オホーツク管内斜里町は、2020年まで18年連続でサケの水揚げ日本一を記録してきた。昨年は不漁に苦しんだが、今年の定置網漁は活況を取り戻しつつある。旬の秋サケを求めて同町に足を運ぶと、逆風に負けない漁業者や町民の姿がそこにあった。(鈴木雅人)
連休明けの11日早朝。沖合の定置網をおこし、取れた秋サケを船倉に入れた船が、町内の斜里漁港に次々と横付けされる。サケは斜里第一漁協荷さばき場の屋根付き岸壁に置かれた選別台に移され、大きさや品質で分けられていく。
同日に約10トン、約3千本を水揚げした第38盛春丸の船員遠藤義浩さん(61)は「不漁だった昨年より今年の漁はいいね」とほっとした表情を見せた。
網走海区漁業調整委員会がまとめた10日現在の漁獲量では、斜里町内の2漁協のうち、斜里第一漁協が4628トン、ウトロ漁協は2283トン。それぞれ前年同期比で180%、250%となっている。
同町の漁獲量は09年の3万2266トンをピークに漸減している。21年は5041トンで、自治体別の首位の座を宗谷管内枝幸町に譲った。漁獲量の減少について、道立総合研究機構さけます・内水面水試(恵庭)は「知床沖の水温上昇、回遊経路の変化、経路上の栄養状態など海の環境が変わったのが原因」とみる。
町と2漁協、網走漁協は危機感を募らせ、自然産卵による「野生魚」を増やす取り組みを5年ほど前から始めている。遺伝的に環境の変化に強い野生魚の自然産卵を促そうと、川の魚道を確保し、河川保全に力を入れる。地元の増殖事業協会も回帰率調査でデータ収集を始めた。
町水産林務課の森高志課長は「従来の増殖事業を維持しながら、より環境の変化に強いサケの育成に努め、長期的な資源確保を進めたい」と語る。
9月上旬に始まった漁は11月末まで続く。斜里第一漁協の馬場浩一組合長(67)は「今は漁期の中盤の最初で、少し水揚げが切れてきた感じもあるが、この先もう一度増えてくるんじゃないか」。
地元は人員や輸送トラックの不足、燃料代の高騰、観光船の事故と厳しい状況にさらされている。馬場組合長は「秋サケ漁の好転が、観光や町民の気持ちの張りにもつながってほしい」と期待をかける。
〈これが旬!〉「男しゃく」ほくほく*檜山管内今金町*大雨で収穫に影響 品質維持に懸命
*今年も「知床鮭ウイーク」展開*町内飲食店が特別メニュー
オホーツク管内斜里町などは「鮭(さけ)のまち」として、2020年からキャンペーン「知床鮭ウイーク」を展開している。今年も17日までの1カ月間行い、ウトロの4ホテルで地元のサケによる料理を提供。水揚げや遡上の見学、サケを学ぶ講座も開いた。
併せて、趣旨に賛同した町内飲食店は地元産の秋サケを使ったメニューを特別に提供している。宿泊施設「しれとこくらぶ」(斜里町文光町41、電話0152・23・1844)の1階「喫茶年輪」は、11月中旬までサケのグラタン、ソテーのほか、予約制でちゃんちゃん焼きも出す。
2代目の砂山裕子さん(52)は「旬のサケをおいしく料理し、家庭でもアレンジして試してみてほしい」と語る。
秋の味覚を楽しむ恒例の「しれとこ産業まつり」は、コロナ禍のため3年連続で中止になった。観光船事故による観光への影響に触れながらも、町内の飲食店関係者の一人は「来年にはジャガイモなどの農産物とも組み合わせ、町の誇りであるサケの新しい料理を飲食業の仲間と提供できれば。地域みんなの利益を目指したい」と意欲的に語る。
(北海道新聞2022年10月20日掲載)
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