暑さが本格化すると無性に食べたくなるスイカ。空知管内北竜町では、特産の小玉スイカ「ひまわりすいか」が収穫期を迎えている。町の花であるヒマワリを思わせる黄色い果肉が特徴で、糖度11度以上の甘さだ。地元のきたそらち農協は、高齢化による生産者の減少を食い止めようと、新たな担い手の育成にも力を入れている。(文・有田麻子、写真・桶谷駿矢)
同町板谷に並ぶビニールハウスに4日、ひまわりすいか組合の組合長、渡辺俊成さん(57)を訪ねた。収穫したばかりのスイカに包丁を入れた渡辺さんは、みずみずしい黄色の果肉を見せながら「爽やかな甘さがある」と満足そうだった。
ひまわりすいかは直径12~15センチ、重さ2~2.5キロで、黄小玉すいか2号という品種だ。今年は町内の6戸が3.5ヘクタールで栽培し、6~8月に7~10キロ入り計1万4千箱の出荷を見込む。
渡辺さんは2003年、知人に誘われ、ひまわりすいかの栽培を始めた。当初は果肉がぱさぱさになったり、空洞ができたりした。「ツルや葉の成長具合、天候の変化を見ながら、スイカに適切な水分量を調整できるようになるまで、何年もかかった」という。
北竜町ではコメの減反政策を受けて、スイカ栽培が始まり、1984年に8戸の農家で組合を設立した。元組合長で同町在住の続木弘さん(80)は「珍しい黄色の果肉のスイカなら、高い収益を見込めると考えた」と振り返る。
組合設立当時から、毎週、出荷する組合員全員でお互いの畑を巡回し、作物の糖度を確認。助言し合う仕組みを現在も続けている。「全国的に褒められるものを作ろうと、一致団結したんです」(続木さん)。
ちょうど、同町では80年代からまちづくりの一環としてヒマワリの栽培が進められていた。農協職員が訪問した旧ユーゴスラビアのヒマワリ畑に感動したのがきっかけとされる。「ひまわりすいか」の名前は05年から使われ始めた。
JAきたそらち北竜支所によると、08年に16戸だったひまわりすいかの生産者戸数は、19年に5戸に激減。同町役場の農業担い手係、桜庭賢一さん(64)は「高齢化に加え、ハウス作物は手間がかかるため、水稲に転作する人が増えた」と指摘する。
渡辺さんは「磨いてきた技術を、後進に伝えたい」との思いで、15年ごろから、新規就農者を募集する札幌や東京のイベントに積極的に参加してきた。努力が実り、昨年の生産者戸数は1戸増え6戸になった。
渡辺さんの下で昨年から栽培を学ぶ渡島管内八雲町出身の佐藤孝介さん(45)も来年、独立する計画だ。「温度管理など作業は難しいが、繰り返して体で覚えている」と話す佐藤さんに、渡辺さんは「早く育って、自分を追い越してほしいな」と期待する。
ひまわりすいかは北竜振興公社が運営する直売所「みのりっち北竜」で1玉千~1350円で販売している。問い合わせは電話0164・34・2455へ。
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*塩かけず放射状にカット
渡辺俊成さんによると、ひまわりすいかは冷蔵庫に1~2時間程度入れ、塩はかけずにそのまま味わうのがおいしい。「ポイントは、最も甘い中央の部分が全員に行き渡るように、放射状に切り分けること」と説明する。
一切れいただくと、シャリッとした食感で、やさしい甘みがあり、蒸し暑さが一気に和らいだ。小玉の大きさも少人数の家族で食べ切るのにちょうどいい。
北竜町ひまわり観光協会は23日~8月21日、ひまわりの里(板谷)で、ひまわりまつりを開く。新型コロナの影響で20年から中止していたが、3年ぶりに実施する。23ヘクタールの畑に約200万本のヒマワリが咲く様子が見られる。
まつり期間中に、ひまわりすいかを活用したクラフトビールもお披露目する予定。町内の農家2人が、「澄川麦酒」(札幌)に醸造委託したビールで、町内竜西農場の安達明広さん(50)は「デザート感覚のビール。町の新たな特産品になれば」と期待する。期間中の8月14日には「すいか直売会」を開く。
(北海道新聞2022年7月15日掲載)
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