
【幕別】3年前に惜しまれつつ閉店した老舗菓子店「杉野菓子店」(本町122)が復活することが決まった。東京でIT会社を経営する韓国人の梁泰植(ヤンテシク)さん(55)がのれんを引き継ぎ、6月にもオープンする。梁さんは「チャレンジの機会を頂いた。歴史のある菓子店を引き継ぎ、町民や周りの店舗と街のにぎわいをつくりたい」と意気込んでいる。
同店は1929年(昭和4年)に創業。3代目の杉野洋子さんが体調を崩したため2022年3月に閉店したが、洋子さんと義理の娘の留美子さんはその後も「創業100年を目指したい」と店を継いでくれる経営者を探していたという。
道内に新たな事業の拠点を持とうと、昨年秋から各地を巡っていた梁さんは、食材が豊かな十勝で起業を模索。同店の存在を地元の不動産会社を通じて知り、3月に杉野さんらと会って賃貸契約を交わした。4月中に運営会社「TOKACHIBARON」を設立する。
同店は木造2階建て。今後、改装工事を行い、町の空き店舗対策事業の補助金を活用する予定。オープン後は看板商品だったクレープ生地のスイーツ「ねこの座布団」を復活させる。東京で長年レストランを経営するフランス人シェフと共同で、十勝産のジャガイモを使ったスイーツも開発中だ。梁さんは「ストーリー性のある、美しくておいしい交流サイト(SNS)で映えるスイーツを開発したい」と目を輝かせる。
梁さんは今後、幕別に移住し経営に当たる。12日に事業の継承を発表した梁さんは「韓国人で受け入れてくれるのか不安だったが、町民の皆さんが温かく迎え入れてくれた。まずは創業100年を目指して頑張りたい」と話した。 (安達杏奈)
(北海道新聞2025年4月13日掲載)