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2023.10.03

限定ビールやクラフトビールを札幌の〝聖地〟創成イーストで楽しむ~札幌市内ビール巡り㊤ 

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

「月と太陽BREWING 本店」では、ビール単品のほか、飲み比べセットや飲み放題もあります

 近年、クラフトビールの醸造所が急増し、札幌でも気軽に飲める飲食店が増えています。30年ほど前に「第一次地ビールブーム」ともいえる流行期があり、道内各地でも地ビールが誕生しましたが、徐々に下火に。10年ほど前から、アメリカのクラフトビール流行を受け、国内でも大手ビール4社以外の少量生産ビールの愛好者が増えています。1回の仕込みごとに、原料や味わい、香りを変えて醸造するブルワリーも多く、その種類は数えきれません。札幌市中心部にあるクラフトビールなどを提供している飲食店を巡ります。さっそく、国内のビール製造発祥の地「創成イースト」から始めましょう。

「限定」の貴重な1杯 ジンギスカンとともに 
サッポロビール園

かつて大麦を発芽させる「麦芽工場」として使われていた「開拓使館」
かつて大麦を発芽させる「麦芽工場」として使われていた「開拓使館」

 日本のビール発祥の地・札幌。ビール製造のため、大麦を発芽させる製麦工場として使われていたのが、1890年(明治23年)築のサッポロビール園の赤レンガの建物「開拓使館」です。現在は1階が「トロンメルホール」、2、3階が「ケッセルホール」として、生ビールとジンギスカンを提供しています。ビール園にはほかにも3つのレストランがあり、観光客や市民にビールのおいしさを伝えています。

サッポロビール園でしか飲めない「ファイブスター」の生
サッポロビール園でしか飲めない「ファイブスター」の生

 サッポロビール園でしか飲めない貴重な1杯が、「ファイブスター」。このビールは1967年に発売されたプレミアムビールでしたが、71年に戦前の人気ブランド「ヱビスビール」が復刻発売され、72年でいったん終売。2006年にサッポロビール園での限定として、製造を再開しました。ドイツ風のこくのある味わいのラガーで、しっかりした苦みとすっきりした飲み口が特徴。期間限定で缶で販売されることがありますが、生で飲むことができるのは、サッポロビール園のみです。5つあるレストランのうち、ポプラ館以外の4店で提供しています。

 「ガーデングリル」では「開拓使ビール」も提供しています。サッポロビール発祥の地のサッポロファクトリーで創業時と同じ水を使って製造しているビールで、アルトとピルスナーの生を飲むことができます。

 もちろん、全店で北海道限定のサッポロクラシックやサッポロ生ビール黒ラベルなど、定番の味もしっかり管理された最高の状態で提供しています。

不動の人気のジンギスカンとビール
不動の人気のジンギスカンとビール

 フードのメーンメニューはジンギスカン。ガーデングリル以外の全店では、主にオーストラリア産のラムを使用。枝肉を仕入れ、余分な脂肪や筋などを職人技で丁寧にトリミングしています。ドリップもしっかり除去、品質管理を徹底することで、臭みやくせのない状態に仕上げます。また、店の席数が多く、肉の提供量が多いため回転が速く、鮮度のよい肉を提供できるといいます。

 たれは、オリジナルの「秘伝」。非加熱のタマネギやレモンを使っており、要冷蔵で、テーブルの上に備え付けにせず、来客のたびに必要な分だけ器に入れて提供しています。甘みと酸味のバランスが良く、フレッシュな風味で肉をさっぱりと食べられます。「サッポロビール園特製のたれ」として販売もしています。

大きな仕込み釜ケッセルが設置されている「ケッセルホール」
大きな仕込み釜ケッセルが設置されている「ケッセルホール」

 ケッセルホールとトロンメルホールは焼いてたれに付けて食べるスタイルがメーン。ケッセルホールは、開放感のある吹き抜けのホールで、実際に九州の門司工場で使われていたビール仕込み釜の「ケッセル」が鎮座。ガス火で北海道の形をしたジンギスカン鍋で肉を焼きます。トロンメルホールはIHロースターで煙や匂いが出ないようになっています。IHロースターの周りの枠はジンギスカン鍋と同様、ちゃんと北海道の形になっています。麦芽工場だった時に、大麦を水に浸して発芽させる装置が「トロンメル式発芽缶」が設置されていたことから、この名が付きました。

