札幌市中央区の桑園地区に市内最大級のクラフトビール醸造所が開業し、併設のビアバーなどで提供を始めた。運営するのは元札幌市職員ら3人が結成した合同会社「札幌醸々(じょうじょう)」。代表社員3人は胆振東部地震の被災地復興支援ビールづくりなど、ビールへの思いと経験をそれぞれ持っており「地域に根ざしたビールで街を盛り上げたい」と夢を膨らませている。
醸造所は「ストリートライトブリューイング」(北10西19)。マチを明るく照らしたい、と「街灯」の英語名を付けた。
3人は北海道信用保証協会などの協力を得ながら111の個人と法人の出資を受け、市中央卸売市場に近い倉庫を改装。年間100キロリットルを生産できる醸造設備を約9千万円で整備した。1月末に製造免許を取得し2月に醸造を開始。同月末にビール提供を始めた。
3人のうち宮口晃一さん(36)は元札幌市職員。胆振東部地震の被災地支援で胆振管内厚真町産のハスカップを使ったビール造りに携わった。さらに米国ポートランド州立大でまちづくりの人材育成プログラムに参加し「約70カ所ある醸造所が街に溶け込んでいる」様子を見て、お酒を起点にした地域活性化に取り組もうと決意。2020年3月に市役所を退職した。「ビールが人の縁をつなぐポートランドの姿に憧れた」
同じく代表社員の大阪匡史さん(50)はコピーライター出身。札幌市とポートランド市の姉妹都市60周年記念ビールなどビールによる地域活性化に取り組み、宮口さんとは厚真町のビール企画で知り合った。はこだてビール(函館)で醸造を経験し、道内外の醸造所立ち上げにも携わった川村洋平さん(33)を含む3人で21年8月に会社を設立、開業準備を進めてきた。
ビールはフルーティーな香りの「ペールエール」が中心で、併設ビアバーでは最大12種類を1杯600円~千円で提供。ホップや酵母の種類などを毎回変え、来店する度に違う味を楽しんでもらう。持ち帰り用の缶ビールもある。宮口さんは「ビールが得意ではない人も飲みやすい味。地域を明るく照らし、人が集まる場所にしたい」と話す。ビアバーは火、水曜定休。市内のビアバーや酒販店にも出荷している。(加藤祐輔)
(北海道新聞2023年4月5日掲載)
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