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2024.09.29

「北大ワインテイスティング・ラボ」開設 北海道産ワイン12種を有料試飲 キャンパス最古の建物を改修

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

「北大ワインテイスティング・ラボ」が開設された「北海道ワイン教育研究センター」
「北大ワインテイスティング・ラボ」が開設された「北海道ワイン教育研究センター」

 北海道大学の「北海道ワイン教育研究センター」に、北海道産ワインを有料試飲できる「北大ワインテイスティング・ラボ」が開設されました。コイン式のワインサーバーを設置し、12種類のワインの中から1500円で3杯、試飲することができます。多くの人に北海道産ワインの味を知ってもらうと同時に、試飲した人にアンケートを実施し、よりよいワインをつくるための研究に役立てる狙いもあります。

1500円で3種のワインを試飲 ラボ限定シードルも

自動でワインを注いでくれるサーバー
自動でワインを注いでくれるサーバー
ボタンを押すと30ミリリットルのワインが自動で注がれる様子
ボタンを押すと30ミリリットル注がれます

 研究センターのギャラリースペースには、1台に4本のワインボトルを入れたサーバーが3台設置されています。受け付けで1500円支払うと、コイン3枚とワイングラスが手渡され、12種類のワインの中から3種類を選ぶことができます。サーバーにコインを1枚入れ、好みのワインのボタンを押すと、注ぎ口から自動的にワインが30ミリリットル注がれます。支払いはキャッシュレスで、クレジットカードや一部の電子マネーを使うことができます。交通系ICカードは使用不可です。

北大余市果樹園のリンゴでつくったシードル「玲瓏」のボトルと注がれたグラス
北大余市果樹園のリンゴでつくったシードル「玲瓏」
氷水の入ったガラスボウルで冷やされているシードル「玲瓏」など
ここでしか飲むことのできない「玲瓏」

 赤ワイン4種、白ワイン6種、ロゼワイン2種のほか、現在は余市町の北大余市果樹園でとれたリンゴを使い、北海道ワイン(小樽市)が醸造したシードル「NV 玲瓏(れいろう)」も置いています。シードルは一般には販売しておらず、ここでしか飲むことができません。テイスティング・ラボの運営の委託を受けているNPO法人ワインクラスター北海道のソムリエが100ミリリットル、注いでくれます。

 ラインナップしているワインの中で、もう1つ、ここでしか飲めないワインがあります。「2022年 モルゲンリッヒ ロージゲム シャイン(ばら色の朝日)」です。北大北方生物圏フィールド科学センター余市果樹園でとれたブドウを使い、余市町の平川ワイナリーに委託醸造したものです。

1500円支払うと手渡される3杯分のコイン
1500円支払うと3杯分のコインが手渡されます
アンケートに答えるともらえるポストカード(右)やステッカー
アンケートに答えるともらえるポストカード(右)やステッカー

 ワインのコインを購入すると、アンケートの協力を求められます。選んだワインが好みだったかどうかなどを尋ねるもので、集計結果は北海道内のワイナリーが今後、よりおいしいワインをつくるための研究に役立てられます。また、アンケートに答えると、ポストカードやステッカーなどをもらうことができます。

 試飲は金曜の正午~午後7時、土、日曜は午前10時半~午後4時半、月曜は午前10時半~午後3時。火~木曜は休み。

 当面のワインリストは次の通り(セレクトは定期的に変更されます)。

<赤ワイン>
 ・2021年 山幸(池田町、十勝ワイン)
 ・2022年 羆の晩酌(富良野市、ふらのワイン)
 ・2020年 樽熟ツヴァイゲルトレーベ(余市町、余市ワイナリー)
 ・2022年 北ワイン ピノノワール(千歳市、千歳ワイナリー)

<白ワイン>
 ・2022年 CHARDONNAY樽発酵(三笠市、YAMAZAKI WINERY)
 ・2021年 ソービニオン・ブラン(札幌市、さっぽろワイン)
 ・2022年 HATSUYUKI(仁木町、NIKI Hills Winery)
 ・2022年 ピノ・グリ(奥尻町、奥尻ワイナリー)
 ・NV 北海道100ナイアガラ(七飯町、はこだてわいん)

