北見市留辺蘂町の「黒桜牧場」が、キッチンカーによる自社牛乳を使ったソフトクリーム販売を始めた。おなかの張りや下痢を引き起こす原因とされる成分を含まず、牛乳本来の味わいが商品の魅力。家族経営の小規模牧場ながら、事故による冷蔵車の廃車や困難な資金調達を乗り越え、新たな地域の魅力発信に、文字通り乗り出す。
「留辺蘂牛乳 月下美人」はA2ミルクで、生乳に含まれる脂肪球を均質化しない「ノンホモジナイズ製法」と低温殺菌処理により、生乳に近い濃厚な味わいが楽しめるのが特徴だ。
牛乳の購入者からソフトクリーム製造を求める声が多く、牧場代表の伊藤俊弘さん(43)は昨年11月ごろからキッチンカーでの販売を着想した。
ただ、今年1月にスリップ事故で牛乳を運搬する冷蔵車が廃車に。車の買い替えにキッチンカー事業の費用を充当せざるを得なくなった。資金提供を募るクラウドファンディングも5月末まで約1カ月半実施したが、目標金額に届かなかった。
それでも構想の実現に向け、軽トラックをキッチンカーに改造するなど工夫を重ね、事業費約300万円もなんとか工面。試作を重ねたソフトクリームは、濃厚な味わいや素材本来の甘さが感じられ、脂肪分が高く、もったりとした舌触りに。伊藤さんは「今までにない味わい。年齢を問わず食べてもらえると思う」と手応えを語る。
キッチンカーは今月から、市留辺蘂町の道の駅「おんねゆ温泉」などに出店。ソフトクリームはワッフルコーン(600円)と、黒色が特徴のブラッククリスピー(400円)など。かき氷やミルクフラッペなども扱う。伊藤さんは「留辺蘂じゃないと食べられない唯一無二の商品になれば。地域の新たな魅力として発信したい」と意気込む。
午前10時~午後3時(木曜休み)で、出店情報は黒桜牧場のインスタグラムやX(旧ツイッター)などで発信している。 (逢坂哲平)
(北海道新聞2024年7月30日掲載)