【砂川】市内の高橋里佳さん(30)が6月、市内のワイン用ブドウ畑の経営を受け継ぎ1年を迎える。ワイナリーを作るために必要な醸造量を確保するため、今月に入り畑を拡大している。開業のめどは2028年。24日には高橋さんを応援する市民らが開いたパーティーで、一昨年収穫したブドウで仕込んだワインを披露した。高橋さんは「気が引き締まる思い。ワイナリーを市の観光拠点にしたい」と話した。
高橋さんは札幌出身。酪農学園大で食品の発酵を研究し、ワイン醸造に興味を持ち、昨年6月、同大卒業生が経営し後継者がいない市内のブドウ畑約1.5ヘクタールを継承した。ブドウの種類は「ソーヴィニヨン・ブラン」を中心に約3200本あった。
昨年10月にブドウ3.3トンを収穫した。農場のブドウを使った白ワインの名前は「Grace du Ranch(グレイス ドゥ ランチ)」とし、岩見沢市内の「10R(トアール)ワイナリー」に委託して造る。
高橋さんはワイナリー開設に必要な醸造量を確保するために近くの0.8ヘクタールの畑を借り、5月11日には畑に1700本のブドウの苗を植えた。年間の醸造量は約4千リットルとなる見通し。
市は、高橋さんの要望に応じて構造改革特区の「ワイン特区」の認定を目指すなど協力する計画だ。特区になれば、ワイナリー開設に必要な醸造量の下限が年間6千リットルから2千リットルに引き下げられるため、高橋さんのワイナリー開設ができるようになる。
高橋さんは今後、「SNS(交流サイト)などでの情報発信に力を入れたい」と語り、作業体験などができるブドウの木のオーナーを募り始めた。
5月24日に市内で開かれたパーティーでは市民ら45人がワインを楽しんだ。高橋さんの恩師、酪農学園大の山口昭弘名誉教授(67)は「壁にぶつかっても周りの人の力を借りて、夢のワイナリー開業に向けて頑張ってほしい」とエールを送った。パーティーの実行委員長を務めた砂川商工会議所の其田勝則会頭は「高橋さんを応援したい」と話していた。 (望月悠希)
(北海道新聞2024年5月29日掲載)