 開拓使館を眺めることのできる「ライラック」は肉をたれに漬け込んだ味付けジンギスカンが楽しめます。しょうゆや塩、ハーブ、にんにく塩などバリエーション豊かです。バルコニー席もあり、夏には風に当たりながらビールとジンギスカンを楽しむことができます。

 天井が高く、ゆったりした造りの「ガーデングリル」からは、北海道遺産にも選定されている赤レンガ造りの「サッポロビール博物館」を展望できます。ホールは壁一面がガラス張りで、個室もあり、すべての部屋から博物館を望むことができます。ここでは、母乳と草を食べて育てた後、穀物を与えた「グレインフェッドラム」を提供。くせがなく、マイルドな味わいが特徴で、やわらかくジューシーなジンギスカンです。季節の海鮮や野菜のグリル料理や一品料理も充実しています。  「ポプラ館」では、配膳ロボットを導入。注文はタッチパネル、ドリンクもセルフサービスで、人との接触を最小限にでき、食べ飲み放題を楽しむことができます。

住所/札幌市東区北7条東9丁目サッポロガーデンパーク内
電話/011・742・1535
営業時間/午前11時半~午後9時(園内施設で異なります)
定休日/大晦日

看板の米国伝統料理で味わう オリジナルの1杯 
BUDDY BUDDY

創成川沿いに建つ趣のある赤レンガづくりの「BADY BADY」
創成川沿いに建つ趣のある赤レンガづくりの「BUDDY BADDY」

 札幌市中心部の創成川沿い、東側に建つレンガ造りの趣ある建物を目にしたことのある人も多いかもしれません。1950年代の古きよきアメリカを思わせる「BUDDY BUDDY」です。委託醸造している店オリジナルのクラフトビールのほか、シカゴのクラフトビールの樽生など、ほかではなかなか飲めないビールを、アメリカ南部の郷土料理とともに味わうことができます。

生で飲めるのは珍しいというグースIPA
生で飲めるのは珍しいというグースIPA

 店オリジナルのクラフトビール「ディックスno5」(320ミリリットルで950円、475ミリリットルで1200円)は、ホップ「カスケード」を使ったディープブラウンエールです。看板メニューのアメリカ南部のスパイシーな料理に合わせ、スタッフがアイデアを出し合いレシピを考案、委託醸造しています。香りが良く、苦みと甘みのバランスがとれていて、スパイシーな料理に負けない力強さです。

 クラフトビールのIPA人気の火付け役になったとも言われる米・シカゴの「グースアイランド」。BUDDY BUDDYでは樽生のグースIPAを仕入れています。ホップの香りが良く、苦みの強いIPAらしいビールで、生で飲むことができる店は珍しいそうです。320ミリリットルで700円、473ミリリットルで950円。

 店にはアメリカの代表的なビール「バドワイザー」(380ミリリットル、680円)の樽生も用意しています。缶やびんでは道内の小売店などで手にすることができますが、生はあまり見かけません。アメリカで製造、輸入した樽生で、現地に近い味わいだとか。

 このほか、ヒューガルデンホワイトなどの海外ビールの樽生、缶やびんのグースアイランドIPAやハイネケンなどもあります。また、グースIPAやステラ・アルトワ、バドワイザーの樽生、コロナ・エキストラなど7種類のビールの120分間飲み放題(3500円)も実施しています。

店オリジナルのクラフトビール「ディックス no5」(右)とグースIPA、看板メニューのジャンバラヤ(手前)、カキ料理
店オリジナルのクラフトビール「ディックス no5」(右)とグースIPA、看板メニューのジャンバラヤ(手前)、カキ料理

 看板料理は米・ニューオーリンズの郷土料理、ジャンバラヤとガンボ。ジャンバラヤ(1300円)はスペインのパエリアをルーツにした米料理で、鶏肉やソーセージ、エビなどとともにタイムやクミンなどのスパイスを効かせたトマトソースで米を炊き込んでいます。スパイシーな香りがビールに合います。

 ガンボ(dish千円、cup700円)はタマネギやセロリなどの香味野菜と肉、オクラなどが入ったスパイスとハーブたっぷりの煮込み料理で、ご飯が付きます。オクラは必須で、独特のとろみが付くそう。店長の太田吉信さんは「日本のみそ汁のように、店ごと、家ごとに味が違うと言われています」と教えてくれました。

