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2024.06.23

SHIRO「みんなの工場」でカフェやお買い物も楽しむ~見学できる北海道のコスメ工場巡り㊦

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

砂川市にあるSHIROの「みんなの工場」の外観
砂川市にあるSHIROの「みんなの工場」

ガラス張りで明るく開放感がうれしい製造現場

 がごめ昆布や酒かす、ラワンぶきなど自然の素材を生かしたスキンケア製品を製造・販売し、国内外で人気の高い北海道発のコスメティックブランド「SHIRO(シロ)」。その製品をつくる工場にショップやカフェなどを併設したのが砂川市にある「みんなの工場」です。ものづくりのすべてを見てもらうため、製造現場はガラス張りで、明るい雰囲気。キッズスペースや小さなライブラリーも備え、「みんなの居場所」になっています。

カラマツの間伐材を使った外壁
外壁はカラマツの間伐材です
かわいらしい工場の案内図がある入り口
入り口には、かわいらしい工場の案内図が

 「みんなの工場」は2023年4月にオープン。砂川市立江陽小学校の跡に建てられました。建設に当たって、ワークショップなどを開き、地元の住民やプロジェクトに興味を持った全国の人たちとどんな施設にするかを相談しあい、この工場ができたそうです。

明るい日差しが降り注ぐ「みんなの工場」の内観
明るい日差しが降り注ぐ「みんなの工場」の内観

 中に入ると、広々とした空間が広がります。正面にはガラス張りの製造現場があり、天井まである上の窓からは天気が良ければ陽光が差し込み、明るく、開放的な雰囲気です。

製品の開発をしている研究開発室
製品の開発をしている研究開発室
原料の下処理をする素材処理室
原料の下処理をする素材処理室。奥で製造スタッフが水に浸したがごめ昆布をかき混ぜていました

 工場エリアは主に4つに別れています。向かって1番右側が研究開発室。全国から集まった素材の力を最大限に引き出すための加工の方法や処方などについて、開発者が試行錯誤しています。企業の「きも」ともいえるそんな場面を見られるところはそう多くはありません。

 次が素材の洗浄や乾燥、粉砕、ろ過などの下処理や原材料の成分の抽出をする素材処理室。この日は、がごめ昆布の下処理をしており、製造スタッフが水に漬け込んだ刻み昆布の入った寸胴を、ひしゃくでかき混ぜていました。手作業で処理されていることに驚きます。酒かすを絞ったり、ふきのとうを下処理したりするのも、製造スタッフが手作業でするそうです。

原材料を混ぜ合わせる調合室
原材料を混ぜ合わせる調合室
包装室で最後の点検をしながら作業を進める製造スタッフら
包装室で最後の点検をしながら作業を進める製造スタッフら

 調合室では、処理された原材料を混ぜ合わせます。最後はボトルに中身を入れパッキングする充填室と包装室です。製品に傷や汚れがないか、ロット番号がきちんと印字されているかなどを人の目で確認しながら、作業が進められます。

自然素材のスキンケア製品や食品も並ぶショップ

全面ガラス張りのショップ店内
ショップも全面ガラス張り

 併設されているショップもガラス張りで、光がふんだんに入って来ます。酒かすやがごめ昆布のスキンケア製品のほか、フレグランスのオードパルファンや柔軟剤、SHIROがセレクトした自然素材の調味料やお茶、ジュースなどの食品も置いてあります。

自由に試すことのできるスキンケア製品などのテスター
スキンケア製品などのテスターがあり、自由に試せます
SHIROオリジナルのタオルやTシャツ
SHIROのオリジナルタオルやTシャツ

 スキンケア製品はテスターが置かれ、つけ心地や香り、質感など自由に試すことができます。タオルやTシャツ、マグカップ、コーヒー、はちみつなどのSHIROのオリジナル商品もあります。

 また、白いボトルの製品の中で、一層目立つポップで明るい黄色のボトルが印象的な「フルーツブーケ」シリーズは、「みんなの工場」に併設された砂川本店のみの限定販売です。ハスカップやリンゴ、ブドウのほか、カシス、オレンジ、アプリコットなどの香りを柔らかなフローラルの香りでまとめています。オードパルファンのほか、ヘアバームやディフューザー、ハンド美容液などをそろえています。

自分好みの「マイフレグランス」づくりを体験

8種類の香料で好みの香りを試せるブレンダーラボ

 ここに来たらぜひ試したいのが、オリジナルのフレグランスをつくることができる「ブレンダーラボ」。自分で香料とアルコールをボトルに詰めて、好みの香りを調合、「マイフレグランス」をつくることができるのです。さっそく、挑戦してみました。

