1970年代から90年代にかけ、女子中高生を中心に爆発的な人気を博した「OSAMU GOODS(オサムグッズ)」の生みの親、原田治。その作品や歩みを紹介する「原田治 展『かわいい』の発見」が7月6日(土)、札幌市中央区の東1丁目劇場施設(大通東1丁目10、旧北海道四季劇場)で始まりました。カルビーポテトチップスの「ポテト坊や」や女性誌「an・an」の表紙など、だれもが1度は見たことのあるキャラクターやイラスト、ゆかりの品々が並ぶほか、グッズを販売するショップも併設され、「かわいい」グッズに目移りしそうです。8月25日(日)まで。
北海道新聞社や道新文化事業社などの主催。原田治展は2020年に札幌で初めて開かれましたが、コロナ禍の外出自粛などの期間中で、多くの人が見ることはできませんでした。今回は、没後初の全国巡回展の一環で、原田治の原画やグッズなど約400点が展示されています。
原田治は1946年、東京生まれ。幼少のころから絵が好きで、7歳から後にアメリカ抽象表現主義の画家となる川端実氏に師事しました。多摩美大卒業後、渡米し、帰国後にニューヨーク滞在中に描きためたイラストがアートディレクターの目に留まり、72年創刊の女性誌「an・an」でイラストレーターとしてデビュー。生家が輸入食料品の卸商を営んでいたこともあり、50~60年代のアメリカのコミックやTVアニメ、ポップアートなどの影響を色濃く受けたキャラクターは、日本の〝かわいい〟文化に大きな影響を与えました。
原田治は、〝かわいい〟の表現方法として、「明るく、屈託が無く、健康的な表情であること。そこに5%ほどの淋しさや切なさを隠し味のように加味するというものでした」と説明したそうです。その言葉を胸に作品を見ると、シンプルな描線と明るい色調の〝かわいい〟キャラクターたちが、より深みを持っているように感じられます。
通称「ポテト坊や」は、カルビーのポテトチップス発売の翌年、76年からパッケージに登場し、今も使われています。84年から90年代前半にはミスタードーナツのプレミアム(景品)に採用されました。
この景品には、私も思い出があります。ミスタードーナツで一定額を購入すると、スクラッチカードをもらうことができ、削って出たポイントをためるとグラスや巾着袋などのグッズと交換できます。お弁当箱がほしかったのですが、限られたお小遣いでポイントを集められるかは運次第。ポイントが足りず、友だちと嘆きあっていたところ、隣の席にいたお姉さんが「いらないから、あげる」とカードをくれて、無事にお弁当箱を手にすることができたのです。その時、「将来、こんな優しい大人の女性になろう」と心に決め、そうなれたかどうかは別にして、そのお弁当箱は今でも持っています。
原田治は、赤川次郎や森村桂、辻真先らさまざまな作家の小説やエッセイの表紙も手がけました。絵本も出版しており、「ももたろう」や「イソップものがたり」などは、改めて絵を見ると、原田治らしい色調とシンプルな描線に納得させられます。「こんにちは ぼくのなまえは ハイクけん」と5文字、7文字、5文字の俳句を紹介する絵本「ハイク犬」に懐かしさを感じる人も多いのではないでしょうか。
原田治は還暦後、1年の半分ほどを東京の離島に建てたアトリエで過ごしました。アトリエの写真パネルも紹介されています。また、晩年は自分のために抽象絵画を描き、作品を公表することはありませんでした。そのアトリエの写真や、唯一公表した「Le Cargo Noir(黒い貨物船)」という一連の作品も展示されています。
また、原田治は05年元旦から死去の5日前の16年11月19日まで、通算833回、ブログを更新。愛用品についてや身辺雑記、時事の話題などを取り上げました。そこでテーマとなった、グラナダの古い陶器や銀座の老舗天ぷら店「天一」のうちわ、愛猫「シャケ」の写真なども公開されています。
オサムグッズファンにとって、もう1つの大事な見どころは、ショップです。タオルやトートバッグ、マグカップ、ポストカードなどがずらりと並びます。「あれも、これも」と思わず手に取りたくなる〝かわいい〟がいっぱいです。
「原田治展 『かわいい』の発見」は7月6日(土)から8月25日(日)まで。平日は午前11時~午後4時、土・日・祝日は午前11時~午後5時。月曜は休館ですが、休日の場合は開館し、翌日休館。入場料は一般1500円、中高生1000円、小学生以下無料(保護者同伴)。問い合わせは北海道新聞社事業センターの電話011・210・5731へ(土・日・祝日を除く午前9時半~午後5時半)。