札幌市中心部の創成川東側の地域「創成イースト」のオリジナルの日本酒ができました。創成イーストで飲食店を営む加藤商店のオーナー加藤公彦さんが発案し、創成イーストで150年以上続く日本清酒が醸造、創成イーストの魅力に触発されて地域づくりに取り組む若者2人が販売を担当。提供は、創成イースト地区の飲食店のみとするなど、地域にこだわった日本酒です。
酒米「吟風」100%のきりっとした辛口
日本酒は北海道産の酒造好適米「吟風」100%の純米酒で、商品名は「お東(とう)さん」。創成イースト地区を歩行者天国にしてみこし渡航するイベント「下町ランウェイ」の実行委員長の磯辺智佐登(ちさと)さん(27)と実行委のデザイン担当森山空さん(26)が販売・営業を担当します。創成イーストの下町情緒や住む人たちの人柄にひかれて創成イーストに関わることになった2人が、地域の人たちの温かさを「お父さん」のようだと感じたことと、地域が中心部の東に位置していることから、命名しました。
お東さんはきりっとした辛口で、食事のじゃまをしないため、食中酒にぴったりだそう。2人は「日本酒をあまり飲んだことがないという人や、苦手意識のある人にも、日本酒を飲むきっかけになればと、飲みやすさを考えました」と話し、500ミリリットル入りと一般的な四合びんより小ぶりで、手にとりやすいサイズにしました。ボトルは薄い青色で、おしゃれ。磯辺さんは「若い世代の家の食卓に置いて違和感のない雰囲気にしました。ワイングラスで楽しんだり、氷を1個入れてロックで飲んでもいい」と話します。
豊平川と創成川をラベルにデザイン
ラベルは、デザイナーの森山さんが担当。白のシンプルなラベル上部に曲線の青色で豊平川を、ラベル右端に直線の青色で創成川をデザインしました。森山さんは「創成イーストは創成川と豊平川にはさまれた場所」と説明。豊平川の豊かな伏流水のおかげで、明治の初期から酒づくりやみそ、しょうゆの醸造、ビール製造などが発達した歴史も踏まえ、水の豊かなエリアであることを強調しました。
お東さんは1000本製造。加藤商店でボトル販売するほか、創成イーストの飲食店でグラスやボトルで提供する予定です。磯辺さんと森山さんが地域の飲食店に呼びかけ、提供店を開拓していく予定です。加藤さんは「創成イーストで酒をつくり続ける日本清酒がつくった地域の日本酒を、発祥の地で味わってほしい」と話します。
また、冬には冬バージョンの「お東さん」を製造予定。季節ごとに、創成イーストに足を運ぶ新しい楽しみになりそうです。
「古くて新しい」魅力的な地域で新たな挑戦
森山さんはデザイナーとして活動していた時に、創成イーストの地域づくりを手がける人たちに出会い、昨年初めて実施された下町ランウェイの実行委に参加。磯部さんも飲食店などでのアルバイトをしながら、カメラマンとして活動するなかで下町ランウェイに関わるようになり、創成イーストの魅力にひかれて同地区に引っ越し、住民としても関わりを続けています。2人は実行委として活動する一方、地域のゴミ拾いや子どもたちのラジオ体操の手伝い、地域のイベントの準備など、ボランティア活動にも取り組んでいます。
加藤さんは生まれも育ちも創成イースト。加藤さんの祖父母が1926年にみそやしょうゆを販売する加藤商店を創業し、2代目の父母がコメや酒、日用雑貨も扱うようになりました。加藤さんは3代目で、8年前に飲食店を始めました。飲食店の開業にあたり、家族や友人と協力して、建物を改修。使わなくなった古いサイロを解体して持って来て店入り口の外壁にしたり、札幌軟石を床材にしたり、一枚板のカウンターを取り付けるなど、個性的で居心地のいい空間を作り上げました。
加藤さんは「創成イーストには近年、マンションが増え新しい住民も多いが、古い建物も点在している。歴史や横のつながり、古いものを大切にしながら、新しい住民や若い人が活動することで、地域が活性化する」と説明。お東さんの販売や営業を磯部さんと森山さんに任せることについて、「地域の日本酒を自分でつくって、自分の店で売れば簡単だけど、新しく来た若い2人に担ってもらうことで、新しい挑戦になるし、地域をわくわくさせられる」と期待をかけます。
お東さんは加藤商店では1本1760円で販売。店内で提供する際は、ボトルで2000円。ほかの提供店は、磯部さんや森山さんが今後、営業して開拓し、マップなどにしてホームページで公開する予定だそうです。