、店を建て替え、鮮魚店と精肉店を入れたスーパーとしてリニューアルしました。

 杉原社長は大学卒業後、いったん民間企業に就職しましたが、88年に経営を継ぐため戻りました。杉原社長は「最初は安売り路線をとりましたが、小さな商店では大手にかなわず、コケました」と明かします。経営診断を受け、商圏調査や品ぞろえを研究し、いったんは大手食品問屋が運営するチェーン店のフランチャイズにも加盟したものの、売り上げは低迷。「いつやめようかと思いながら続けていました」と杉原社長。

現在のフーズバラエティすぎはらの店舗外観
現在のフーズバラエティすぎはら

 転機は2000年代に入って訪れました。常連客の1人が、札幌市手稲区の高級豆腐「豆太」の1パック500円の豆腐を扱ってほしいと要望しました。当時、店で販売していた豆腐は1パック100円。「売れるだろうか」と半信半疑で扱い始めたところ、ほかの客から「○○のみそは高いけどおいしい」「○○のたれは入手困難だけど、置いてくれたら買う」とさらなるリクエストがありました。こうして、素材にこだわった商品や「ちょっと高価だけど、おいしい」ものが増えていきました。

 ちょうど同時期に生鮮品や食料品のネット販売も始め、ホームページでこれらの食料品を見る人も少しずつ増え、「ちょっといいもの、選ばれたものをそろえた店」として認知度も高まってきました。杉原社長は「安売りをしなくて良くなり、利益率も上がりました。ホームページを見た旅行客が来ることも増えました」と言います。

 「こだわりの食料品の店」として知られるようになり、映画の撮影も行われました。2018年公開の映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」では、大泉洋さん演じる車いすの主人公が夜中に「バナナが食べたい」と言い、介助ボランティアの高畑充希さんがバナナを買いに来た深夜スーパーとして、すぎはらが登場。米動画配信大手のネットフリックスで配信された「First Love 初恋」では、主人公を演じる佐藤健さんが買い物をするシーンが撮影されました。映画やドラマを見て、「聖地巡礼」として店を訪れる人たちも多く、外国人観光客の来店もあるそうです。

住所札幌市中央区宮の森1条9丁目3-13
電話番号0120・202・447
営業時間午前10時~午後7時
定休日日曜。祝日は不定休。ゴールデンウイーク中は4月29日と5月4日が休み
※お店の情報などは取材時のものです

一番人気は「絶対焼く食パン」 
マルヤマベーカリーShian

一番人気の食パンを手にするマネージャーの平井さん
一番人気の食パンを手にするマネージャーの平井さん

 「明日食べるともっとおいしい」。一般的にパンは焼きたてがおいしいイメージですが、「マルヤマベーカリーshian(シアン)」のパンは、焼き上がりから時間がたつと味わいが深まる不思議なパンです。食パンや甘い菓子パン、食事パン、サンドイッチ、手作りのそうざいも販売しており、来客が途切れることのない人気のベーカリーです。

 シアンのパンは、天然酵母「あこ天然培養酵母」を使っているのが特徴。コメと小麦、水、こうじ、酵母のみで培養され、発酵力が強く短時間でパンを膨らませるイースト菌と違って、じっくりと時間をかけて生地を膨らませます。酵母の香りや風味が少なく、素材の味が際立つため、パンの原料の小麦やバターは100%北海道産。小麦粉は「ゆめちから」をベースにパンの種類によって配合を変えています。

 一番人気は食パン(1斤440円)。トーストすると表面のザクザク感と中のもっちり感が抜群。油脂を使っておらず、シンプルな小麦の味が感じられます。トーストした方がおいしいため、「絶対焼く食パン」と名付けられています。同様に「絶対焼くカボチャ食パン」(430円)はトーストしてたっぷりのバターとはちみつで食べるのがおすすめ。「絶対焼く黒糖食パン」(同)はお客さんのリクエストで誕生したそうです。マネージャーの平井祐佳さんは「2~3日置いたほうが、うまみが増し、味わいが深くなります」と説明します。

たくさんの種類のパンが並び品定めに悩んでしまうShianの店内
どれもおいしそうで目移りします

 「まるごといちじく」(380円)はライ麦を使い、中に赤ワインで煮たイチジクが丸ごと入っています。クリームチーズとクルミもたっぷり入り、イチジクの甘酸っぱさとプチプチした食感、クリームチーズの塩味とクルミの香ばしさで、ワインにも合いそうです。「ちぎりパン」(600円)にはトウモロコシがたっぷり入っており、焼きたては「ふわふわ、もっちり」、翌日は「しっとり、もっちり」で小麦の風味が増します。表面のサクサククッキー生地に北海道産バターを使ったメロンパン(250円)やクリームパン(同)は小さな子どもも大好きです。

