豚肉とタマネギ、洋がらしがセットの室蘭やきとり。76年続く老舗の周りは、夜になるとタレが焦げた香ばしいにおいが漂い、多くのファンが足を運ぶ。
「昔は豚の精肉とシロ(腸)の2種類しかメニューがなかった。1人で30本を平らげるお客さんがざらにいたね」。店を切り盛りする店主の吉田静枝さん(76)は、往時を思い起こしながら語った。
吉田屋は1946年創業。静枝さんは創業者の長男、英男さんとの結婚を機に69年から働く。この年、室蘭の人口は過去最多の18万3125人を数えた。店も繁盛し、鉄鋼業で栄えた鉄のマチの労働者の胃袋を満たした。
創業当初から継ぎ足して使っている秘伝のタレが、一番の売りだ。うまみとまろやかさが特徴。しょうゆや砂糖と「鶏一羽を丸ごと煮込んで取れるだし」を混ぜて作る。「ぶた精肉」(1本160円)は、甘みと柔らかさのある道産のバラ肉を使う。肉と脂身、タレの甘じょっぱさ、洋がらしが絶妙なバランスで、一番人気だ。
2006年、静枝さんに転機が訪れる。英男さんが不慮の事故で64歳で亡くなった。それまで焼き場は英男さんが担っていたが「生活のために私がやるしかない」と奮起、静枝さんが店全体を切り盛りするようになった。翌年には吉田屋の味を再現したタレの商品化に協力し、今も市内のスーパーや道の駅に並ぶ定番の土産品になっている。
ぶた精肉のほか、シロや「カシラ(頰肉)」(いずれも1本160円)も人気。馬刺し(900円)や牛すじ煮込み(650円)など約60種のメニューをそろえる。「年齢は関係ない。体が動く限り店をやりたい」。喜寿が近づいても元気いっぱいで、そうした静枝さんの人柄も客に愛されている。(室蘭報道部 古田裕之)
▼所在地 室蘭市中央町2の3 |
▼電話 0143・23・2948 |
▼営業時間 午後5~11時 |
▼取り寄せ 店に電話で申し込む。このほか郵便局の窓口でふるさと小包として取り扱っている |
▼定休日 日曜日 |
▼交通 JR室蘭駅から徒歩3分 |
(北海道新聞2022年7月22日掲載)
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