北海道 食と観光のWEBメディア

Language

Language

北海道観光情報サイトトリップイート北海道

テーマから探す

キーワードから探す

2025.03.06

「ガストロノミーツーリズム」北海道・厚岸町の歩み紹介~食文化を伝え地域活性化~検証事業報告会から㊤〈PR〉

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

 地域ならではの食を提供する「ガストロノミーツーリズム」が近年、注目されています。単においしいものを食べる「美食」ではなく、食材や料理の背景にある歴史や文化、自然、食材や料理のつくり手とそのこだわりなどの食文化に触れてもらうことで、その土地のファンを増やし、地域活性化につなげようという狙いがあります。北海道観光機構は本年度、道内のガストロノミーツーリズムの可能性を探る検証事業を実施し、2月下旬に札幌市内で報告会が開かれました。そこで紹介された厚岸町の取り組みについて紹介します。

北海道に広がる「食」を軸にした観光振興

 観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、「訪日外国人が訪日前に最も期待していたこと」のトップは、「日本食を食べること」。国連世界観光機構(UNWTO)は2021年にガストロノミーツーリズムに関するガイドラインを発行したほか、2015年以降はガストロノミーツーリズム世界フォーラムも開催しています。外国人に限らず、旅行者にとって旅先での食事や名物グルメ、食材などに触れることが、大きな楽しみの1つなのは、言うまでもありません。1次産業が盛んで、「食の宝庫」ともいわれる北海道には、ガストロノミーツーリズムの大きな可能性が潜んでいます。

厚岸特産のウイスキー&カキを観光資源の柱に

 報告会では、厚岸町の取り組みが紹介されました。厚岸町は釧路市と根室市のちょうど中間ほどに位置する、人口約8200人の漁業と酪農のまちです。厚岸観光協会は2023年度、厚岸ウイスキーやカキなどの特産品を活かした観光地づくりを進め、地域活性化を図る「ウイスキーツーリズム推進事業」をスタートさせました。

 まず、テレビ番組などに出演するフレンチシェフの下国伸さんと、下国さんに師事した厚岸町出身のシェフ平良木隆司さんを招き、料理研修会を開催。カキやアサリ、地元産牛乳、厚岸のウイスキー「牡蠣の子守唄」などを使ったスープカレーやボンゴレスパゲティのレシピを、町内の飲食店や食品加工業者、高校生らに伝えました。

 24年度には、旅行関係者を招いたモニターツアーを実施。参加者は厚岸市場の競り、ウイスキー蒸溜所「厚岸蒸溜所」や関連施設の視察、カキやアサリなど地元食材を使った道の駅コンキリエの昼食、地元ホテルが提供するカキのコース料理の夕食などを体験しました。

 これを受け、近畿日本ツーリストのグループ企業「クラブツーリズム」が、ツアーを造成。厚岸蒸溜所や厚岸市場の競りの見学、ウイスキー3種の飲み比べが付いたカキづくしの夕食などを楽しむ1泊2日のツアーを今年2月に11万9000円で発売しました。

 ツアーのガイドは、38年間厚岸漁協に勤務し、21年から観光協会の事務局長を務める安藤義秀さんが務めます。安藤さんは、漁協勤務の経験も踏まえ、厚岸のカキの特徴や養殖の技術、歴史などについても案内します。安藤さんは「モニターツアー参加者は、厚岸の名前は知っていても、産業などについての知識がなく、カキの養殖や出荷の現場などを知って『厚岸にはカキのものがたりがある』と喜んでくれました」と話します。

地元でしか楽しめないマリアージュ体験

 厚岸蒸溜所のウイスキーは、ピート香の強いアイランドモデルの「ピーテッド」。本場のアイラ島では、特産の生カキにウイスキーをかけ、マリアージュを楽しむ食文化があり、これを厚岸でも体験してもらいます。厚岸町内でしか飲むことのできない町内飲食店限定のウイスキー「牡蠣の子守唄」も紹介し、「町内でも買えず、厚岸に来ないと飲めない」と教えます。これらの地元ならではの体験やエピソードを伝えることで、地域の食の魅力を身近に感じてもらう工夫をします。