店内で販売されている、からあげやハンバーグなどのそうざい
からあげやハンバーグなどのそうざい
販売しているそうざいの、(手前から時計回りに)ひじき煮、豆のピクルス、キャロットラペ
(手前から時計回りに)ひじき煮、豆のピクルス、キャロットラペ

 そうざいも販売しています。ひしおこうじや甘酒、マスタードなどの調味料は手作り。みそも平井さんが仕込んでいます。鶏もも肉をひしおこうじに漬けたからあげは柔らかく、甘酒に漬けたチキンカツはしっとり。ハンバーグも甘酒入りのソースで煮込んでいます。

 豆のピクルスやキャロットラペ、ひじき煮など、優しい味付けのおかずも並びます。ラインナップはその日によって変わりますが、チリコンカンやグリーンカレーなど和洋問わず、おいしそうなおかずが並びます。

 シアンは、同じビルの2階にある平井さんが運営するカフェ「BUZZ CAFE」で出していたあこ天然培養酵母のパンを、「もっと多くの人に食べてもらいたい」と、2021年にオープンさせました。そうざいが充実しているのは、カフェで出しているメニューをテイクアウト用に置いているためです。

そうざいやサンドイッチが並んだショーケース
ショーケースにはそうざいやサンドイッチが並びます
量り売りされているドライフルーツやナッツ
ドライフルーツやナッツを量り売りしています

 サンドイッチも人気です。リュスティックやドッグに、ローストビーフとキャロットラペ、カマンベールと生ハム、サバ、サワラの西京焼きなど、肉や魚、野菜をたっぷりはさんだボリューム満点のサンドイッチは、昼時を過ぎると売り切れることも多いそう。季節によって、「紅まどんな」や「せとか」などの柑橘をスライスしてローストビーフサンドやサバサンドに加え、フレッシュ感をアップさせます。

 好きなそうざいやサンドイッチを買って、円山公園でお花見をしながら食べるのもよさそうです。この時期限定で、さくらあんとおもち入りの「さくらのあんぱん」もお花見を盛り上げてくれそうです。

 量り売りのドライフルーツも用意しています。ローストココナッツは砂糖不使用で、パリパリの食感。パイナップルスライスはやわらかく、ねっとりとしており、甘みとうまみがぎゅっと凝縮されています。ピスタチオは無塩で、パイナップルと一緒に食べるとおいしいそう。キウイや柿、ショウガスライスなど品ぞろえはその時々で変わります。

ビル1階に入るShianの店舗外観
ビル1階に入るShian。2階には「BUZZ CAFE」が入っています

 不定期ですが、月に1回ほど、店内で立ち飲みできる「夜シアン」も開催します。お通しのパンは食べ放題。カクテルやワインを提供し、それに合わせたフードも用意します.平井さんは「夜シアンも楽しいですよ。店内のポスターなどで告知するので、待っていてください」と話します。

住所札幌市中央区大通西25丁目3-1 G1ビル1階
電話番号011・699・5088
営業時間正午~午後7時。土曜日は午前11時から
定休日不定休
※お店の情報などは取材時のものです

北海道産材料でバターサンド&ソフトクリーム 
マシュー神宮の杜

マシュー神宮の杜の季節限定の抹茶しることサクラもなかソフトクリームのお皿
マシュー神宮の杜の季節限定の抹茶しることサクラもなかソフトクリームのお皿

 ゆったりとした雰囲気のなか、北海道産の材料を生かした優しい味のスイーツや食事を楽しめるのが、「カフェスイーツMaShu(マシュー)神宮の杜」です。円山公園の緑を借景に、看板メニューのソフトクリームやバターサンド、体が喜ぶヘルシーなランチを味わうのもよし、豊富な種類のハーブティーでリラックスするのもよし…。店から出たら、心も体も柔らかくなったような気持ちになるカフェです。

北海道の素材を使った「マシュー」のバターサンド
北海道の素材を使ったバターサンド

 看板メニューはバターサンド(490円)とソフトクリーム(650円)。バターサンドは北海道産の小麦やバター、てんさい糖を使い、着色料や保存料は入っていません。濃厚な味の「ピスタチオ」、北海道産生クリームや天然塩を使った「塩キャラメル」などの定番6種類と、旬の素材を使った季節のバターサンドを用意しています。春のこの時期は、「抹茶桜あん」。夏にはシトロン、秋にはマロン、冬にはアップルシナモンやきなこ黒豆などに変わります。

 ほろっとしたクッキーにバタークリームがたっぷり。甘さは控えめで、プラリネはクルミとアーモンドの香ばしさ、ラズベリーは果物の甘酸っぱさなど、素材の味が生かされています。バタークリームにはくどさはなく、さっぱりと軽い仕上がりです。

