【上富良野】農産物卸アグリシステム(十勝管内芽室町)のグループ会社で、国内最大規模の有機農場を運営するトカプチ(同管内更別村)が、上富良野町内にワイナリーを立ち上げた。有機栽培のブドウを原料に、天然酵母で発酵させる自然派ワインを特徴とする。来年3月には町内産ブドウを町内の醸造所で仕込んだスパークリングを初めて販売する予定だ。
ワイナリー名は十勝岳連峰をイメージし、アイヌ語で神と山の尾根を意味する「カムイ・メトッ・ヌプリ」と命名した。富良野地方のワイナリーとしては4カ所目となる。
有機農業に力を入れるトカプチはブドウ栽培の適地として、十勝地方よりも日照時間が長く、寒暖差もある上富良野町に着目。2013年に土地を購入し、翌14年から栽培を始めた。現在、町内の7・5ヘクタールの畑で、十勝ワインで知られる十勝管内池田町で誕生した品種「山幸(やまさち)」を中心に育てている。
18年からは上富良野で収穫したブドウを岩見沢市の「10Rワイナリー」に持ち込み、委託醸造を開始。既にインターネットの通販などで流通しているが、上富良野町内での仕込み作業は今年が初めてとなる。
ブドウ畑に隣接する醸造所は、八角形の平屋建てログハウス(約200平方メートル)二つ。収穫したブドウを、イタリアから特注した陶器のつぼで発酵、熟成させ、びんづめなどを行う。先行販売するスパークリングと、赤ワイン2種類の計3種類のワインを販売する予定だ。
トカプチは現在、十勝管内本別町でもブドウを栽培し、同町で28年にもワイナリーを立ち上げる準備を進めている。今年は本別で収穫したブドウも上富良野町の醸造所に持ち込み、仕込みを行う方針だ。
上富良野町のブドウは7~9日に収穫、仕込み作業は8~10日に実施。ワイナリー責任者の遠藤智樹さん(46)は「今後、上富良野や富良野で販売を広げていきたい」と意欲を燃やしている。 (千葉佳奈)
(北海道新聞2023年10月7日掲載)