 また、厚岸観光協会は2月、旅行サイトを運営する「エアトリ」の子会社「かんざし」(東京)と観光・地域振興に関する包括連携協定を結びました。今後、カキやウイスキーといった食の観光資源についての情報発信についても期待が高まっています。

 このほか、絶滅危惧種に指定されている町の名を由来とする塩生植物「アッケシソウ」の再生や、ウイスキーの製造工程で出るピートの絞りかすをえさにして育てた「オータイト牛」など、厚岸には観光資源になり得る素材がまだまだ埋もれています。安藤さんは「ストーリー性のある素材を育てていきたい」としています。

道内6圏域ごとに、実現に向けた具体的な戦略も模索

 また、検証事業では、道内を①道南②十勝③釧路・根室④道央⑤オホーツク⑥道北-の6圏域に分け、それを食べるためにわざわざ行く価値のある食材や料理「デスティネーションフード」を探し、それを核に各圏域でガストロノミーツーリズムを進めるための具体的な戦略や課題などについて探りました。

 道南のデスティネーションフードは「真昆布」。鹿部町を舞台に、昆布倉庫の見学や地元漁協の女性部が講師を務める「浜のかあさん地元料理体験」、昆布アート体験など地元住民と交流できるプログラムの実現性を探りました。

 十勝のデスティネーションフードはチーズやスイーツ。酪農地帯に点在するチーズ工房を巡る「チーズの道」やファームレストランでの食事、地元素材を使った菓子メーカーや菓子店のスイーツ巡りに加え、夜には「北の屋台村」のグルメや市内各所にあるモール温泉を楽しむツアーを検討しました。

 釧路・根室のデスティネーションフードは、炉ばた焼きや海鮮丼、カキ、厚岸ウイスキーなどです。これらのグルメを楽しみながら、カキの競りや水産物の水揚げ、ウイスキー工場などの見学を通して、地域の自然や文化について学びます。

 道央は、後志管内の飲食店が発案し提供している「しりべしコトリアード」がデスティネーションフード。小樽は洋食文化が発達しており、新鮮な海産物と農産物に恵まれていることから、毎年冬にフェアを開催し、参加飲食店がそれぞれ、地元の魚介類や野菜、すり身、道産の乳製品などを使った料理「コトリアード」を提供。小樽市では学校給食でも提供されるなど地元に浸透してきており、これを軸にしたツアーを検討しました。

 オホーツクは北見焼肉やカクテル、流氷開けのオホーツクの海の幸などをデスティネーションフードに設定。これらを味わいながら、ハッカの栽培やタマネギなどの農産物の生産などについて学び、周囲の豊かな自然を活用したアドベンチャーツーリズム体験も組み合わせます。

 道北のデスティネーションフードは、留萌のニシンや数の子、増毛の日本酒国稀。ニシン漁とともに発展してきた留萌の歴史を学び、ニシンや数の子と国稀を味わいます。ニシン番屋や酒蔵を見学するほか、日本海沿岸のオロロンラインからの夕日も楽しむことができます。

 検証事業では、この6圏域のコンテンツの強みや価格帯、販売促進策などについて具体的な戦略案を探りました。 

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

トリップイート北海道

北海道新聞社が運営する、食と観光に特化したWEBメディアです。 北海道には、四季折々の美しい自然と多彩なアクティビティー、新鮮な食材、地域自慢の料理と酒があります。そんな魅力たっぷりな北海道の楽しくて、おいしくて、なるほど!な情報を、担い手たちの情熱と共に発信します。

当サイトを英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語に翻訳することができます(一部のリンク先ページを除く)。翻訳は機械的に行われるため正確に翻訳されない場合があります。十分ご理解のうえご利用ください。

お問合わせ

株式会社 北海道新聞社
〒060-8711 北海道札幌市中央区大通東4丁目1

食と観光

PAGETOP