JR帯広駅北側でビジネスホテルを経営するふく井ホテルが、モール温泉を楽しめる足湯の出張事業を始める。人が集うイベントに出向き、食事とセットでモール温泉の魅力を売り込む。顧客との接点を増やし、新たな温泉ファン獲得を狙う。
足湯の浴槽は長さ1.8メートル、幅45センチ、深さ40センチで業者に製作を依頼。ベンチとテーブル付きで、向かい合わせで3人ずつ座れる。保温と浄化機能を備えた循環装置も設置。浴槽やベンチは取り外せる設計で運びやすくした。
デザインには全国有数の酪農地帯・十勝を連想しやすい白黒の牛柄模様を採用。「モール温泉」の響きと牛の鳴き声から着想した。
源泉掛け流しのふく井ホテルをはじめ、市内には約20の温泉施設が点在。「帯広温泉郷」の名で、全国の温泉ファンらがネット投票する「温泉総選挙2023」の女子旅部門で5位に選ばれた。ただ、ふく井ホテルの小松勇斗事業開発部長(26)は「身近すぎて価値を発信しきれていないのでは」との思いから事業化を検討した。
起業家を育成する帯広信用金庫の「とかち・イノベーション・プログラム(TIP)」に参加。東京や大分県で移動式足湯を展開する業者にも連絡して情報収集し、アイデアを練った。製作費150万円はクラウドファンディングで集めた。
8月14、15日に開かれるおびひろ平原まつりでの出店を皮切りに、道内外のイベントやスポーツ大会、外出が難しく温泉施設での入浴が困難な福祉施設にも出向く予定だ。
前職がJR北海道の車掌だった小松さんは「JR東日本で運行実績のある足湯列車を道内で実現するのが夢。まずは値段設定など収益化できるビジネスモデルを考えたい」と話す。 (鈴木宇星)
(北海道新聞2024年7月12日掲載)