 ソフトクリームも北海道産の牛乳を使っています。シチリア産のオリーブオイルと岩塩、ブラックペッパーを添えた「オリーブオイル」が人気。季節の果物を添えたものや抹茶白玉、カカオ二ブなど6種類がそろいます。いずれも甘さは控えめで、ミルクのおいしさを感じるあっさりとした味わい。食べ終わってものどが乾いて水がほしくなるということはなく、すっきりとした後味です。

 バターサンドもソフトクリームもテイクアウト可能。ソフトクリームはカップかコーンを選ぶことができ、450円から。バターサンドは店内で食べるのと同じ490円で、冷凍で提供します。カチカチに凍るわけではないので、冷凍庫から出してすぐにバタークリームが口の中で溶けるのを味わうことができ、常温に5~10分ほど置いて、柔らかくして食べることもできます。

玄米のあられが添えられた、抹茶しるこにとソフトクリーム
黒いお皿に添えられた玄米のあられは、しるこにもソフトクリームにも合います

 小さなバターサンド3つと果物のお皿(880円)や小さなバターサンド2つとソフトクリームのお皿(同)など、セットメニューもあります。季節メニューとしてはこの時期、「抹茶しること桜もなかソフトクリームのお皿」(同)がおすすめ。温かい抹茶しるこにはもちもちの白玉が4つ。抹茶の香りと小豆の素朴な甘さがあり、サクラの塩漬けの塩味が味を引き締めます。

 ソフトクリームにはサクラフレーバーのパウダーがかかっており、サクラの花の形のもなか付き。優しい味のソフトクリームに寄り添うように、サクラの香りが立ち上ります。一緒に付いてくる玄米のあられは、ソフトクリームとも、しるこおとも相性抜群。香ばしさとカリカリとした食感がいいアクセントになります。

落ち着いた雰囲気の「マシュー神宮の杜」店内
落ち着いた雰囲気の店内
木彫りのクマがあちこちに置かれている「マシュー神宮の杜」店内
木彫りのクマが店内のあちこちに置かれています

 季節に合わせたスパイスとハーブがたっぷり入ったヘルシーなカレー3種とご飯、サラダが付いた「3種の薬膳ヴィーガンカレー」(1680円)、かぼちゃのポタージュやトマトジュース、果物と野菜のオリーブオイル和えなどに、自家製フォカッチャかベーグルが付く「ぶらんち」(1300円)の食事メニューもあります。

 ドリンクはハーブティーの種類が豊富。「あたため」「でとっくす」「しずか」など、効果やイメージで名前が付いており、気分に合わせて選べます。ティーポットで提供され、おかわりのお湯も1回もらえます。

 クラフトビールのノースアイランド・ピルスナーとヴァイツェン(各800円)、オーガニックワイン(800円から)もあるので、「ちょっと昼飲み」もできます。

 店内は暖色系の照明の下、アンティークな雰囲気のインテリアが並び、落ち着いた雰囲気。マネージャーの吉野真花(まなか)さんは「女性客が多いのですが、1人でのんびりしていく男性もいます」と話します。入り口から入ると、正面の壁一面が窓になっており、庭の向こうに円山公園の緑を望むことができます。公園に住むエゾリスや野鳥も姿を見せるといい、取材中にもエゾリスが庭をちょこちょこと走り回っていました。

オーナーセレクトの服や雑貨も並ぶ「マシュー神宮の杜」店内
オーナーセレクトの服や雑貨が並ぶ店内
「マシュー神宮の杜」店舗前で笑顔を見せるマネージャーの吉岡真花さん
マネージャーの吉岡真花さん

 店は、2020年7月に、円山・裏参道にオープン。21年4月に、円山公園に隣接した民家を改修し、現在地に移転しました。コロナ禍での開店、移転でしたが、味や雰囲気、居心地の良さがSNSなどで広まり、リピーターも多いそう。週末は行列のできる人気店です。「コロナの制限なしの初めての春。お花見に来る人も多いと思うので、ちょっと休憩しに立ち寄ってほしい」と吉野さん。ソフトクリームをテイクアウトして、サクラを見ながら食べるのも良さそうです。

 「マシュー」の店名は、吉野さんの名前の頭文字の「ま」と、オーナーの吉野さんの母修子さんの頭文字「しゅう」からとったそうです。オーナーの修子さんはギャラリーも経営しており、店内の一画は修子さんセレクトの服やアクセサリー、雑貨などのショップスペースになっています。

住所札幌市中央区北1条西28丁目3-5
電話番号011・616・3171
定休日月曜、第3火曜。ゴールデンウイーク期間は営業予定
営業時間午前10時~午後6時
※お店の情報などは取材時のものです

