
国際的なマウンテンリゾートとして人気を集める、ニセコ東急グラン・ヒラフスキー場(俱知安町)。同スキー場は今季、最新鋭モデルのゴンドラの運行を始め輸送力を大幅にアップさせたほか、レストランもリニューアルし、利便性や楽しさが一層、増しています。今後、新ゴンドラの山頂駅2階へのレストランの新設や、リフト2基の更新も予定しており、その魅力にさらに磨きがかかりそうです。
目次
輸送力1.5倍、シートヒーターやWi-Fi完備、揺れなく快適な新ゴンドラ

新ゴンドラは、ふもとから標高813メートルの山頂駅を結ぶ全長1677メートルの「エースゴンドラ」。10人乗りで、シートヒーターとWi-Fiを完備しています。スキー板やスノーボードをキャビン内に持ち込むことができ、床にはスキーを差し込むスレッドが付いています。乗車時間は5分ほどですが、シートヒーターがあるので寒さを感じることもなく、また、静かで揺れもほとんどありません。Wi-Fiのおかげで、乗車中にリアルタイムでSNSの更新もでき、快適に過ごすことができます。


これまでこの区間を運行していた国内最古のクワッドリフト「センターフォー」に比べ、輸送力は1.5倍の1時間当たり2800人となりました。以前はリフト乗り場に乗車待ちの長い列がありましたが、今はそれもほぼなくなり、スムーズに進みます。
ゴンドラの乗降場からゲレンデに向かう一部の床面には、スノーマット「PIS-LAB(ピスラボ)」が使われており、チェアスキーの利用者もピスラボを伝って、介助なしでゴンドラに乗り降りすることができます。

今冬の営業終了後、山頂駅の2階には、レストランを整備します。全面ガラス張りで、羊蹄山を一望でき、正面には絶景テラスも設置します。ライブ感のあるオープンキッチンやアイランドバーカウンターを備え、カフェタイムにもアプレスキーにもぴったりな空間になりそうです。

また、エースゴンドラの輸送力が増強されたことで今後、さらにそこから上に登る2人乗りの「エース第3リフト」を4人乗りフードリフトに更新し、輸送力を現在の2倍に向上させます。さらに、キングゴンドラから登る4人乗りの「キング第3リフト」は2025年12月をめどに、6人乗り高速リフトに架け替え、混雑緩和を図る計画です。
レストラン・バー「sanshoku」1日中スノーリゾートを楽しめる拠点に

一方、キングエリア・マウンテンセンター2階のレストランは今季、リニューアルし、レストラン・バー「sanshoku(サンショク)」に生まれ変わりました。大きな窓からは羊蹄山と広大なゲレンデを眺望でき、朝からナイターまで1日中、スノーリゾートを楽しむことのできる新たな拠点となっています。

サンショクの営業はゲレンデオープン前の午前8時から。エスプレッソやカフェラテでお腹を目覚めさせたら、クロックムッシュやヨーグルトグラノーラで1日のパワーをチャージしましょう。午前11時から午後3時までのランチタイムは、ステーキやハンバーグ、ザンギなどボリューム満点のメーンディッシュを選べるプレートメニューと、焼きたてのピザを用意しています。

午後3時から7時のアプレタイムには、ビールやワイン、ウイスキー、ジン、シャンパンなどのアルコールメニューに合わせ、パテ・ド・カンパーニュやフィッシュ&チップスなどのフードを提供しており、夕方にはナイターの照明に照らされ、幻想的にきらめくゲレンデを眺めながら、くつろぐことができます。

サンショクという名前には、2つの意味があります。モーニング、ランチ、アプレスキーと、それぞれの時間帯によるメニューや風景を楽しめる「3食」。もうひとつ、羊蹄山とゲレンデの山の魅力を感じながら食事を楽しめる「山食」の意味も込めました。
今季はプレオープンとして営業。2025年夏シーズンにはフルリニューアルし、さらにバージョンアップする予定です。
雪質と自然を保全へ再エネ転換、「雪発電」実証実験も

ニセコ東急グラン・ヒラフスキー場の最大の魅力は、パウダースノーと呼ばれる上質な雪質です。この雪質とニセコの雄大な自然を守るため、同スキー場を運営する東急不動産は、スキー場で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を実現させています。ゴンドラやリフト、夜間照明などのスキー場設備だけでなく、レストランや売店なども再生可能エネルギーに転換。さらに、豊富な雪資源を活用した「雪発電」の実証実験にも取り組んでおり、環境への負荷を減らすよう、歩み続けています。

実証実験は、東急不動産と研究機関の東急不動産R&Dセンター、電気通信大学が共同研究契約を締結し、同大機械知能システム学専攻の榎木光治准教授が中心となり、俱知安町の町有地などで、2023年度から実施しています。

雪発電には、高温熱源と低温熱源の温度差で駆動する発電機「スターリングエンジン」を利用します。バイオマスボイラーでウッドチップを燃焼させて高温熱源とし、そこで温められた不凍液がパイプを通りながら雪で冷やされ、低温熱源となります。エンジン内部には中心部に磁石のあるシリンダーがあり、シリンダーにヘリウムガスを充填し、上部に高温熱源、下部に低温熱源を配置すると、ヘリウムガスが膨張と収縮を繰り返し、磁石が共振して安定的に交流電気を生み出すことができます。
23年度に1.0kWだったエンジンの発電能力を24年度は7.0kWに拡大したことで、1日で最大168kWhの電力を発電できるようになりました。冬季の一般家庭の使用電力が1日当たり平均14.2kWhなので、約12軒分の電力を供給できる計算です。


不凍液が通るパイプは地面に埋設。ロードヒーティングと同様、積もった雪が溶けるので、除雪が不要になります。23年度は3メートル四方の地面で実験していましたが、24年度は装置を設置した倉庫の屋根の3メートル四方にもパイプを通し、屋根に積もった雪が溶けた融雪水を集めるシステムを導入。その水をろ過する装置も設置しました。これによって、発電と同時に水も得ることができ、水不足の解決にも一役買うことができる可能性が高まりました。

榎木准教授は「豪雪地帯にとってやっかいものの雪を資源に変えることができます。電力を生み出す一方で、融雪によって除雪や屋根の雪下ろしがいらなくなるというメリットもあります」と話します。コンパクトなため、そのままトレーラーなどに乗せて移動させることも可能で、「冬場の自然災害などの際の活用も期待できます」といいます。
東急不動産ホテル・リゾート開発グループのグループリーダー白倉弘規さんは「グラン・ヒラフは、ニセコの雄大な自然環境とパウダースノーのおかげで、名だたるスノーリゾート地になっています。電気をつくるために化石燃料を使うのではなく、木質バイオマスや雪の力を活用することができれば、環境への負荷を一層減らすことができます。当社は『環境先進企業』として、ニセコのパウダースノーを守る取り組みを進めていきたいと考えています」と話しています。