 まず、40ミリリットル(4180円)か80ミリリットル(5170円)か、量を決めます。40ミリリットルの場合、しっかり香るオードパルファンタイプは、スポイトで4回(最大4種類)、ほのかにふんわり香るボディコロンタイプは2回(最大2種類)、香料を入れます。今回は40ミリリットルのオードパルファンタイプにします。

 まず、8種類の香料をそれぞれ、試香紙にスプレーし、香りをかいでみます。その後、好みの香りを選び、試香紙を鼻に近づけたり、離したりして、組み合わせを決めていきます。2~3種類、組み合わせるのがおすすめだそう。

 まず、1番気に入った、フローラルで上品な「ホワイトリリー」をメーンの香りに決めました。次に、今ごろから夏にかけて合いそうな、透明感のあるグリーンフローラルの香り「ミモザ」と、清涼感があり、リラックスできそうな「ホワイトティー」を加えることにしました。

 迷ったら、スタッフに声をかけると、アドバイスしてくれます。最初に感じるトップノートとミドルノート、最後に残るラストノートの香りの特徴が記された説明書もあるので、それも参考になります。

自分で選べる8種類の香料
自分で選べる8種類の香料
スポイトで規定量を計り、ボトルに移す様子
スポイトで規定量を取って、ボトルに移します

 次に、香料をスポイトにとってボトルに入れます。私は、ホワイトリリーをスポイトで2回、ミモザとホワイトティーを1回ずつです。そこに、アルコールをビーカーで計って混ぜ合わせ、ラベルを書き込み、ボトルに貼ったら完成です。

野菜たっぷりのピザやドリンクを味わえるカフェ

カフェの入り口
カフェの入り口

 「みんなの工場」には、カフェも併設されています。ここにも大きな窓があって、すがすがしい隣の田んぼの緑や、この日は残念ながら雨模様でしたが、天気が良ければピンネシリの山並みを望むことができます。メニューは札幌のイタリアンレストラン「TAKAO」の高尾僚将シェフが監修しています。

開放感あふれる店内
開放感あふれる店内
まき窯でピザの加熱を調整するスタッフ
まき窯でピザの加熱を調整するスタッフ

 店内にはまき窯があり、北海道十勝産の小麦を5種類ブレンドした生地のピザは、砂川本店の限定メニューです。フードメニューはピザ3種類、サラダ、フライドポテト、デザートの揚げパン3種類、クリームパン2種類があります。ドリンクはさわやかな「JELLY SODA」3種類やスムージー3種類、ソフトドリンク、ワインやクラフトビールもあります。

注文した「たっぷり野菜」のピザとドリンク「小松菜×ハニーレモンジンジャー」
「たっぷり野菜」の名前の通り、こんもりの野菜。グリルされた野菜の香りが抜群

 ピザ3種類の中から「たっぷり野菜と生ハムのピザ」(1540円)と、JELLY SODAの「小松菜×ハニーレモンジンジャー」(935円)を頼んでみます。ピザはオーダーが入ってから生地を伸ばし、具材をのせてまき窯に。スタッフが時々、ピザを回して焼き加減を調節しています。火力が強く、数分で焼き上がります。高温、短時間で焼き上げるため、表面はパリッと、中にうまみやジューシーさが閉じ込められます。

 テーブルに到着したピザは、野菜がこんもり。具材は季節によって変わるそうですが、この日はスナップエンドウとアスパラ、ブロッコリーで、グリルされた野菜の香りが食欲をそそります。一切れ食べてみると、薄い生地はクリスピー。オリーブオイルの香り、生ハムとチーズの塩気で、野菜のおいしさが引き立ちます。

 JELLY SODAは、下にハニーレモンジンジャーが、上に小松菜が2層になって、色鮮やか。小松菜のフレッシュさがよく分かり、苦みや青臭さはありません。

親子で遊べるキッズスペースやライブラリーも

天井近くまで張り巡らされたジャングルネット
天井近くまで張り巡らされたジャングルネット。穴からのぼって上のネット部分で遊ぶことができます

 研究開発室と素材処理室の前の部分は、キッズスペースになっています。床から天井近くまで張り巡らされているのは、ジャングルネット。下の穴からネットの内側に入ってのぼり、上のネット部分に寝転んだり、転げ回ったりでき、子どもたちに大人気。大人も上がることができ、意外と子どもより親がはまってしまうケースも多いそう。

壁の黒板
壁一面が黒板になっています
おもちゃが収納されている床
床を開けると、おもちゃが収納されています

 ジャングルネットの横には、壁一面に大きな黒板があり、チョークで自由にお絵かきや落書きができます。床の一部を開くと、中には積み木などのおもちゃも入っています。スペースの一画には絵本も置かれており、親が買い物中でも、子どもたちが安心して遊べるようになっています。

