小高い丘の上に建つワイナリー
北見市端野町の小高い丘の上に建つInfeeld winery(インフィールドワイナリー)は、オホーツク管内初のワイナリーとして2019年に誕生した。
女満別空港から車で約20分。晴れた日には雄阿寒岳、雌阿寒岳を眺めることができる抜群のロケーションのワイナリーでは、レストランを開く構想もある。
オリンピックを和牛とワインで
ワイナリーは、端野町で黒毛和牛の繁殖、肥育を手がける「未来ファーム」(中野克巳代表)が運営する。醸造責任者の森裕子さん(39)は、中野代表の次女で、保育士から転職した異色の存在だ。
ワイナリー開設は、中野代表の「東京オリンピックの年に、おいしい和牛と一緒に自分たちのワインを飲みたい」との思いから始まった。20年開催予定だったオリンピックに間に合わせるためには、19年にはブドウを収穫しないとならない。
保育士から醸造責任者へ
ブドウを植え始めたのは2015年。北見市内で保育士をしながら、月に1度くらい畑を手伝っていた森さん。父親から醸造責任者の話を持ちかけられ、「楽しかったし、やってみようかなと思った」という。
ただ、「農業の経験もなく、無知すぎて…」と当時を振り返る。「ワインと言えばピノ・ノワールとシャルドネ!」と思い、植えたら、翌春、芽が出てこなかった。「凍害」を初めて知った。3年目、耐寒性品種の「山幸」「清舞」を植えたら、芽が出てきた。
今は、この2品種を主力に、2.5ヘクタールのブドウ畑にピノ・ノワール、ドルンフェルダー、シャルドネなど7品種を栽培しながら、「基礎を固めるときなので、基本に忠実に、正統派のワイン」を造る。
北見らしい味を
ここにくるまで葛藤(かっとう)もあった。冷涼な北見産ブドウは酸が多い。もちろんいろいろと手を加えれば飲みやすくもできるが、「そうすると、ここでワインを造る意味があるのか」。悩んだ末、「ブドウ本来の味が出て、ストレートでクリアなワイン」を心がける。
年間製造量は8千本ほど。今は余市産原料が半分ほどを占めるが、少しずつ自社畑のブドウの収穫量を増やし、100%自社畑産にするのが目標だ。
生食用の余市産原料を使ったワインはフルーティーなので気軽に、自社畑のワインは地元の食材と合わせてほしい。「山幸は牛肉にも合います。北見は焼き肉のマチなので、『焼き肉する時には北見のワインだよね』と思ってもらえるといいな」と夢を描く。
勝負の4年目
4年目の今春、創業当時から指導をしてくれた醸造家からひとり立ちした。ある意味本当の勝負はこれからだ。
最近思うことがある。「ブドウを育ててワインを造ることは、子供たちの成長と一緒だな」と。毎日変化して、昨日できなかったことが、今日できるようになる。
「全く違う仕事だけれど、どこか通じているな、と。そんなブドウの成長を見るのがうれしくて。だから楽しいんです」
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<Infeeld winery(インフィールドワイナリー)> 北見市端野町緋牛内715の10。ワイナリーにショップを併設するほか、オンラインショップでも購入可。ワイナリーでは連休などにイベントも開催している。詳しくはHP(https://miraifarm.co.jp/)へ。
北海道にあるワイナリーは50を超え、今やワインの一大産地となっています。地形や気候、積雪量の違いなど、生産者たちは地域ごとのテロワール(風土)を生かし、時には自然と戦いながらブドウの樹を育て、ワイン造りをしています。
人とブドウの生命力が勝ち取った「命の恵み」でもあるワイン-。そんなワインを生み出す北海道のワイナリーを編集長の山﨑が巡ります。
(※記事中の情報は記事公開当時のものです)
〈編集長の北海道ワイナリー巡り〉⑬上ノ国ワイナリー(上ノ国町) 今夏初リリースの新ワイナリー