「大きくて、おいしくて、天塩のシジミを1度でも食べたら、もう他のシジミは食べられなくなるわよ」
と言うのは、旭川に住む私の母です。
150年前からあった北海道三大グルメの最終回<シジミ編>の主役は、天塩川のシジミです。近年では流通量が少ないため、なかなか食べられない高級食材になっています。
その前におさらい。江戸時代に「蝦夷の三絶(さんぜつ)」と呼ばれていた、今で言う「北海道に行ったら絶対食べなきゃだめ! 北海道の三大グルメ」がありました。それは①天塩川のシジミ②厚岸湾のカキ③十勝川のフナ、でした。
目次
国立公園で育つ純天然産
天塩のシジミの特徴は、なんと言ってもその「大きさ」と、他の地域から稚貝を放流したりしていない「純天然産」であることです。
シジミたちは、利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区「サロベツ原野」を流れる、天塩川、サロベツ川、パンケ沼で自然繁殖しています。いかにもおいしく育ちそうな環境ですよね。
サイズが半端ない! 特大は10年生
大きさで有名な天塩産シジミですが、実は成長スピードは遅いんです。冬、約4カ月にわたって天塩川が結氷、全面氷で覆われ、シジミの成長が止まってしまうのが理由です。
北るもい漁協天塩支所が出荷するのは、「中」「大」「特大」の3種類。規格に満たないものは全て漁場に戻し、資源保全に努めています。最も小さい中サイズの殻の最大幅は21~26ミリとかなり大きめ。特大に至っては「32ミリ以上」で、育つには「10年くらいはかかる」(天塩支所)そうです。うま味を蓄えながらじっくり育つからこそ、だしの深みが違うと言います。
ただ1985年の最盛期には、600トンを超えた水揚げ量は、今では30トンほど。このため天塩川、サロベツ川、パンケ沼のうち、主漁場のパンケ沼は、2014年から原則禁漁となっています。天塩町と北るもい漁協天塩支所が資源回復のために、沼の底に砂を入れて、シジミにふかふかのベッドをつくる覆砂事業に取り組みながら、パンケ沼で試験操業しています。
今は町内での販売が中心となっていて、市場に出回る機会も減っているので、希少価値はめちゃめちゃ高くなっています。
ご当地ラーメンの「しじみラーメン」
天塩でシジミを食べる時に外せないのは、町内各店で通年提供している、ご当地ラーメンの「しじみラーメン」です。
従来、みそ汁か酒蒸しにするのが一般的だったシジミを「もっと気軽に食べてもらおう」と2011年に考案されたメニューです。スープはシジミの風味を生かすため塩味であることが条件。シジミの仕入れ値が上がっているので、ほとんどもうけはないとか。それでも「地元の味」として、各店提供してくれています。
道の駅てしお レストラン
しじみラーメン考案チームの会長を務めていた武田国広さんが経営するのが「道の駅てしお」のレストラン。夏には売り上げの4割をしじみラーメン「しじみ潮ラーメン」(1000円)が占めるそうです。
武田さんによると、漁が始まって生シジミが出回る季節は「食感がぷりっとしていて格別」とのこと。本格的な漁期は6月から9月上旬くらいまでですが、うまくタイミングが合わなくても大丈夫。「冷凍シジミの方がうま味がぐっと増す」そうですよ。
ほかにも「作り置きはしないで、必ず揚げたてを出す」というザンギも人気(7分ほど待つので時間に余裕のない人は事前に予約してください)。フライにしたホッキが入った「北寄カレー」も評判とのこと。
レストラン内の売店
「とにかく味が濃い」という天塩のシジミを使った、オリジナル商品を販売しています。しじみラーメン考案チームによる「しじみ醤油」もあり、一滴垂らすとぐっとうま味が増しますよ。
道の駅 SHOP天塩の國
魚介類や乳製品、地元の宇野牧場がつくったスイーツなど天塩の地場産品を買うことができます。北るもい漁協天塩支所が販売するインスタント乾麺「天塩しじみラーメン」もお土産用として人気だそうです。
自動販売機で24時間購入可
また、しじみラーメンやサケトバ、チーズなど約40種類を取り扱う自動販売機もあり、24時間いつでも買うことができます。
てしお温泉夕映
みんなでいろんなシジミ料理を味わいたいという方にオススメなのは、「てしお温泉夕映」のレストランです。
天塩産シジミを使った「ラーメン」「パスタ」「釜飯」「うどん」をランチ、ディナーともに楽しめます。いずれもシジミのうま味たっぷりで、食べ応え十分。勝俣真人料理長が「何度も試作して完成させた」という釜飯は、客の目の前で道産ななつぼしをシジミから取っただしでじっくりと炊きあげる自信作。出来上がりまでに30分ほどかかります。
「もっと気軽に」という方には、シジミ料理の王道しじみ汁(大、400円)もあります。定食メニューのみそ汁を200円追加で、しじみ汁(小)に変更できるのもうれしいサービスです。
夕映は、日本海を望む温泉宿泊施設で、日帰り入浴も受け付けています。泉質は「昔はもっとキツかった」というアンモニア臭がする茶褐色の非常に珍しいナトリウム-塩化物強温泉で、お肌がすべすべになります。2階にある浴室からは、利尻富士や日本海に沈む夕日の絶景を見ることができます。
日本海沿岸を走る国道は、「オロロンライン」と呼ばれる日本海の絶景が楽しめるルートです。これから北海道は、非常によい季節を迎えますので、天塩へのシジミ飯ドライブを楽しんでください。沿岸バス(羽幌)で行くゆったり旅もオススメです。
(おわり)
150年前からあった北海道三大グルメ~①絶品「蝦夷の三絶」とは?〈編集長☆発〉
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