【俱知安】岐阜県飛騨地方の築約130年の古民家の移築が、町ひらふ地区で完了した。香港資本の「ザ・パビリオンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツ」が進めるリゾート構想の一環。職人が伝統工法で復元し、レストランやバーが入る管理棟とする。リゾート全体の開業は2024年を目指す。
古民家移築は、外国人客らに国際リゾートのニセコ地域で日本文化に触れてもらう狙い。空き家となった民家の保存、再生に取り組む岐阜県高山市の不動産会社と連携し、昨年5月ごろ着工、今年7月に一連の作業を終えた。
1890年代に同市内に建てられた木造2階建て延べ460平方メートルの古民家を現地で解体、40トンの木材を輸送。同市の宮大工がくぎを使わずはりや柱を組み直した。当時の構造を生かしつつ内部のレイアウトを変え、外観は窓を増やすなどモダンな印象にした。
ケヤキなどの古材には、解体前に目印として付けたいろは順のかな文字のほか、いろりから出たすすの跡が見られ、匠(たくみ)の技や生活の名残を感じられる。
同社が開発を進める20ヘクタールの大型複合リゾートは、コンドミニアム19棟や別荘分譲地24区画などからなる。古民家は宿泊棟正面に建ち、1階に受付やレストラン、2階にバーなどが入る管理棟として稼働する。レストランは調理作業が見えるオープンキッチンで、地元食材を使う料理や、飛騨を含む各地の地酒を提供する考え。宿泊者以外も利用できるようにする。同社によると、総投資額は100億円規模。移築費は明らかにしていない。
同社は来年にも同じ飛騨地方から古民家をもう1棟移築し、お茶や生け花の体験ができるスパ棟とする。隣接地には温浴施設を新築し、管理棟も含め24年に開業予定。同社の小野翠・日本統括マネジャーは「一帯が木々に囲まれた静かな雰囲気で、古民家がなじむ。日本を好きになり、他の地域も訪れたくなる体験を届けたい」と話す。
現在、レストランの運営業者を募集中。事業者向けの内覧などの問い合わせは同社のメール(info@pavilionshotels.com)へ。(加藤遥花)
(北海道新聞2022年10月13日掲載)