SHIROのスタッフおすすめの本が並ぶライブラリー
SHIROのスタッフおすすめの本が並ぶライブラリー

 ライブラリーも設置され、森林や環境、地域活性化など、SHIROのスタッフおすすめの本が並んでいます。ここで読むことができ、一部は購入もできます。子ども向けに「ドラえもん」などの漫画もあり、ゆっくり過ごすことができます。

ラウンジの大テーブル
ラウンジの大テーブル
天気が良ければ窓からピンネシリの稜線が見えるラウンジ
天気が良ければピンネシリの稜線が見えます

 ラウンジには、20人以上が座れる大きなテーブルがあります。砂川にある保養所の改築時に出た廃材を活用しています。ここで、ライブラリーの本を読んだり、ガラス張りの充填室や包装室を眺めたりできます。ラウンジの窓からも、天気が良ければピンネシリを眺めることができるそうで、ゆったり過ごせそうです。

SHIROの前身「LAUREL」のころからの歴史を製品パッケージから振り返ることのできるコーナー
SHIROの前身「LAUREL」のころからの歴史を製品パッケージから振り返ることのできるコーナー
立ち寄ってほしい砂川とその周辺の飲食店やスポットを紹介するカード
立ち寄ってほしい砂川とその周辺の飲食店やスポットも紹介しています

 SHIROが、前身の「LAUREL(ローレル)」だったころからの製品のパッケージを並べ、SHIROの歴史を紹介しているスペースもあります。「みんなの工場」に来た人たちが、工場の帰りに、砂川やその周辺の店やおいしい飲食店、地元の人々に出会ってほしいと、SHIROのスタッフおすすめの立ち寄りスポットを集めた「おでかけカード」もあり、地域の魅力を発信しています。

場内各所に自然や環境へのおもいを込めて

通常は建材として使われない節や虫食いのある木材を活用した床
通常は建材として使われない節や虫食いのある木材を活用した床
間伐したシラカバを利用した陳列じゅう器
間伐したシラカバを利用した陳列じゅう器

 「みんなの工場」は、各所に自然や森、環境への思いと配慮がちりばめられています。床材は、節や虫食いなどで、通常は建材として使われない木材を活用。加工の手間はかかりますが、余すことなく材を使いたいというおもいが根底にあります。建物の外壁は、北竜町の山で伐採されたカラマツの間伐材を、外皮を付けたまま貼り付けています。間伐材を積極的に活用することで、森の循環を支えます。スキンケア製品などを陳列しているじゅう器は、旭川市江丹別で間伐したシラカバ。節のある木材も余さず使っています。

「みんなの工場」の畑
「みんなの工場」の畑
たねワークショップで育てている樹木の苗
たねワークショップで育てている樹木の苗

 「みんなの工場」の横には、畑があります。昨年から土づくりを進め、今年はシソやオクラ、キュウリ、トマトなど野菜やハーブの苗を植えました。カフェで出た生ゴミをコンポストで堆肥にしてすき込み、畑で育てた野菜やハーブは、種類によっては今年7月以降に収穫し、カフェで提供する料理に使います。

 水の循環にも取り組んでいます。製造工程で出る工場排水は、屋外のリサイクル槽で浄化して工場のトイレ用水として再利用し、その後、カフェなどの排水と一緒に浄化槽できれいにします。さらにその水を浄化池にためて、微生物や植物で排水の養分を吸収させてから、できるだけきれいな水にして石狩川に流します。

 ミズナラやキタコブシなど砂川市の在来植物を守り育て、未来に残す取り組み「たねワークショップ」にも取り組んでいます。

 自然素材を生かした製品をつくっているからこそ、環境に与える負荷を軽減したものづくりに取り組んでいるそう。開放的でおしゃれな空間ですが、それだけではなく、自然の恵みへの感謝と尊敬の念が込められています。

住所…砂川市豊沼町54-1
電話番号…0125・52・9646
営業時間…午前10時~午後7時(カフェは午前11時オープン。工場稼働は午後5時半まで、ブレンダーラボ最終受付、カフェラストオーダーは午後6時半まで)
定休日…不定休
※情報は記事公開当時のものです

 お肌や髪の調子を整え、美しさを保つ化粧品。品質の良さだけでなく、ユーザーの心のうるおいアップや環境への配慮をアピールする化粧品メーカーも少なくありません。安全・安心をアピールするとともに、消費者の心もつかもうと、製造過程を見学でき、カフェやガーデンなどを併設する化粧品工場もあります。そんな北海道内の化粧品工場3つを紹介します。

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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