 もう1つの看板メニューがカキ料理です。ホウレンソウ入りのバターでグリルしたオイスター・ロックフェラーやチーズとバターで焼いたグリルド・チーズオイスターなどを、3個千円から提供。冬になると、ニューヨークのオイスターバーのように、ケチャップや西洋ワサビを入れたカクテルソース、タバスコなどで食べる生ガキも登場します。

 「ケイジャン・フライドチキン」(3個700円~)もビールにぴったり。衣にスパイスを混ぜ込んだフライドチキンにはステーキ肉の肉汁からつくるクリームグレービーソースが添えられ、どぼんとソースにつけて食べます。「ケイジャン・フライドチキンステーキ」(千円)は鶏の胸肉を1枚まるごと揚げ、マッシュポテトが添えられています。

 タコスやピザの生地は店で手作りし、食材は季節によってできるだけ道産のものを使うように心がけているそう。太田さんは「現地に近い味わい。リアルな現地のおいしさを発見してほしい」と話します。

米国・ニューオーリンズのレストランを思わせる店内
米国・ニューオーリンズのレストランを思わせる店内

 店は築半世紀を超える元事務所を改装して利用。照明を落とした店内には、バドワイザーやグースアイランドなどのネオンサインが輝き、天井ではシーリングファンがゆっくりと回っています。映画で見る、アメリカ南部のレストランを再現したような空間。ニューオーリンズに行ったことのある太田さんは「エネルギッシュでありながら、人や音楽、食などの文化を大切にしているまち。そんな雰囲気や味を届けたい」と話しています。

住所/札幌市中央区北2条東1丁目2-3パラダイスビル
電話/011・271・8882
営業時間/午後5時~午後11時、金曜・土曜・祝日前は午前0時まで
定休日/なし
北海道内ブルワリーの直営店でクラフトビールを味わう~札幌市内ビール巡り㊥

全国各地の個性あふれる1杯との「一期一会」を 
モヤモヤベース

創成イーストの「M’s二条横丁」にある「モヤモヤベース」の店内
創成イーストの「M’s二条横丁」にある「モヤモヤベース」の店内

 創成川イースト、二条市場向かいの「M’s二条横丁」2階の一角にあるカフェ&クラフトビール「モヤモヤベース」は、秋田智幸さんが5年前に開店させたこぢんまりした店です。常時、5~6種類の国内のクラフトビールを味わうことができます。

カウンターには店主の秋山さんが好きな飛行機の模型が
カウンターには店主の秋山さんが好きな飛行機の模型が

 ビールは1~2週間でなくなり次第、新しいものと入れ替え、品揃えはその時々で変わります。サイズはスモール(250ミリリットル)とレギュラー(370ミリリットル)で、スモールは600~800円、レギュラーは1200~1500円程度のものが多いそうです。

 この日は、登別の「のぼりべつ地ビール鬼伝説 金鬼ペールエール フジロック2023Ver.」や東京の「VERTERE/Amni」、千葉の「KANKIKU BREWERY/SAKEKASU AMOOTHE 雄町-Cream Soda Style」など5種類がありました。「KANKIKU~」は日本酒の酒造メーカー「寒菊銘醸」が運営するブルワリーが、メロンシロップとアイスクリーム、日本酒の酒粕を使い、メロンソーダを表現したもの。秋田さんは「どのビールも個性豊か」と話し、メニューには「IPA」や「ペールエール」などそれぞれのビールのスタイルと度数、味や原材料の特徴などが記載されているので、好みで選んでとアドバイスします。

静岡の「Requbrew/Mint Green Sour」(右)と山梨の「UCHU BREWING/RESORT-Athena-」、チーズ盛り合わせと麻辣青豆
静岡の「Requbrew/Mint Green Sour」(右)と山梨の「UCHU BREWING/RESORT-Athena-」、チーズ盛り合わせと麻辣青豆

 山梨の「UCHU BREWING/RESORT-Athena-」と静岡の「Requbrew/Mint Green Sour」のスモールを、フードメニューから、北海道産チーズの盛り合わせ・4種(750円)と麻辣青豆(300円)をオーダーします。「UCHU」は一口飲むと、レモネードのようなさわやかな香りがします。度数は8・5%と高めですが、オレンジやライムなど柑橘系の香りが強く、さっぱりした印象です。鮮やかな緑色の「Mint~」は、モヒート濃縮フレーバーを使用しており、ミントとライムの香りが鼻に抜けます。ビールだと思って飲むと、脳が一瞬混乱しかけますが、二口、三口と飲み進めるとビールの苦みと香りも感じられ、暑い日にはぴったりの飲み心地です。