ここでしか味わえないお菓子「判官さま」を熱々で 
六花亭神宮茶屋店

高温の鉄板で焼き上げる六花亭神宮茶屋店の「判官さま」
高温の鉄板で焼き上げる「判官さま」

 北海道神宮の敷地内にある六花亭神宮茶屋店には、道内各地の六花亭の店舗や本店でも買うことのできない、神宮茶屋店限定のお菓子があります。その名も「判官さま」(130円)です。初詣や花見の時期には開店と同時に行列ができる人気ぶりで、ピークの元旦には1日で2400個ほど、花見シーズンには1日2000個も売れるそうです。

焼き上げるまでに5~6分かかるという「判官さま」を焼く様子
焼き上げるまでに5~6分かかります
焼き上げたおもちはよく伸びます
焼き上げたおもちはよく伸びます

 判官さまは、そば粉を使ったこしのあるもちで粒あんを包んだ素朴なお菓子。直径6センチほど。鉄板で両面を焼いて、熱々をいただきます。250度の高温で焼かれ、表面は薄茶色の焼き色が付きます。外側はそば粉を炒ったような香ばしい香りがして、カリカリ。おもちはもっちりしていて、よく伸びます。中のあんは熱せられてとろとろ。表面の香ばしさとあんの素朴な甘さがぴったりで、ハフハフしながら一気に食べてしまいそうです。

「判官さま」ののぼりがたなびく神宮茶屋店
「判官さま」ののぼりがたなびく神宮茶屋店

 店長の斎藤郁絵さんは「持って帰りたいというお客さまもいらっしゃいますが、ここで食べるのがおすすめです。時間がたつとおもちが固くなってしまい、『店で食べるのと全然違う』とおっしゃる方もいます」と話します。

 六花亭が販売している大福など、そのまま食べるもち菓子は、柔らかい食感が特徴ですが、判官さまは焼いた時に一番おいしくなるように作られているそうです。

店内で無料で提供しているほうじ茶
店内では無料でほうじ茶を提供しています
店の横の休憩スペース
店の横の休憩スペースで味わうこともできます

 店内ではほうじ茶が提供されており、判官さまを購入すると手渡される紙コップで無料で飲むことができます。ほうじ茶の炒った甘い香りと、そば粉の香ばしさが絶妙に合います。ほうじ茶は石川県加賀市の丸八製茶場のもので、同店で購入できます。

 店頭や店を出た横には、長いベンチが設置されており、木々に囲まれながら一息入れるのも気持ちがよさそうです。

北海道神宮の手水近くに建つ島義勇の銅像
北海道神宮の手水近くに建つ島義勇の銅像
島義勇の説明入りの「判官さま」を入れる袋
島義勇の説明入りの「判官さま」を入れる袋

 判官さまは、2000年11月に六花亭がこの場所に出店する際、北海道神宮から「伊勢神宮の赤福のような、ここでしか食べられないお菓子を作ってもらえないか」と持ちかけられ、考案したそうです。六花亭の帯広市の工場で製造したものを毎日、同店に搬入し、店頭で焼いて焼きたてで提供しています。

 ところで、「判官さま」とは一体だれのことなのでしょう。北海道開拓の父と呼ばれた佐賀藩士の島義勇(よしたけ)です。島義勇は明治政府から開拓判官に任ぜられ、1869年(明治2年)11月から約3カ月間札幌に滞在し、南北の基準を大友堀(創成川)とし、東西に幅約76メートルの防火帯(大通公園)を設けるなど、現在の札幌市中心部の碁盤の目の都市計画の礎を築きました。今年は島義勇の没後150年に当たり、六花亭は今年、焼き上がった判官さまを入れる袋を、島義勇の説明を記した特別なものにしています。

 島義勇はコタンベツの丘(元円山公園周辺)から原野を眺めて本府建設を構想したとされ、北海道神宮の手水の奥には、銅像が建っています。島義勇の銅像は、札幌市役所1階ロビーにもありますよ。

季節のお菓子や定番のお菓子も販売している店内
季節のお菓子や定番のお菓子も販売しています

 判官さま以外にも、六花亭神宮茶屋店では花見シーズンに合わせて春のお菓子を販売します。「草よもぎ」(135円)は、つぶあんをよもぎの香りが豊かな新粉もちで包みました。「お花見餅」(9個入り420円)は、こしあんを包んだ一口サイズのよもぎ味と紅白の新粉もちを各3個詰め合わせました。「かしわ餅」(135円)はこしあんとみそあんの2種類があり、みそあんはみその香りとほのかな塩味があります。いずれも5月5日までの販売です。

住所札幌市中央区宮ヶ丘474-48
電話番号011・622・6666
営業時間午前9時~午後5時(11月から翌2月は午前9時~午後4時)
定休日なし
※お店の情報などは取材時のものです
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小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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