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2024.01.09

〈北海道クラフトビール探訪〉②当別セブンズ・ブルーイング ワインのような食中酒 すべて手作業で

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

当別セブンズ・ブルワリーのビール。びん入りでエチケットも一見、ワインのよう
当別セブンズ・ブルワリーのビール。びん入りでエチケットも一見、ワインのよう

 麦芽や果物をへらでかき回しながら寸胴で煮る。1次発酵は、クラフトビール製造としては極小の130リットルのタンク。びんの中でシャンパンのように2次発酵させる。ワインのような、食事に合う「食中酒」…。既存の「ビール」の概念にとらわれず、製造工程のすべてを手作業で、文字通り「クラフト(手作り)」で製造するブルワリーが、「当別セブンズ・ブルーイング」(当別町樺戸町)です。

食事のじゃまをしない、酸のあるビールを

ビストロ「マガッツィーノ」で提供している当別セブンズ・ブルワリーのビール
ビストロ「マガッツィーノ」で提供している当別セブンズ・ブルワリーのビール

 セブンズ・ブルーイングは、札幌市内でビストロ「Magazzino(マガッツィーノ)」を営む太田了光(のりみつ)さんが「従来のビールは、アルコール発酵で食い切れない糖が残り、甘い。食事のじゃまをしない、きりっとした酸のあるビールをつくりたい」と、昨年11月に開設。今年の1月に最初のビールをリリースしました。当別にゆかりはなかったと言いますが、建物の価格が安く、札幌からも近いことから、JR当別駅から1キロ余りの住宅街の民家を改装して、工房にしています。店を運営する合同会社葡萄酒倉庫の共同代表で、厨房で一緒に腕を振るう大谷奈々さんが20年ほど前、地ビールの製造に携わった経験があったことも、開設を後押ししました。

当別セブンズ・ブルワリーのフラッグシップビール。左から「当別プリミティブ・ブルーイング」「ラ・ヴィ・アン・ローズ」「パレ・ローズ」
当別セブンズ・ブルワリーのフラッグシップビール。左から「当別プリミティブ・ブルーイング」「ラ・ヴィ・アン・ローズ」「パレ・ローズ」

 フラッグシップビールの「La Vie en Rose(ラ・ヴィ・アン・ローズ)」は、当別産のブドウ「山幸」と、同じ農家がつくったブルーベリーやハスカップなどのベリー類のジャムを、ホップやさまざまなハーブで香り付けし、麦芽と合わせたもの。750ミリリットルのワインのびんに詰め、びん内で2次発酵させます。フルーツビールですが、ワインのような香りの広がりや華やかさが特徴です。

 もう1つのフラッグシップ「Pare Rose(パレ・ローズ)」は、当別産ブドウ「清見」のジャムをかんきつピールやコリアンダーで香り付けし、びんでの2次発酵のために、ハスカップジャムも加えています。ラ・ヴィ・アン・ローズがフルボディの赤だとしたら、その弟分に当たるこのビールはロゼといったところです。

 いずれも食事に合う食中酒。現在のクラフトビールブームを牽引しているIPAは、IBU(国際苦味単位)の高いものが多いのですが、セブンズ・ブルーイングのフルーツビールのIBUはゼロ。まったく苦くなく、ワインのようなフルーティーさや香りの広がりが特徴です。

 タンク内での1次発酵後は、炭酸が弱く「気の抜けたビール」(太田さん)ですが、びんの中で2次発酵させることで炭酸が自然に溶け込み、泡はよりきめ細かく、なめらかになるそうです。

 また、一般的なクラフトビールは賞味期限を数カ月に設定しているものが多いのですが、セブンズ・ブルーイングのビールはびん内で2次発酵させるため、びん内の酸素が減り、賞味期限は1年と長め。さらに、ビールは通常、できたてのフレッシュなうちに飲むことを推奨しますが、太田さんは「できたては酵母臭があり、果実感が隠れてしまう。室温で熟成させて飲んでみてほしい」と言います。寝かせることで、複数使っている果物が複雑に混ざり合い、ワインのような深みが出てくるそうです。「1番最初につくったビールは今飲んでも劣化するどころか、熟成しておいしくなっている」そうで、「クラフトビール」という概念を取り払ったビールです。

 フルーツを使わない、小麦麦芽のフラッグシップビールとして最近リリースしたブランドが「当別プリミティブ・ブルーイング」。第1弾はザゥワー・ヴァイツェンで、小麦と大麦の麦芽、サワーモルトを使い、オレンジ果汁を加えています。プリミティブ(社外秘)製法で、うまみとすっきり感が両立しています。これも330ミリリットルのびん内で2次発酵させています。