 チーズは共和町クレイルと東藻琴乳酪館、鶴居村酪楽館のカマンベールやスモークチーズなどをクラッカーと一緒に盛り合わせてあります。青豆を唐辛子で味付けした「麻辣青豆」はシビ辛味でビールと交互に、手が止まらなくなりそうです。フードはほかに、北海道産ジャガイモのフライドポテト(450円)や中札内産のえだ豆(400円)、北海道産コーンのポップコーン(300円)など、手軽なおつまみを中心に10種類ほど。

これまで店のタップにつないだブルワリーが記された日本地図
これまで店のタップにつないだブルワリーが記された日本地図
モヤモヤベースの看板
モヤモヤベースの看板

 壁には大きな日本地図が貼ってあり、これまでこの店のタップにつないだブルワリーの名前が記されています。その数、100を越えます。開店当初は酒店経由で購入していましたが、気になるブルワリーには直接連絡して仕入れるそうです。カウンターの上には、飛行機の模型が並びます。飛行機好きという秋田さんは「旅するように、全国各地のクラフトビールと一期一会を楽しんで」と話します。定番から限定醸造のものまで全国各地のブルワリーがリリースするビールのスタイルや種類は膨大。まさに、この店で出会える「一期一会」です。

 秋田さんは元真狩村職員。ベルギービールのおいしさに目覚め、その後、10数年前からクラフトビールにはまって、「好きが高じて店を出すことにした」そう。村職員時代は農業畑が長かったといい、3年前からは店のベランダにプランターを置いてホップの生産に挑戦。今年もお盆ころまで育てていたそうですが、残念ながら原因不明で枯れてしまいました。「お客さんからホップをもらったことがあり、手でもむと、ホップのいい香りがしたんです。ぜひ、ホップを収穫してビールに浮かべて飲んでみたい」と、自作のホップを使った「追いホップ」を夢見ています。

 ちなみに、「モヤモヤベース」という店名は、秋田さんが好きなテレビ番組の「モヤモヤさまぁ~ず」と「世田谷ベース」を掛け合わせたそうで、「どちらもゆるーい雰囲気の番組。店でもそんな感じでくつろいでもらえれば」。店内に流れるJ-pop音楽に身を任せながら、穏やかな秋田さんの人柄に触れるのも、お店の魅力の一つです。

住所/札幌市中央区南2条東1丁目1-6 M’s二条横丁2階
電話/011・839・3289
営業時間/午後2時~午後11時
定休日/不定休

ホテルのロビーに客席 ふらりと立ち寄って1杯 
よらさるSOSE

ホテル1階にリニューアルオープンした「よらさるSOSE」
ホテル1階にリニューアルオープンした「よらさるSOSE」

 創成イーストにあるホテル「plat hostel keikyu sapporo ichiba」の1階で営業していたクラフトビールを飲める「Beer&Bowl Ten To Ten」の運営を引き継いで9月下旬、リニューアルオープンしたのが、「よらさるSOSE」。タップ2種類と缶やびん入りのクラフトビールを、ビールに合うおつまみと一緒に楽しめます。

「SORACHI 1984」(左)と「ロコモーション」
「SORACHI 1984」(左)と「ロコモーション」

 タップは羊蹄山麓ビール(ニセコ町)の「English Pale Ale」(グラス800円)とサッポロビールの「SORACHI 1984」(同700円)の2種類。このほか、札幌市のストリートライトブルーイングの缶ビール6~7種類、羊蹄山麓ビールのびんビール数種類を、それぞれ900円前後で提供しています。

 「SORACHI」とストリートライトブルーイングの新作「ロコモーション」をオーダーしてみます。SORACHIはホップ「ソラチエース」を100%使い、柑橘系や森林のようなさわやかな香りと深い味わい。大手ビールメーカー製造で、「クラフトビール」というカテゴリーではないかもしれませんが、ビール好きの人の間でも高評価で、店のスタッフが相談して採用することを決めたそうです。ロコモーションは一口飲むとフルーティーですが、キレがありとても飲みやすく、クラフトビール初心者にも入りやすい味わいです。