<ロゼワイン>
 ・2022年 モルゲンリッヒ ロージゲム シャイン(ばら色の朝日、余市町平川ワイナリー)
 ・2020年 オレンジピンク(岩見沢市、宝水ワイナリー)

札幌キャンパス最古の「旧昆虫学及養蚕学教室」を改修

ギャラリーに置かれている旧昆虫学養蚕学教室の模型
ギャラリーに置かれている旧昆虫学養蚕学教室の模型

 同センターは、北大の「旧昆虫学及養蚕学教室」を23年9月に改修した建物を活用。旧昆虫及養蚕学教室は1901年(明治34年)建設の国登録の有形文化財で、北大の札幌キャンパス内に現存する最古の建物です。日本の昆虫学の祖とされる松村松年(しょうねん)が、この建物を拠点としていました。日本の木造軸組み構造に、西洋から輸入されたキングポストトランス構造の屋根を載せた建築で、随所に西洋建築の意匠表現がみられます。

創建時のように復元された天井のはり
創建時のように復元された天井のはり

 改修では、建物の保存や鉄骨などによる耐震補強などをほどこしつつ、天井のはりなどを創建時当初のように復元しています。建物中心部、試飲のできるギャラリースペースの天井の合板と床材には、北大の研究林の木材が使われています。建物の構造や雰囲気を眺めながらワインを飲むのもいいですね。

イノベーションラボに置かれていた「ドメーヌ・タカヒコ」の畑の土壌の断面図を持つ曾根教授
イノベーションラボに置かれていた「ドメーヌ・タカヒコ」の畑の土壌の断面図を持つ曾根教授

 建物入って右側のプロモーションホールはワインセミナーなどを開く場として活用されており、左側のイノベーションラボでは、ヴィンヤードのドジョウや微生物などに関する研究を担うほか、分析機器でワインの成分を測るなどして生産者もサポートしています。

ワイン庫に生まれ変わった旧昆虫標本室
ワイン庫に生まれ変わった旧昆虫標本室

 また、同センターに隣接した「旧昆虫標本室」も、ワイン庫として改修されました。こちらは1927年(昭和2年)築の石造・一部鉄筋コンクリート造の蔵。外壁は札幌軟石積みで、鉄製の窓枠内側にはファイヤーボックスによる防火対策がほどこされており、キャットウォークや床材など、可能な限り創建時の仕上げを保っています。

セラーには2000本のワインが貯蔵可能

ワイン庫のセラーに並ぶ北海道産のワイン
ワイン庫のセラーに並ぶ北海道産のワイン

 ワイン庫のワインセラーには、約2千本のワインを貯蔵できます。同センター長の曾根輝雄教授(農学研究院応用分子微生物学研究室)は「将来的には、道内のワイナリーのワインを長期間預かって、価値を高める『ワインバンク』として活用できれば」と話します。びん内熟成をさせたほうがおいしくなるワインは、びん詰めしてから数年以上置くことが望ましいとされますが、道内の小規模ワイナリーには保管場所や管理上の理由などから出荷まで保管するのが難しいところも多いため、イタリアなどにある「ワインバンク」の役割を果たす狙いです。

ニレの一枚板のテーブル
ニレの一枚板のテーブル。奥の窓からは、北大札幌キャンパスに現存する最古のニレの大木が見えます

 両側のセラーにはさまれたワイン庫の中央にはニレの一枚板のテーブルが置かれています。ニレは北大のシンボルツリーの一つで、ワイン庫の窓の外には北大札幌キャンパスに現存する最古のニレの大木が見えます。

 北大大学院農学研究院は2021年度から23年度ニトリホールディングスやコープさっぽろなどが出資した寄付講座「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」を開設。22年には共同プロジェクト拠点「北海道ワイン教育研究センター」をつくりました。北海道と連携してワイン産業支援組織「北海道 ワインプラットフォーム」の運営などを通して、北海道をワイン産業の集積地とする「北海道ワインバレー」に向け、取り組んでいます。

住所/札幌市北区北9条西8丁目 北海道大学構内(クラーク像向かい)旧昆虫学及養蚕学教室
営業時間/金曜正午~午後7時、土・日曜午前10時半~午後4時半、月曜午前10時半~午後3時
定休日/火曜~木曜、年末年始
小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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