 セブンズ・ブルーイングのビールはどれも濁りがあります。細かいフィルターでろ過せず、果実の細かいおりも味わってほしいからです。見た目も、風味も、そして作り方も、ワインを想起させます。

すべて手作業 少量仕込み

ぶくぶくと泡を立てて発酵するビールの「もと」
ぶくぶくと泡を立てて発酵するビールの「もと」

 セブンズ・ブルーイングのビールは、常温や、やや高温で発酵させる上面発酵で、タンクの上部に酵母がぶくぶくと浮き上がってきます。この「ぶくぶく」は仕込みから3~4日で静まります。1度の醸造で、130リットルのタンク2つを仕込みます。おりをひくと、750ミリリットルびんで240本ほどしかできません。

すべて手作業でビールを仕込む大谷さん(左)と太田さん
すべて手作業でビールを仕込む大谷さん(左)と太田さん

 ただ、太田さんは「大きな装置を入れて造りたくはない」ときっぱり。「多くのクラフトビール醸造所は、大きなタンクや仕込みの機械を入れた装置産業になっている。それでは大手ビール会社と変わらない」と言います。2人は手作業でフルーツをカット、ホテルの厨房で「スープ寸胴」と呼ばれるスープ仕込み用の鍋で果汁を煮詰めてジャムをつくります。醸造用タンクには、ひしゃくですくって移します。びん詰めも手作業。タンクや重いものを持ち上げるクレーンも手動で、工房には機械類が一切なく、「1カ月の電気代が、一般家庭より安い。鍋1つ、タンク1つでできる」(太田さん)と笑います。

料理とのペアリング重視 自営の飲食店で提供

マガッツィーノでビールを注ぐ大谷さん
マガッツィーノでビールを注ぐ大谷さん

 マガッツィーノでは、タップから注いだ生を飲むことができます。太田さんは「ビールのフレーバーに合わせて料理を出すし、自分がつくる料理に合うようなビールをつくる。料理をするようにビールをつくっています」と言い、食事に合う「食中酒」だけに、料理とのペアリングを重視します。

マガッツィーノ店内の棚に並ぶ当別セブンズ・ブルワリーのビール(手前)。上段や右側に並ぶワインと見まごいそう
マガッツィーノ店内の棚に並ぶ当別セブンズ・ブルワリーのビール(手前)。上段や右側に並ぶワインと見まごいそう

 例えば、リンゴ果汁をベースにベルガモットを加えた「ベルガモット&アップルブリュー」は酸がフラットで、クヴェヴリのオレンジワインのような風味。グリルした魚やカルパッチョのような魚を使った前菜に合うそうです。「当別米とみかんのブリュー」は甘酒のこうじで仕込み、温州みかんのさわやかさが漂う純米酒のような味わいで、居酒屋や家庭で出される和食に合うと言います。

マガッツィーノの厨房で仕込みをする大谷さん(左)と太田さん
マガッツィーノの厨房で仕込みをする大谷さん(左)と太田さん

 冬を目前に、今後はカカオやベリーなど、ボディ感のあるどっしりしたビールにも挑戦したい考えです。醸造開始から1年近くでつくったビールは15種類ほど。発泡酒の酒造免許の条件となる年間6000リットル程度になる見込みです。「2年目はその倍くらいはつくりたい」とのことで、今よりはもう少し、入手しやすくなりそうです。

 セブンズ・ブルーイングの名前の由来は、大谷さんの名前「奈々(7)」からとったそう。シンボルマークのパンダも大谷さんがモデルで、「老眼鏡を頭に乗せて、ホップをみているところ」だそうです。

 マガッツィーノは札幌市中央区南2条西4丁目Oyoyovalley2階。営業日・時間は、インスタグラムで確認を

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 北海道では近年、クラフトビールのブルワリーが急増し、各地で毎年、新しいクラフトビールが誕生しています。単なるブームではなく、ワインでいえば「テロワール(風土)」を生かしたその土地ならではのビールが地域の人々に迎え入れられています。各地のクラフトビールの醸造所を訪ね、つくり手の情熱や思い、ビールのおいしさを伝えます。

<北海道クラフトビール探訪>①ストリートライト・ブルーイング(札幌市) まちを照らす街灯のように、地域のにぎわいつくりたい
小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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