「甘辛たれザンギ」(右)と「季節の揚げ野菜ピクルス」
「甘辛たれザンギ」(右)と「季節の揚げ野菜ピクルス」

 フードは、簡単に1人でつまめる10数種類を用意。お勧めという「甘辛たれザンギ」(500円)と「季節の揚げ野菜ピクルス」(500円)をお願いしてみました。ザンギは釧路のたれザンギをイメージしたそうで、片栗粉の衣がサクサクとしており、甘酢のさっぱりしたたれがかかっています。骨付きの手羽元を使い、ごろんとボリュームもたっぷり。スタッフの吉田みづ穂さんは「ビールに合うのは間違いなし。骨付きなので、がぶっとかぶりついてください」と言います。

 ピクルスは、野菜を1度素揚げしてから、マリネ液につけており、味がしっかりしみこんでいます。この日は、色も鮮やかなカボチャとナス、エリンギ、パプリカが2切れずつ。野菜は季節によって変わり、ズッキーニやビーツなどが入ることもあるそうです。揚げてあることで油とマリネ液がなじみ、揚げ出しのよう。マリネ液にはだしも入り、すっきりと食べやすく、またビールにも合います。

 ほかに、マヨネーズを控えめにし、牛乳などを加えて味付けした「厚切りベーコンと生胡椒のポテサラ」(400円)や「白糠産チーズのカプレーゼ」(600円)、「焼き枝豆」(350円)、「ねぎ油香る煮卵」(250円)など、手頃な値段のものが並びます。

クラフトビールの缶が並ぶカウンターの棚
クラフトビールの缶が並ぶカウンターの棚

 ホテルのロビーの一角にテーブルといすを置いて客席としており、道路に面して大きな窓があり、開放的な雰囲気。ホテルの中ではありますが、お客さんは地元の人が6割ほどを占めるといいます。手頃な値段と入りやすい雰囲気で、仕事帰りや近くに住む人がふらっと立ち寄るケースも多そうです。宿泊客の中では、特に外国人観光客に人気があるそうで、外食せず、コンビニでお弁当を買ってきて、SORACHIで一杯-というインバウンド客もいるそうです。

 運営を引き継いだ「さっぽろ創成社」代表取締役の本宮大輔さんは「店名の『よらさる』は『寄る』や『酔う』などをかけて付けました。気軽に立ち寄ってもらい、地域のコミュニケーションの場にもなれば」と話しています。

住所/札幌市中央区南3条東2丁目18-1 plat hostel keikyu sapporo ichiba 1階
電話/050・5236・5944
営業時間/午後5時~午後10時
定休日/月曜
北海道内外や海外産まで 多彩な銘柄のビールを楽しむ~札幌ビール巡り㊦

自社醸造の1杯を「北海道の旬」とともに味わう 
月と太陽BREWING 本店

二条市場近く、創成川沿いにある「月と太陽BREWING 本店」
二条市場近く、創成川沿いにある「月と太陽BREWING 本店」

 「北海道をクラフトビール王国へ」をキャッチコーピーに、創成川沿いのイーストからクラフトビールの魅力を発信しているのが、「月と太陽BREWING」です。白石区の自社醸造工場でつくった定番にゲストビールを加え、常時10種類を提供しています。

店の壁には、その日提供しているビールを紹介するプレートが掲げられています
店の壁には、その日提供しているビールを紹介するプレートが掲げられています

 イタリア料理店などで料理の腕を振るっていた森谷祐至さんが独立にあたり、「オリジナリティを出したい」と好きだったビールに着目。全国各地のブルーパブやブルワリーを訪ね、製造設備から原料の調達、ビール造りまでを研究し、2014年10月にビアバーとしてオープン。12月には酒造免許を取得し、翌年2月から自社醸造のクラフトビールの提供を始めました。

 現在は、白石区のブルワリーで300リットルのタンク9基、600ミリリットルのタンク3基で醸造しており、定番のピルスナーとペールエール、IPAの3種のほか、限定醸造も製造。OEM(委託製造)も受けており、これまで、札幌市清田区の26周年記念ビールや恵庭産のホップを使った「ガーデンフェスタ恵庭」のオリジナルビールなども醸造しました。道内の自治体や観光関係団体の依頼のほか、個人の発注も受けており、結婚式を記念して、味や原料、好みの香りや苦みなどを聞き取ってつくることもあるそうです。ビールは本店と札幌市中央区北3条西3丁目の「miredo店」で提供しているほか、缶や飲食店向けのタップなどで販売しています。

