【美幌】町内の農家ら有志でつくる美幌町樹液研究会(平野祥子代表、会員約10人)が、町内のカエデ樹液で作った2種類のメープルシロップを発売した。平野代表(82)の夫で前代表の茂夫さん=町豊岡、享年86歳=が2月に急逝したため、今年のシロップ生産が危ぶまれたが、故人の熱意をくみ取ったメンバーの尽力で、今年も無事発売にこぎ着けた。
完成したメープルシロップは、JR美幌駅直結の物産館「ぽっぽや」で今月から販売。イタヤカエデとカラコギカエデの2種類があり、どちらも150ミリリットル入りで1本2500円。
今年の樹液採取は3月初旬から始まった。折しも茂夫さんが亡くなった直後。メンバーの中橋政俊さん(72)によると「メンバー内では『できる範囲内で構わない。まずは遺志を引き継ごう』という話になった」といい、今年は例年の半分程度の規模となる、イタヤカエデから約2200リットル、カラコギカエデから約1500リットルの樹液をそれぞれ集めた。
集めた樹液は煮詰め作業を経て糖度を上げ、4月26日にグリーンビレッジ美幌(町美禽)の農産加工室で瓶詰め作業を行った。最終的に今年の生産規模は、イタヤカエデが瓶で約400本の出荷、カラコギカエデが約280本の出荷となった。
瓶詰め作業ではメンバーらが手分けして、大鍋で煮詰めたシロップを計量カップですくい取り、一本一本じょうごを使って手作業で入れていった。一緒に作業した代表の祥子さんは「皆さんの協力をもらってここまで来ることができた。私自身、体の無理が利かず決して楽な作業ではないが、できればまたできる範囲内で続けたい」と来年に向け夢を描いている。 (青山秀行)
(北海道新聞2024年5月17日掲載)