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恵まれた気候の下で切磋琢磨する造り手たち
温暖な気候に恵まれた後志エリアは、果樹園栽培が盛んな余市町や仁木町を中心に道内53あるワイナリーの約半数が集中している。さらなる新規参入も見込まれる中、個性豊かな新旧ワイナリーが、良きライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)しながら、より魅力的なワイン造りに心血を注いでいる。
創業から半世紀、国産の生ブドウにこだわる/北海道ワイン
1974年設立の北海道ワインは創業以来、国産の生ブドウにこだわる。90年代後半の赤ワインブームでは、増産が求められても頑なに輸入原料は使わなかった。ブームが去った後、大量のブドウを抱えて苦境に陥った農家からその多くを買い取ったのは、業界では有名な話だ。
「ワイン造りは農業であり、醸造会社はブドウ農家とともに生きるものだ」。2019年に92歳で亡くなった創業者で名誉会長の嶌村彰禧さんの信念を今も継承し、生産者の高齢化や後継者不足を解消するため、スマート農業の実証実験など新技術の研究にも積極的に取り組む。
北海道ワイン(小樽市朝里川温泉1の130) |
直売所では、ワインの試飲(有料、無料)がある他、ワインの試飲とおつまみが付いた工場見学プレミアムツアー(約90分、1500円、要予約)も開催している。 |
冷涼な環境を生かし「ここでしか造れない」を/NIKI Hills Winery
隣町の仁木町旭台。余市湾を臨むなだらかな丘の上に2015年、「NIKI Hills Winery(ニキ・ヒルズ・ワイナリー)」が開設された。準限界集落だった地域の離農者たちの畑は、8ヘクタールの美しいブドウ畑に生まれ変わった。
素晴らしい景色の中で、エレガントで香り高いワインを創り出すのは、太田麻美子さんとウィズリントン真理子さんの2人の醸造家。東京出身の太田さんは畑の開墾から携わり、ニュージーランド出身でフランスや米国などでの経験もあるウィズリントンさんは「日本の中で一番面白い場所」と2019年に仁木町にやってきた。
太田さんは、降り積もる雪に「本当にブドウ栽培に適しているんだろうか?」と何度も不安になったという。今は「冷涼な気候から生み出される酸味がほしくても加えられない地域もある。環境をプラスに捉えて、ここでしか造れないもの」を目指す。
話し合い、時には意見を戦わせながらのワイン造りをウィズリントンさんは「選択肢が増えることは、とても楽しい」と笑う。ワインを愛する2人が、繊細さの中に奥行きと複雑さを兼ね備えた「想像力をかき立てるワイン」を醸す。
NIKI Hills Winery(ニキ・ヒルズ・ワイナリー、仁木町旭台148の1) |
ホテルとレストランを併設し、ショップでは有料試飲などが楽しめる。ワイナリーツアーのほか、トレッキングなど多彩な日帰り体験ツアーを用意。コロナ禍を配慮し、会員制(登録無料)、事前予約制をとる。 |
北海道産ワインの歴史を刻む大地に吹き込む新たな風 ワインで地域興しを 農業王国の挑戦〈シリーズ企画ワイナリー03/十勝エリア〉
子供たちの遊ぶ畑でワイン文化の未来も育む/ワイナリー夢の森
「ワインの主産地で、曲がりなりにも関わって行けるのはうれしいですよ」 余市で幼稚園の理事長を務める大下聡さんがワイナリー夢の森を始めたきっかけは、子供たちの体験学習用に購入した3ヘクタールにも及ぶ畑を維持する「手段」だった。畑の一角にワイン用ブドウが植えられているのを見て、「資金源になる。みんなやってるから、できるだろう」と、16年からワイン造りを始めた。
最初は、地域の人に「余市で一番おいしくないワインだね」と笑われた。しかし、1年ほど前から評価されるようになり、人気が出てきた。期待され、楽しみに待ってくれる人が増えると「責任感が生まれるし、魂の入り方が違う」。
ワインのおかげで、ブドウやリンゴ、プルーンなど町の主要作物が実る畑は、子供たちの最高の遊び場となっている。栽培や収穫、ブドウの足踏み体験などを楽しみ、卒園時には、記念のワインが家族に贈られる。「夢の森」は、楽しい思い出と共に、ワイン文化の種を子供たちの心に蒔く。
ワイナリー夢の森(余市町豊丘町59の3) |
土日、祝日は、事前連絡があれば現地直売に対応する。電話0135・48・5736へ。 |
(TripEat北海道編集長 山崎真理子)
- ワイナリー・ヴィンヤードを訪問する際のルール&マナー
①無断で農園(ヴィンヤード)に立ち入らないようお願いします
②ワイナリー・ヴィンヤードのなかには見学・立ち入りが不可なところや、事前に見学の予約が必要なところもあります。予め電話やホームページで確認ください
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札幌・大通公園で7月1~3日に開催される「北海道 お酒と食のおいしいマルシェ2022」に出店予定のワイナリーを中心に、道内各地域を計5回にわたって紹介します。
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