定番3種類の飲み比べ
定番3種類の飲み比べ

 自社の定番は、これに、その時々で原材料やフレーバーなどを変えた限定醸造の自社醸造のビールや、ほかのブルワリーから取り寄せたゲストビールが加わります。この日は、アイスコーヒーのようにすっきりとした飲み口の自社醸造の「コーヒースタウト」、江別のノースアイランドビールの「フォレストシャワー」など4種、神奈川・湘南の「サンクトガーデン」と横浜市の「横浜ベイブルーイング」の各1種類がありました。価格は、種類によって異なりますが、ハーフパイント(250ミリリットル)が750~950円、パイント(500ミリリットル)が1400~1800円。1種類150ミリリットルずつの飲み比べ(3種1800円、全10種5千円)もあり、120分飲み放題は4500円です。

羅臼産真ホッケを使ったフィッシュアンドチップス(奥)とポテトサラダ
羅臼産真ホッケを使ったフィッシュアンドチップス(奥)とポテトサラダ

 フードは季節によって変わりますが、定番のフィッシュアンドチップスや各種タコスなどがあり、おつまみは500円ほどから。パスタや主菜など温かい一皿は千円前後で、数人でシェアするのが良さそうです。

 3種飲み比べを定番3種でオーダーし、フィッシュアンドチップス(950円)とポテトサラダ(520円)もお願いしました。ピルスナーは色が淡く、軽快ですっきりした飲み口。ペールエールはモルトの甘みとホップの苦みのバランスが良く、IPAは苦みがあり、ビールらしい力強さを感じます。

 通常タラが使われることが多いフィッシュアンドチップスは、羅臼産の真ホッケ。タラよりも脂のりが良く、しっとりしています。添えられたソースはアラビアータソースでさっぱりしたトマトの味にニンニクが強めにきいていて、ホッケにぴったり。フライドポテトは下ゆでしたジャガイモを手で崩すことで、外はカリッと中はほくほくに仕上がっており、仕上げに振った塩加減も絶妙です。ポテトサラダは道産ジャガイモにツナが入り、黒コショウがアクセント。しっとりとした食感で、ビールが進みます。

 「旬のものを味わってほしい」という森谷さんの思いもあり、メニューは季節によって変わります。夏の間は、梅ソースで和えた道産のトマトとホタテの冷菜や道産野菜を使った「白いキムチ」など、元気な道産野菜がたくさん使われていました。定番のタコスにも、近く鹿肉の挽肉を具にしたものが登場します。

木目をベースにした明るい雰囲気の店内
木目をベースにした明るい雰囲気の店内

 森谷さんは「ビールは農作物」と言います。麦やホップ、水など原材料は土地の恵み。それらを使って、季節感や地場の特徴を表現していくのだそうです。また、「飲んだ人の笑顔のため工夫を重ねますが、それができるのは原料を作ってくれている農家さんがいるから。生産者の苦労を次につなげるためなら、苦になりません」と笑顔を見せます。

 創業時、設備メーカーも少なく、自分で図面を書いてステンレス製のタンクを発注したそうです。当初、店頭に醸造用の寸胴鍋を置いていたら、「うどん屋と間違われた」という逸話もあり、説明しても「クラフトって何」と聞かれるほどだったのが、愛好者も増え、日常的に飲む人が増えたと喜びます。「ビールは嗜好品。料理も作り手の私的な好みや感情、フィーリングが表れる。おいしいと言われると、うれしい。クラフトビールがもっと広まって、北海道が『クラフトビール王国』になれたら」と語ります。

住所/札幌市中央区南3条東1丁目3 アルファ創成川公園ビル1階
電話/011・218・5311
営業時間/午後5時~午後11時
定休日/年末年始(不定休)
ビールのまち・札幌を味わおう~「サッポロ・ビア・ホッピング」〈10/6~12/3〉~TripEat公式LINEで「友だち限定サービス」や「スタンプラリー」
ビールのまちさっぽろの魅力再発見「ビールと歴史・文化を味わう観光馬車」 9/7から運行
小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

トリップイート北海道

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