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2022.12.23

〈編集長の北海道ワイナリー巡り〉⑭Infeeld winery(北見市) 和牛農家が営むオホーツク初のワイナリー

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任。千歳支局長を経て、24年3月から旭川報道部長。

北見市端野町の小高い丘の上に建つInfeeld winery(インフィールドワイナリー)

小高い丘の上に建つワイナリー

雄阿寒岳、雌阿寒岳を望むロケーション抜群のInfeeld wineryの施設内
雄阿寒岳、雌阿寒岳を望むロケーション抜群のワイナリー

 北見市端野町の小高い丘の上に建つInfeeld winery(インフィールドワイナリー)は、オホーツク管内初のワイナリーとして2019年に誕生した。

 女満別空港から車で約20分。晴れた日には雄阿寒岳、雌阿寒岳を眺めることができる抜群のロケーションのワイナリーでは、レストランを開く構想もある。

オリンピックを和牛とワインで

ワインボトルが並ぶ商品棚の前で笑顔を見せる醸造責任者の森裕子さん
醸造責任者の森裕子さん

 ワイナリーは、端野町で黒毛和牛の繁殖、肥育を手がける「未来ファーム」(中野克巳代表)が運営する。醸造責任者の森裕子さん(39)は、中野代表の次女で、保育士から転職した異色の存在だ。

ワイナリーから少し離れた場所にあるヴィンヤード
ワイナリーから少し離れた場所にあるヴィンヤード

 ワイナリー開設は、中野代表の「東京オリンピックの年に、おいしい和牛と一緒に自分たちのワインを飲みたい」との思いから始まった。20年開催予定だったオリンピックに間に合わせるためには、19年にはブドウを収穫しないとならない。

保育士から醸造責任者へ

ヴィンヤードで果実をつけたブドウ

 ブドウを植え始めたのは2015年。北見市内で保育士をしながら、月に1度くらい畑を手伝っていた森さん。父親から醸造責任者の話を持ちかけられ、「楽しかったし、やってみようかなと思った」という。
 ただ、「農業の経験もなく、無知すぎて…」と当時を振り返る。「ワインと言えばピノ・ノワールとシャルドネ!」と思い、植えたら、翌春、芽が出てこなかった。「凍害」を初めて知った。3年目、耐寒性品種の「山幸」「清舞」を植えたら、芽が出てきた。

Infeeld wineryの醸造設備
Infeeld wineryのワイン樽

 今は、この2品種を主力に、2.5ヘクタールのブドウ畑にピノ・ノワール、ドルンフェルダー、シャルドネなど7品種を栽培しながら、「基礎を固めるときなので、基本に忠実に、正統派のワイン」を造る。

北見らしい味を

Infeeld wineryの入り口付近の外観

 ここにくるまで葛藤(かっとう)もあった。冷涼な北見産ブドウは酸が多い。もちろんいろいろと手を加えれば飲みやすくもできるが、「そうすると、ここでワインを造る意味があるのか」。悩んだ末、「ブドウ本来の味が出て、ストレートでクリアなワイン」を心がける。

ワイナリーに併設するSHOP
ワイナリーに併設するSHOP
買いブドウで醸造したワイン。カラフルでポップなデザインが特徴
こちらは買いブドウで醸造したワイン。カラフルでポップなデザインが特徴。自社ブドウのワインは、高級感ある重厚なデザインになっている

 年間製造量は8千本ほど。今は余市産原料が半分ほどを占めるが、少しずつ自社畑のブドウの収穫量を増やし、100%自社畑産にするのが目標だ。
 生食用の余市産原料を使ったワインはフルーティーなので気軽に、自社畑のワインは地元の食材と合わせてほしい。「山幸は牛肉にも合います。北見は焼き肉のマチなので、『焼き肉する時には北見のワインだよね』と思ってもらえるといいな」と夢を描く。

勝負の4年目

ワイナリーの店舗内で笑顔を見せながらたたずむ醸造責任者の森裕子さん
店舗内で笑顔を見せる醸造責任者の森裕子さん
ワイナリーの横にある小規模なブドウ畑
ワイナリーの横にも小規模なブドウ畑がある

 4年目の今春、創業当時から指導をしてくれた醸造家からひとり立ちした。ある意味本当の勝負はこれからだ。
 最近思うことがある。「ブドウを育ててワインを造ることは、子供たちの成長と一緒だな」と。毎日変化して、昨日できなかったことが、今日できるようになる。
 「全く違う仕事だけれど、どこか通じているな、と。そんなブドウの成長を見るのがうれしくて。だから楽しいんです」

◇    ◇    ◇

<Infeeld winery(インフィールドワイナリー)> 北見市端野町緋牛内715の10。ワイナリーにショップを併設するほか、オンラインショップでも購入可。ワイナリーでは連休などにイベントも開催している。詳しくはHP(https://miraifarm.co.jp/)へ。

 北海道にあるワイナリーは50を超え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。
 人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。

(※記事中の情報は記事公開当時のものです)

〈編集長の北海道ワイナリー巡り〉⑬上ノ国ワイナリー(上ノ国町) 今夏初リリースの新ワイナリー
山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任。千歳支局長を経て、24年3月から旭川報道部長。

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